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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

上宮外県神社獅子舞

2024-04-14 22:24:52 | 民俗学

 

 中川村大草北組にある上宮外県(かみのみやとがた)神社で行われる獅子舞を訪れた。コロナ禍が明けていつも通りの例祭が開催されたわけである。春と秋の祭典、いずれにも舞われる獅子舞は、参道入り口から拝殿までの短い道のりで行われるが、7年目毎に行われる御柱祭では、前宮から獅子屋台が曳行される。その際は獅子屋台の先導役として天狗がつき、さらに獅子招きのほか和藤内が獅子の前につくという。和藤内は暴れる獅子を「退治する役」だという。実見していなのでいけないが、これは明らかに「獅子切り」にあたり、聞くところによると「獅子を切る」ような所作があるという。次回の御柱では、ぜひ訪れてみたいと思う。

 さて、午後3時に始まる獅子舞を始める前に、参道入り口の路上で御柱の際に練りで行われる囃子が奏でられた。平澤和雄さんが著した「上宮外県神社の獅子舞」(『伊那』1995年4月号)によると、この囃子には、かつて鉦や三味線が加わっていたともいう。その上で和藤内があったと聞くと、上伊那南部に顕著な獅子舞に似ているようにもうかがえる。三味線については、駒ヶ根市の天竜川右岸の獅子舞によく見られる。ここも同じ右岸であり、関係性がうかがわれるが、詳細はまったくわからないという。神社入り口にある2本の杉の大木の間を舞いながら進み、随身門をくぐり抜け、階段を上って境内に入る。とりわけ2本の杉の大木の間は、幅にして1メートル余。ひとが一人通る程度しかない。したがって例祭では、屋台はなく、幌の中に人が入って胴を長く、大きく見せながら練って境内に入る。頭を操る者一人と、幌の中には8人が入る。

 境内に入ると、左右に大きく身体を振って、解放されたように暴れる獅子が舞われる。例祭ではその先導役も、また退治する役もなく、拝殿にいたると獅子自ら静まり返って舞納めとなる。御柱祭での獅子は、明らかに「悪者」であるいっぽう、例祭の獅子は、けして「悪者」には見えない。この対照的な描き方が、なぜでき上ったのか、興味の湧くところであるが、その語り手はいない。

 舞納めとなると、境内では餅投げか行われ、例祭一切が終了する。餅投げが復活している通り、コロナ禍は「明けた」という印象を受けた。


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