ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

許される暴力と、許されない暴力

2024-05-03 13:27:54 | 日記
さながら燎原の火のように、イスラエルと米政府への抗議デモがアメリカ各地の大学へと広がっている。次のようなニュースがある。

アメリカでは、ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルへの抗議活動が各地の大学に広がっていて、このうち、西部カリフォルニア州にあるUCLA=カリフォルニア大学ロサンゼルス校では2日未明、デモ隊が占拠していた広場を数百人の警察官などが取り囲み、バリケードやテントを撤去しました。
こうした中、バイデン大統領は2日、ホワイトハウスで演説し『暴力的な抗議は保護されない。保護されるのは平和的な抗議だ。抗議する権利はあるが、混乱を引き起こす権利はない』と述べ、デモ隊による破壊活動や大学を閉鎖に追い込む行為などを批判しました。
また、ユダヤ系の学生に対する脅迫やイスラム教徒への差別など、人種差別的な言動や暴力は許されないと強調しました。

(NHK NEWS WEB 5月3日配信)

この記事にあるように、この燎原の火を食い止めようとする体制側=米政府側の防御の姿勢もハンパではない。NHKが取り上げるのはバイデン米大統領の暴力批判の演説だが、「もしトラ」のトラも黙ってはいない。朝日新聞は次のように伝えている。

11月の大統領選を控え、共和党のトランプ前大統領は自らの強硬姿勢を訴えつつ、混乱の責任がバイデン政権にあるとの印象を強めようと動いている。トランプ氏は1日、コロンビア大での警察の取り締まりについて『見事だ』とたたえる一方、抗議の参加者について『過激派と(イスラム組織)ハマスの支持者たち』と批判的に触れた。
(朝日新聞5月3日)

トランプもバイデンも、抗議に集まった学生たちを「暴力的なテロ組織を支援する、過激派の暴徒たち」と批判する点では「同じ穴のムジナ」と言えるだろう。抗議の学生たちを批判するとき、この二人が(故意に)見落としているのは、イスラエルのパレスチナ攻撃が著しく暴力的であり、非人間的といえるほど凶暴であり、学生たちが非難の矢を向けるのはイスラエルのそうしたウルトラ・バイオレントな姿勢だということである。

「抗議する権利はあるが、混乱を引き起こす暴力行使の権利はない」というバイデン大統領の言葉は、学生たちにではなく、むしろイスラエルのネタニヤフ首相にこそ向けられるべきだろう。

暴力という言葉は厄介だ。暴力の定義は難しい。そもそも暴力はどこまでが許され、どこからが許されないのか。平和をもたらすための暴力は、全面的に許されるのか。国家権力という暴力装置は、どうなのか。大学を占拠した学生たちを蹴散らすために警官がふるう、凶暴な警棒の暴力は、許されるのかどうか。

う〜む、難しい問題である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする