水墨の詩  傅益瑶 (著)

2024年05月13日 11時20分10秒 | 社会・文化・政治・経済

あなたはまだ傅益瑶を知らない⁈

――水墨画家・傅益瑶(ふ・えきよう)の初の作品エッセー集。

父は中国画壇の巨匠・傅抱石。

幾多の風雪を越えて日本に留学。

平山郁夫氏、塩出英雄氏といった名だたる画家に薫陶を受け、中国伝統文化を礎に、水墨画の新境地を拓いてきた。

比叡山延暦寺、鶴岡八幡宮をはじめ各地の寺社に絵を多数奉納するほか、松尾芭蕉シリーズ、日本の祭りシリーズ、小林一茶シリーズなど、独自の世界観を築いている。

「老」の喜びを知る人は終わらない青春を生きる。

人生の円熟の美と中国の伝統文化の神髄に触れる一冊。

世界を平和に導く「芸術」と「祈り」

著者について

傅益瑶(ふ・えきよう) 水墨画家。1947年、中国・江蘇省南京市に、傅抱石の第五子として誕生。
79年、中国教育部の国費留学第一期生として来日。
創価大学で日本語を学ぶ。
81年には武蔵野美術大学大学院で塩出英雄氏に師事。
83年、東京藝術大学平山郁夫研究室に入り、研究生として敦煌壁画の研究と日本画を学ぶ。
ニューヨークの国連本部や 中国美術館をはじめ、国内外で個展を数多く開催し、テレビ番組にも出演。
中国国務院から「第5回中華之光賞」、日本政府から令和3年度「文化庁長官表彰」が授与されている。
 
 

この<仏教東漸図>をはじめ、大原三千院に奉納された<三千院四季図>、曹洞宗の大本山・永平寺に収められている道元禅師の生涯をモチーフに描いた<祖道傳東そどうでんどう>などの制作当時を振り返ったエッセーも収録されています。

「日本の祭り」シリーズでは、水墨画家としての筆が面目躍如するとともに、傅さんの日本文化に対するユニークな眼差しが光ります。

日本人にとっては日常の中に溶け込んでいる祭りですが、そこには土着性と世界性が常に調和してきた日本文化の特徴が息づいていると傅さんは語ります。

 歴史上、日本が大きな転換点を迎えた時でも、日本人が決して自分たちの伝統を極端な形で捨て去ることをしなかったのは、こうした日本文化の特徴が精神の地下深くに脈打っているからではないでしょうか。そして、これこそが今の世界で強く必要とされている文化であるはずです。(本書「神々との戯れ」より)

 

ブックデザインの楽しみも

 本書には、紙の本ならではの工夫や装丁家の〝技〟が随所にちりばめられています。装丁を担当したのは、あの矢萩やはぎ多聞たもんさん。学術書から絵本まで、さまざまなジャンルの本を手がけてこられた装丁家です。

 カバー絵の<仏教東漸図>の上に踊る本書のタイトルは、矢萩さん独自のフォントによって書かれたもの。著者の傅さんは、斬新なフォントを用いつつも見事に絵と調和させる矢萩さんの〝技〟を大変に気に入っておられました。

 本書を開くと<仏教東漸図>を観音開きにして鑑賞できるようになっており、巻末には傅さんが愛用する落款印を一部紹介しています。そのほか、略年譜、仏画の主な奉納先も収録されています。

 30代で来日し、70代を迎えた今もなお、ほとばしる生命力と飽くなき探求心で、創造への意欲を燃やし続ける傅さん。

文化・芸術への貢献に自身の使命を見出した、終わらない青春を生きる画家・傅益瑶の生き方は、世代を問わず、多くの人の心を強く揺さぶるはずです。

傅さんは「仏教徒ではない自分がどのような姿勢で仏教画を描けばいいのだろうか」趙 樸初会長に尋ねた。

これに対して、「あなたは自分と一緒に他人を苦難から救い出したいという祈願の心があるかどうかです」と教え諭した。

これが<大乗>の精神性を示すものであった。

確かに中国では宗教を持たない人が圧倒的に多いかもしれない。

しかし、中国の人々の心の奥深いところに宗教的なものはあるはずだ。

何といってもインドから伝わった仏教は中国で大きく開花し、それが日本に伝えれてわけである。

宗教的DNAのようなものは、中国の人々の心の深い部分に流れているだろう。

趙 樸初(ちょう ぼくしょ、1907年11月5日 - 2000年5月21日)は、中国の政治家、書道家、仏学家、作家、社会活動家

 

画像

傅益瑶(ふ・えきよう)

『水墨の詩』傅益瑶 著
発行:鳳書院
定価: 2,700円+税
〈内容〉
はじめに/1章 中国で過ごした日々/2章 留学生として日本へ/3章 水墨画の可能性を拓く/付録(傅益瑶用印・略年譜・主な奉納先)/おわりに

 

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