きょうは妹と出掛けることになっていて、しかも町内のゴミ当番の日でもあって、ばたばたしていて出掛けるときに郵便受けを覗いたら「塔」7月号が入っていました。
もう来た!! とりあえず袋をあけてバッグに入れて、駅まで歩き、電車を待ちながら読み始めました。7月号は塔短歌会賞と塔新人賞の発表号です。今年はどんな作品が受賞したのでしょうか。
まずは塔短歌会賞のほうからじっくり読みます。受賞は「ちいさな襟」岡本幸緒さん。おめでとう! よかったね。
・モノクロの洋画の中のタイピストちいさな襟のブラウスを着る
タイトルにもなったこの歌がやはり一番いいと思いました。ほかには
・番号札とりて二時間待ちいたり査証代理申請のため
・問題がなければ支払い窓口を指にて示す声は出さずに
このあたりがその「場」のようすがリアルに描かれていてよかったです。とくに「問題が」の歌。「指にて示す声は出さずに」しんと静まり返ったその場所のぴんと張りつめた空気がよくわかります。いろんな国のひとがくるから、言葉は発しないで指で案内しているのかもしれません。
・最近は使わぬタイプライターのハードケースの角がほころぶ
・配列の変わることなきキーボード八指をホームポジションに置く
こういう具体的なものの出し方も巧いと思いました。
候補に残って議論された作品はそれぞれ印象深いもので、特に私は澤端節子さんの「眠りをほどく」がいいなと思いました。
・銀杏の落ちてはひかる小道なりあの角ひだりに折れてみずうみ
・川下へすこしあるけば橋脚のありて眠りをほどく鉄橋
・船底は川と湖とに触れていてかずかぎりなき水の創あと
・名前など無かっただろう古琵琶湖は四百年前に生まれて
・封筒の白きをえらび さようなら オカメコオロギ鳴くころに出す
歌に誘われてその場に連れていかれるような臨場感がありました。琵琶湖の広がりと川へのつながり。そこに分厚い時間がある。そういうことをベースにしたうえで、アオコとかオカメコオロギとかささやかなものに注がれる視線が豊かだと思いました。
選考座談会。とても丁寧に議論されていて好感を持ちました。なぜ、この連作が受賞に至ったか。こちらの連作にはこのへんが弱い、この歌はいらない、タイトルがよくない、など具体的で、読んでいるほうも納得させられる気がします。
塔新人賞のほうは後日書きますが、塔短歌会賞の候補作は並び方まで「これは候補作の一番に」とか順番まで丁寧に議論されているのに対して、新人賞のほうはざっくり受賞作、次席を除いて3点入ったもの4つはすべて候補作にしましょう、ということで、並び方は番号順(たまたまかもしれないけれど)になっていたのが、あれ、順番の議論はないの?と思いました。
新人賞の内容についてはのちほど。