ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

理想の文房具

2017-03-12 17:42:25 | 日記
文筆の徒はものを書く道具にこだわる。「弘法筆を択ばず」という言葉も
あるが、昔の文士は鉛筆や万年筆、原稿用紙にこだわる人が多かった。
「これでなければ良い文章は書けない。これを使えば良い文章が書ける」
と思い込む。呪(まじな)いのようでもあり、自己暗示のようでもある。
時代が下って現代のライターともなれば、彼らがこだわるのは、文章入力
マシンとして使う電子機器、パソコンやタブレット、キーボードなどだろ
う。かく言う私も、ブロガーを自称し、ライターの末席を汚す者として、
ものを書くためのグッズ、つまり文房具にはそれなりのこだわりを持って
いる。

最近、理想の文房具(と思えるもの)が見つかったので、それについて
報告したい。思えばここのところずっと、私は理想の文房具探しに明け
暮れてきた気がする。デジタル筆記グッズの追求は趣味にまで昂じ、ブ
ログの更新も、やっと探し当てたグッズの、その使い心地を試す口実
だったことが多い。私が探し求めていたのはandroidのタブレットだが、
こだわった条件は大きく二つある。

一つは、ディスプレイのサイズが9インチであること。最近はディスプレ
イが大きくなる傾向にあり、普及型のノートパソコンであれば平均のサイ
ズは14インチ前後、一番小さいモバイルサイズでも11.5インチである。
だがこれらは、いずれも私には大きすぎるのである。私に、と言うより、
「私が書く文章にとっては」と言い換えたほうがよい。私の文体、文章の
長さやスタイルには、7インチでは小さすぎ、11.5インチでは大きすぎ
る。7インチのタブレットで書くと、文章が縮こまってしまうし、11.5
インチので書くと、逆に文章が間延びしてしまう。いろいろ試してみた
結果、私の文章には9インチぐらいが最適だと分かったのである。

私がこだわるもう一つの条件、それはキーボードである。タブレットに外
部接続する物理キーボードは、Bluetooth接続のものであってはいけな
い。Bluetooth接続だと、ペアリングに手間がかかるし、入力の遅延やチャ
タリングなどの現象に悩まされる。ベストだと私が思うのは、USBドング
ルを使った無線接続のキーボードである。これを使うには、USBの接続端
子を使う必要があり、micro USB端子を専有するのだが、普及型のタブ
レットは電源をmicro USB端子から供給するため、電源を供給しながら
USB機器を併用することができない。USBドングル型無線キーボードを長
時間使用するためには、電源供給のための専用DCジャックが、少なくと
も一つあるものでなければならないのだ。

もう一つこだわるとすれば、タブレットはできるだけ低スペックであるほ
うが望ましい。高スペックになると、タブレットは熱を持つ。排熱のため
にファンをつければ、ファンの動作音によって静音性がそこなわれる。

タブレットやパソコンに詳しい読者なら、私が求めるそういう二つ(+α)の
条件を満たす製品など、日本では売っていないよ、と言うに違いない。そ
んなことは私にも分かっている。だから私は、中国の通販サイトGearbest
でそれを探し、先日、やっと探し当てたのである。

商品を紹介するには、製造元もしくは販売元、商品名を紹介するのが通例
だが、残念なことに、この商品は完全に無名のノーブランド品である。分
かるのは、タブレット本体がAllwinner社製のA33という型番のCPUを
使っていること、それだけである。
「でも、そういうタブレットがあるのなら、ぜひ購入を検討してみたい」
と言う読者は、Gearbestのサイトで「905Tablet PC」と入力してみて欲
しい。するとこの商品の購入ページが出てくるので、そこから手続きを進め
ればよい。価格は、驚くなかれ!日本円で何と5,792円である。

安物のこの名無しタブを使い始めてからもう1週間ほどが経つ。使ってい
て一つ思い当たったことがある。それは、自分が求めていたのはあの「モ
バギ」の使い心地だということである。今から30年ほども前のことだろう
か。私はワープロとして、NEC社製のWindows CE機「モバイルギア」を
愛用していた。名機と呼ばれたこのテキスト入力マシンはやがて故障して
使えなくなり、製造中止で再購入も出来なくなったが、いまだにこのマシ
ンのコンセプトを求める人たちも多いようで、現在入手可能なものとして
は、「ポメラDM200」などが往年の「モバギ」の後継機に当たると言える
だろう。

ポメラDM200。これには私も食指が動きかけたが、この機種のディスプレイ
サイズ7インチは、視力が衰えた今の私には、小さすぎて使えない。私の文
章とのサイズ的適合性の問題もあるし、高価すぎる価格設定も私には問題を
感じさせる。

そこでいよいよこの名無しタブの出番ということになるのだが、この「理
想の文房具」にも欠点がないわけではない。それは、スペックが低く、RAM
の容量が512GBしかないために、ネットのブラウジングが鈍(のろ)すぎ
て多大のストレスを感じさせることである。一昔前の安物ネットブックで、
一昔前のWindows XPを走らせていたときの、あの鈍(のろ)さに似てい
る。

もっとも、この欠点は、むしろ美点と言うべきなのかも知れない。ネット
がストレスなしに使えると、どうしてもコピペが多くなり、文章の独創性
が失われる。ブラウジングが自由にできるようになれば、文章に向かう集
中力も削がれるだろう。ネットへの接続ができない「ポメラ」は、むしろ
このことを美点として、それをこの機種のセールスポイントにしているほ
どである。

私は今この文章を、「理想の文房具」である名無しタブで書いている。テ
キストエディターとして使う限り、この機種はレスポンスの遅さを感じさ
せない。とくに不満はなく、何も言うことはないが、この名無しタブ、あ
とどれぐらいで飽きるだろうか。問題は、私の側の飽きっぽさである。
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