今月のセミナー講師の方は、ロシア投資ファンドをやっておられた方です(戦争開始直前に整理された由)。
例によって余り細かいことを書くのはあれなので、以下印象に残ったことを書きます。
まず、ロシア、ウクライナという国について、私たちが日ごろあまり意識していないこと。
一つは人について。
数学者が多いそうです。国民全体としてどうかは不明ですが、博士号をとれるような人がけっこういる。そして、プログラミングなどにたけた人が多いとのこと。
前職で採用していた取引プラットフォームは開発元がロシアでしたが、わりとそういうところに存在感があるらしい。
ただし、国として情報産業が発達しているかというと、どうもそうではなくて属人性がつよいらしく、秀でた人材は海外に行ってしまうらしい。
ウクライナ人ではWhatappの創業者、PayPalの創業者がそれぞれアメリカで成功しています。
それがあってか、ロシアもウクライナもこの30年で人口がマイナスになっている。特にウクライナは15%ぐらい減っている。この傾向は旧ソ連圏で、今は独立した国々にも通じるものがあるらしく、例えばバルト3国の人口も15-24%減少している。
ただし、バルト3国は一人当たりのGDPで見ると増加している。が、ロシアとウクライナは総額ベースでも一人あたりベースでも、この30年でほとんど成長していない。ロシアはBRICsの一員ですが、エネルギー産業こそ興隆しているものの、実情は他の国々とは異なるようです。
今、ロシアとウクライナをまとめて書きましたが、両社の国内の産業基盤はソ連時代から基本的に変わっていない。経済圏として考えた場合、依然としてウクライナはロシアに近い経済構造を持っているらしい。ただし、ウクライナにとってロシアは主要な貿易相手だが、ロシアにとってはそうでもない(双方に共通するのは中国の存在感が大きいこと)。
また、ウクライナの経済はもともと汚職が多いなど、問題は少なくない。
露宇経済関係は歴代大統領の姿勢(西側寄りか親露派か)によって左右されてきた。ただ、ウクライナ侵攻後は全体の傾向として、両国の経済関係も縮小しつつあることは確か。
これは知られていることですが、ウクライナの主な輸出商品はトウモロコシや小麦、菜種、ヒマワリ油など。ロシアは原油、天然ガス、石炭、木材や肥料など。両国合わせて小麦の3割、トウモロコシの2割を(世界で)生産している。
ウクライナの国家予算の規模は410億ドルぐらいで、今の戦争の戦費が月100億ドルと言われている(アメリカは先般400億ドルの支援をしたが)。
なので、兵力だけではなく経済的にもそう長く戦争を続けることはできない。
他方、西側諸国が今対ロ経済制裁を行っているが、実質的に効果があるのは中央銀行の在外資産凍結などで、それ以外の制裁は実効性に疑問があるか、西側への反動も大きい。原油価格も急騰しているし、食料価格高騰は特に発展途上国で顕著な影響が出ている。
また、ロシア国民は過去にももっと酷い経済危機を経験しており、危機慣れしているが、西側諸国はそうでもない(日本も実質GDPが0.3%押し下げられる見通しだが、これは国民にとってかなり厳しく映るはず)。
というわけで感想ですが、ウクライナ、ロシア(ほかバルト3国を含め)の人口減少が激しいのはちょっと驚きです。今6百万のウクライナ人が国外避難しているそうですが、そのうちの半分は帰ってこないのではないかと言われています。
こうした国々は太古のころから、世情に応じて住まいを移動するというのが処世術として定着しているのかもしれません(中世ヨーロッパは歴史上移民は普通にありましたし)。
現下の情勢についていえば、先のキッシンジャー発言もありましたが、今後世論(というか各国政府の姿勢)は今のような援宇一辺倒の姿勢が、徐々に変わってくる可能性があります。
というか、たぶんそうなりそう。