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深海救難艇(DSRV) 潜水艦救難艦「ちはや」 ASR-403

2011-08-15 06:19:27 | 艦艇(自衛隊・保安庁・その他)

基地公開、潜水艦救難艦「ちはや」 ASR-403の艇内の深海救難艇です。(Deep Submergence Rescue Vehicle、DSRV)は、海中で遭難・沈没した潜水艦の乗員を救助する専用の潜水艇。

 
 
 
 深海救難艇は救難に特化した小型潜水艇であり、そのために必要な装備を持っています。潜水艦に対する救難手段を持つ事は潜水艦乗員の士気を保つために重要です。米海軍では原子力潜水艦スレッシャーの事故にあたって深海の沈没潜水艦に対する救難手段の不足を痛感し、その整備に着手しています。従来主流であったレスキュー・チェンバーによる救助では海底につりおろす救助チェンバーから作業員が飽和潜水によって海中に出て、人力で救助活動を行っていたが、この方法では沈没艦の正確な位置捕捉が不可欠であること、また飽和潜水には深度限界があり、人員の加圧・減圧に時間がかかるため事故に対する迅速な対応が不可能でした。このため救難装備を備えた潜水艇を開発し海中での自由行動を可能とすることで、おおよその位置に潜航して海底を捜索する事が可能となったほか、艇内が常圧であるため加圧の必要がないなど、迅速な救助活動が可能となりました。

米国や日本の深海救難艇は相互に接続された三つの耐圧球からなり、これに外殻を張った複殻構造を持つ潜水艇です。前部耐圧球は乗員と操船設備からなり、中部耐圧球は下部に接続ハッチを持つスカートを備えた救難区画、後部耐圧球は機械室となっていなす。外部監視装置としてソナー、投光機、テレビカメラ、窓を備える他、必要に応じて障害物を除去出来る様にマニピュレーターを備えることもあります。推進用のプロペラに加えハッチに正確に接近・接合するために前後左右にスラスターを持ち微妙な位置調整が可能となっています。機関は蓄電池により電動モーターで駆動。このため移動は低速で、広範囲の捜索にはむかない。

深海救難艇は海中で遭難艦を捜索し、発見すると艇体下部のスカートと遭難艦の専用ハッチを接合(メイティング)し、スカート内部を減圧・排水した後に深海救難艇と遭難艦のハッチを開いて通路を形成し、遭難艦の人員を深海救難艇に移乗させます。負傷者は担架に載せられたまま移乗させるがその作業には深海救難艇の救難作業員と遭難艦の健康な乗員が行う。一度に全員が救助できない場合は、深海救難艇が支援艦と遭難艦の間を往復して遭難艦の乗員を救助する。深海救難艇は各国で整備されているが、その接合方法は共通とされています。これは任務の性質上、必ずしも自国艦との接舷のみを行うとは限らないためです。このため潜水艦の上部甲板には救難ハッチの位置を明示する塗装がなされています。これは隠密行動を主とする潜水艦における塗装の例外となっています。

DSRVは小型であるが故に単体での活動時間は短く、広域捜査を行なうには母艦との連携が不可欠となってます。また自艦の活動時間や安全潜航深度の限界、遭難艦の傾き具合によっては接合そのものが不可能になるなど制約も多い。そのため米国や英国では活動に融通がきく無人潜航艇との組み合わせによる救難態勢を整備しています。

2000年10月、アメリカ海軍はMystic DSRVを基にした有人深海救難艇と支援船を加圧式救難モジュールと呼ばれる有索式無人潜水機を基にした潜水艦救難潜水再加圧システム(SRDRS)への転換を始めました。

 2000年から太平洋周辺の潜水艦を運用する国家の合同救難演習「西太平洋潜水艦救難訓練(Exercise Pacific Reach、パシフィック・リーチ演習)」が不定期で行われています。2000年の第一回はシンガポール、2002年の第二回の「パシフィック・リーチ2002」は日本がホスト国で東シナ海(カンファレーションなどは佐世保)で行われました。第三回の「パシフィック・リーチ2004」は韓国の済州島沖で開催され、日本、米国、韓国、オーストラリア、シンガポールの5ヶ国が参加しました。ただし、DSRVを運用している国は前三カ国のみでオーストラリアは潜水艦のみ、シンガポールは艦艇を派遣する予定だったが、最終的に人員のみの参加となりました。オブザーバー派遣国はカナダ、チリ、中国、フランス、インド、インドネシア、マレーシア、タイ、イギリス、ベトナムの十ヶ国に達した。第四回はオーストラリアのフリーマントル沖合いで2007年に開催されました。

海上自衛隊は第一回から第四回まで、全ての演習にDSRV搭載の潜水艦救難艦他の自衛艦を派遣しています。第一回では米国海軍の救難装置が海上自衛隊の潜水艦「あきしお」SS-579から乗員を収容している。第二回では「ぶんご」を第2掃海隊群から借り受け総指揮艦とし各国の連絡士官も同乗、潜水艦救難艦「ちはや」、潜水艦「あきしお」、あめ型護衛艦2隻(海域警戒)、掃海艇2隻(沈底潜水艦の機雷用ソナーでの捜索訓練)、SH-60J2機(艦載機。艦艇間の人員輸送。)、MH-53E1機(陸上との人員輸送)を参加させた。本訓練中は、東シナ海が非常に時化た為、艦尾のAフレームクレーンでDSRVを出す方式の韓国海軍は全ミッションを実施できない中、方式は違う物の水中発着式の海上自衛隊と米海軍のDSRVは全ミッションを成功させた(ハッチを開けないソフトメイトの指示にもかかわらず、ハッチを開けるハードメイトまでおこなった回もあった)。第三回では潜水艦救難母艦「ちよだ」と潜水艦「ふゆしお」SS-588が参加し、「ちよだ」搭載のDSRVが韓国海軍の209型潜水艦「チョイ・ムーソン」SS-063(崔茂宣)に接合し、乗員3名の救出を実演しています。パシフィック・リーチ演習では遭難艦へ接合できず救難に失敗する国も出る中、海上自衛隊は優秀な成績を示し、その救難能力は世界でトップレベルと評価されています。

また大西洋ではNATO主催で潜水艦救難演習Bold Monarchが開催されており、2008年にはロシア海軍を加えて14ヶ国(米、英、伊、蘭、加、独、土、仏、露、イスラエル、ウクライナ、ギリシャ、ノルウェー、ポーランド)が参加した。2008年演習は5月26日から6月6日にかけて北海で開催され、ロシア海軍の救難艦「チトフ」(RFS Titov)搭載のDSRV AS-34がオランダ海軍の潜水艦「ドルフィン」(HNLMS Dolfijn S-808)とノルウェー海軍の潜水艦「ウートハウグ」(HNoMS Uthaug S-304)から乗員救難を実演しています。

2005年8月4日にカムチャツカ半島の沖合いで発生したロシア海軍の深海救難艇AS28の遭難事故では、翌8月5日にロシア海軍から救出を依頼された海上自衛隊は国際緊急援助隊派遣法に基づき直ちに自衛艦の派遣を決定、命令から一時間後の12:00には横須賀基地から「ちよだ」が現地に向けて出動しました。最終的には掃海母艦「うらが」、掃海艇「ゆげしま」、掃海艇「うわじま」を含む四隻の艦隊が事故現場であるペトロパブロフスク・カムチャツキーの沖合いに派遣されています。この事故では自衛艦隊が現地に到着する前に空輸により先に現地に到着したイギリスの無人潜航艇が救出に成功し全員が生還したため自衛艦隊は8月7日15:00をもって救難活動を終了して帰港しました。この事例は海上自衛隊における初の国際救難任務となりました。

一方で専守防衛の憲法のもと、海上自衛隊の潜水艦は四海峡封鎖を始めとする日本近海を行動範囲としており、その潜水艦を救難するための潜水艦救難艦もまた近海を行動範囲として設計・建造されています。そのため航行速度は決して早くなく、遠洋の遭難事故に対応するために迅速に進出することができません。このことは時間の制約が大きく迅速な展開が求められる潜水艦事故への対応に課題を残す結果となってしましました。

 
海上自衛隊 潜水救難母艦AS405 ちよだ海上自衛隊では早くから潜水艦救難艦の整備に着手、最初の潜水艦「くろしお」SS-501が米国から貸与された昭和30年から五年後の昭和35年にはレスキュー・チェンバー方式の「ちはや」(初代)ASR-401が建造され、昭和45年には「ふしみ」ASR-402を配備しています。その後の深海救難艇の整備にあたってまず救難実験艇「ちひろ」を昭和50年に建造、各種の実験を行った後、潜水艦救難母艦「ちよだ」AS-405が昭和60年に、潜水艦救難艦「ちはや」(二代)ASR-403が平成12年に竣工しました。いずれも母艦と同名のDSRV一隻を搭載しており、救難艦を三井造船玉野造船所が、DSRVを川崎重工神戸造船所が建造しています。

「ちよだ」は潜水艦救難機能のほか、潜水艦を支援する母艦機能を持ち補給機能、及び潜水艦一隻の乗員に相当する80人分の休養設備を持つ。このため新しく潜水艦救難母艦という艦種が造られ艦番号がASR-405となった。つづく「ちはや」(二代)では母艦機能が縮小されたため艦名から「母艦」が無くなり純粋な潜水艦救難艦となりました。このため艦番号は「ふしみ」ASR-402につづくASR-403となっています。なお「ちはや」は阪神・淡路大震災の教訓から医療設備の充実が図られている。また両艦とも再圧室、減圧室を持ち、飽和潜水や大気圧潜水服によるダイバーの大深度潜水作業にも対応できます。搭載するDSRVは個艦名を持たず母艦と同じ艦名で呼ばれています。ただし建造順に一号艇、二号艇と呼称することもあるようです。ただし、母艦の収納方法が異なる(前後が逆になる)などのため、母艦を入れ替えての運用は不可能であり、この点で「おおすみ」型輸送艦とLCACとの関係と違うので、あくまで「母艦の艦載艇」扱いです。両艇とも基本設計は同じだが建造時期に15年の開きがあるため細部の改訂が行われています。DSRVは白く塗装されているが上面のみは赤白の横縞模様に塗られています。日本のDSRV特有の装備として、潜水艦とのメイティングハッチ周囲に電磁石を持ち、この電磁石で仮止めを行って引きつけるという工夫があります。

「ちよだ」、「ちはや」(二代)とも船体中央に位置する大型構造物内にDSRVの揚収設備を持ち、DSRVは船体下部の開口部(センター・ウェル)から直接海中に吊り降ろされて発進し、救助に向かいます。救難母艦は海上での位置保持のために艦首と艦尾にサイドスラスターを備え、DPS(Direct Positioning System)により艦位を一定位置に保持可能となっています。DPSの副次的な効果として、船体の揺動が著しく小さくなると言う物があります。センターウェルからの揚収が不可能な場合、舷側からDSRVを揚収する機能を母艦は持っています。また、「ちはや」では、センターウェル下部に「蓋」を装備し、速度の向上を実現しています。

潜水艦救難艦は高度な海中作業機能と飽和潜水支援機能を持つため、本来の救難活動の他に海中作業を伴なう多くの任務に当てられています。なかでも「ちよだ」は平成2年に沈没したカツオ漁船第八優元丸の潜水調査を行い、平成4年には三沢沖に米軍が緊急投棄した航空爆弾を捜索、平成14年には「ちはや」がハワイ沖で米原潜「グリーンヴィル」に衝突され沈没した漁業実習船「えひめ丸」の引き上げを支援しています。えひめ丸引き上げ支援では、実際に引き上げを行った米国海軍への支援や海中での遺品捜索のために「ちはや」搭載艇は百数十回の潜航を行っています。

 
 
潜水艦救難艦「ちはや」ASR-403潜水艦救難艦「ちはや」ASR-403
全長:128m
全幅:20m
機関:ディーゼルエンジン2基、2軸推進、19,500馬力
速力:21kt


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