ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

原発事故 その責任の所在を問う

2017-03-18 17:07:05 | 日記
都会では自殺する若者が増えている
今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけども問題は今日の雨 傘がない

井上陽水の『傘がない』の一節である。社会問題よりも、私自身のプラ
イベートな問題のほうが私にとってはずっと切実だ。そう歌っている。

私は本ブログで、私自身のプライベートな問題はなるべく書かないよう
に心掛けてきた。公共のネットワーキング・サービスを使って私事を書
くのもちょっとなあ、という思いがある。

それに、個人的な悩みごとといえば、そういうものは今の私にはほとん
どないに等しい。脳出血の後遺症である、半身の片麻痺。私が6年前に
背負うことになったこの大きな障害の前では、思い通りに行かない大抵
のことは、気にするに値しない些事に思えてくる。病気になる前の私は、
ちょっとしたことが気に触る神経質で気難しい男だった。病気によって
そういう厄介な気性を失った今は、かえって幸せなのかも知れないと
思ったりする。人間万事塞翁が馬。皮肉なものである。

私にとっての最大の障害であり、ストレスの根源でもある片麻痺につい
ては、さすがの私も目をつぶるわけには行かず、本ブログでも何度かそ
れについて書いてきた。現にこうして書いている。

きょう本ブログで取り上げるのは、原発事故に対して下された地裁判決
という社会問題である。この問題を取り上げるのは、原発事故がどんな
個人にも密接に関わる広範で深刻な影響を撒き散らすものである以上、
私事にこだわる人でも、これは決して無視できない問題だと思うからで
ある。

さて、今回とり上げる前橋地裁の判決は、6年前の東京電力福島第1原
発の事故に関して、国と東電の責任を認めるものだった。前橋地裁は、
「国や東電は巨大津波の到来を予見することができ、事故を防げた」と
指摘し、両者に賠償を命じたのである。
東電に対しては、津波を予見できたのに対策を怠り、安全性よりコスト
を優先した点を、問題だとして批判した。
また、国に対しては、東電の津波対策が十分に行われない状況だったの
に、規制権限を行使せず、改善の措置を命じなかったことを指摘し、原
子炉等規制法などの趣旨に照らして、この点が問題だとした。

ここで留意しなければならないのは、前橋地裁が東電に賠償責任を課し
た、その根拠についてである。東電は国の命令に従わなかったから問題
だ、というのではない。国の命令に違反しなくても、東電は問題だとい
うのである。違反したからではなく、違反しなかった場合でも問題視さ
れるのだったら、国の規制や命令は一体どういう意味を持つのか。そん
なものなど所詮無意味だ、ということにならないだろうか。「国の命令
が出ていなかったから、東電は特に対策は講じなかった。それなのに、
対策を講じなかったことで東電が責任を問われるなんて、おかしい」と
いって、東電の肩を持とうとするわけではない。企業に対して指導と監
督の権限を持つ国の責任は、それだけ大きいのだ。そう言いたいのであ
る。東電と国の責任の割合がフィフティ・フィフティだなんて、納得が
いかない。

この判決にはもう一つ問題がある。この判決は、国と東電が「予見でき
たのに、対策を怠った」点を指摘し、これを「合理性を欠く」として批
判するが、それでは、「予見できなかった」場合には、どうだというの
だろう。たいていの自然災害は、人間の予見の域をはるかに越え、予想
できない甚大な被害をもたらす可能性を持っている。地震といい、津波
といい、自然災害とはそういうものであり、その意味ではあらゆる出来
事が「一寸先は闇」なのだが、問題は、予測不可能なそういう自然災害
が起こったとき、原発の施設は、回復不能なほどの決定的なダメージを
広範囲に撒き散らしてしまうことである。

我々には予見できない自然災害が起こったとき、修復不可能なダメージ
を広範な自然環境に与える原発施設は、稼働禁止にすべきではないのか
どうか。問われるべきは、このことである。

先に私は次のように述べた。原発事故に関する国と東電の責任の割合
は、フィフティ・フィ不ティではない。国の責任のほうがはるかに大き
い、と。被災者に対する賠償金の額も、この責任の割合に応じて決める
ことになれば、国が被災者に支払わなければならない金額は相当な額に
のぼるだろう。そして、それは税金によって賄わなければならないこと
になるだろう。

つまり、原発は、事故対策のコストまで含めて考えれば、決して安上が
りなものではないということである。そうしたことも含めて、原発稼働
の是非を考えるべきだ。一度、このテーマを国民投票にかけてみてはど
うだろうか。
コメント
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