ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

難民に向き合う(その2)

2016-04-06 09:14:39 | 日記
難民問題に向き合う日本政府の姿勢には、大きくいって二つの特徴がある。

一つは、難民の受け入れにきわめて消極的であること。

これは、大量の難民の受け入れが

日本の社会に大きな緊張をもたらす可能性を考慮すれば、

まあ仕方がないと言えるだろう。

もう一つは、難民を受け入れるという直接的な対処ではなく、

多額の資金援助を通じてこの問題に寄与するというものだが、

難民のための住宅建設や、職業訓練などに欧州各国が

多額の資金を要する現状を考えれば、

これも有意義なことと言えなくはない。

さらに日経は、

こうした資金協力だけでなく、

紛争地域での、自衛隊による平和構築支援活動の

意義にもふれ、

総じて日本政府の方針を擁護する立場をとっている。


このような日経の姿勢に対しては、

反発を感じる人も少なくないだろう。

困っている人を見れば可哀相と思い、

助けなければ!と思うのが、人情というものである。

この人情に照らしてみれば、難民に対して厳しい態度で臨む日本政府も、

日本政府のエゴイスティックで狭量な態度を支持する日経も、

血も涙もない冷酷な集団と映ることだろう。

しかし、しかしである。

たくさんの「困った人たち」が日本に押し寄せ、

生活のために日本の地で職を得て、

その結果、あなたが職を失うことになるとしたら、

人情家のあなたはどう感じるだろうか。

同情からの博愛主義・人道主義が人情のなせる業なら、

反発・敵意からの排外主義も、同様に人情のなせる業である。

裏表の一面にしか目を向けない議論は、

往々にして無責任になりがちだ。

代表的なのは、毎日の社説だろう。

毎日は、「難民の受け入れ 柔軟な審査で拡大図れ」と

社説で大きく見出しを掲げながら、

受け入れを拡大した場合の問題点にはまったく触れていないのだ。

経験が豊富なジャーナリストのことである。

受け入れを拡大しても問題など起こるわけがないと考えているはずはない。

毎日は申し訳にように、

「難民受け入れ拡大の現実的な方策としては、

「第三国定住」制度の活用がある」と述べている。

どういう制度かと思ったら、これは「他国で難民として生活している人を

受け入れる仕組み」だそうだ。

日本はこの方法で、すでに

タイなどからミャンマー難民を受け入れているという。

たしかに、このやり方をすれば、国際世論に対して、「我が国は

何もしないわけではありません。ちゃんと

国際貢献をしていますよ」との

アリバイ作りにはなるだろう。

だがこれでは、論点を、難民問題の本筋から

うまくずらしているだけのことである。


朝日はどうか。

この新聞の姿勢にも問題がないわけではない。

朝日は、「途方もない数の難民は深刻な人道問題であり、

世界全体での取り組みを促している」と言いながら、

その「取り組み」が具体的にどうあるべきかには

目をつぶっている。

「「積極的平和主義」を掲げる政権なら、日本に何ができるのか、

具体策について真剣な検討に入るべきではないか」と、

安倍自民党の日本政府に誘い水を向け、

いわば問いを丸投げしてしまっているのである。


まあ、あれだね。

問題を投げかけるだけで、

具体的な答えを模索する努力のかけらも見せない

エリート・ジャーナリズムの、

他人任せのこの無責任さには困ったものだねえ。

コメント
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