Mrs.Uponwaterのブログ

日記です♪

春の雪 豊饒の海〔一〕

2008-03-06 11:23:54 | 日記
旅に出る時、飛行機の中で読もうと購入した。三島由紀夫は好きで数多く読んでいる。金閣寺、仮面の告白、禁色など「変なの…」と言われるものが好き。
三島由紀夫の筆はすべての描写が細かく、彼の特異な感性で表現し優雅でもあり好きなのです。初夏の頃、「椿もすでに花が落ちて、その黒い堅い葉叢から新芽がせり出し、石榴も、神経質な棘立ったこまかい枝葉の尖端に仄赤い芽をつき出しているのに気づいた。新芽はみな直立し、そのために庭全体が、爪先立って背伸びをしているようにみえる。庭が幾分か高くなったのだ。」という所など感心してしまう。
ご存知の通り、公爵家の嫡子と伯爵家の令嬢の叶わぬ恋の物語ですが令嬢が遂に仏門に入り、その剃髪のくだりが、また良い。「剃刀は聡子の頭を綿密に動いている。ある時は、小動物の鋭い小さな白い門歯がかじるように、ある時はのどかな草食獣のおとなしい臼歯の咀嚼のように。髪の一束一束が落ちるにつれ、頭部には聡子が生まれてこのかた一度も知らない澄みやかな冷たさがしみ入った。…頭蓋のまわりには、誰も指一つ触れた事のない、新鮮で冷たい清浄の世界がひらけた。」三島由紀夫の感性がひしひしと伝わり、身震いしてしまう。もっと生きて書いて欲しかった。歳を重ねた彼の作品ってどんなかしら?