乳幼児期から青年期までのこころの育ちの過程では、心身のはたらきに大きな変化が起こります。乳幼児期の世界との出会いから始まって、家庭の中での親と子の関わり、幼稚園や保育園での子ども同士の関わり、学齢期の学校での学業や様々な社会活動、思春期のこころの自立と新たな他者との出会いまで、子どもはいつも「社会的存在」としてあり続けています。
社会的存在である子どもが世界と関わるとき、さまざまな影響を受けながら、子どもの個性が育っていきます。ライフサイクルを経て育ちつつある子どもの個性が複雑な周囲の世界に対応しようとするときに起きてくる、情緒や行動の変化がこころの問題です。
子どものこころの問題とは
子どもの情緒や行動の問題が起きてくるこころの仕組みや、脳のはたらきについて科学的な研究が進み、医学、心理学、社会学などの分野でいろいろなことがわかってきました。 まだ言葉をもたない赤ちゃんの脳は、人に強い関心をもち、社会的な出来事を捉え、学習しています。それにともなって脳のなかの神経ネットワークも複雑に変化していきます。子どもが学習や集団活動に取り組む就学前後には、計画や見通しを立て、感情や行動をコントロールする「司令塔」としての脳のはたらきに関わるネットワークが急速に形作られます。
家族の子育て、学校の教育、地域社会の交流のあり方は、このような脳科学の研究などでわかってきた子どもの育ちについての医学的な知見からみても、理にかなったものです。しかしながら家族、学校、地域を取り巻く環境は急速に変化しており、子ども一人ひとりの育ちのスピードに合った対応が難しくなっている現実もあります。
子どものこころの問題とは
子どもの「育ちの力」や、ストレスから「立ち直る力」を生かす診療を行います
積み重ねられている科学的な知識を踏まえて、現在の社会の中で育つ子どもの情緒や行動の問題の意味を理解し、子どもの「育ちの力」やさまざまなストレスから「立ち直る力」を生かそうとするのが、私たちの基本理念です。
子どものこころの診療部では子ども、家族、地域などを接点にこころや発達の問題に対応している、小児医療、教育、福祉などの関連機関とのつながりを大切にしながら、こころの診療のネットワークやこころの問題を見守ることのできる人材を育てていくことに取り組んでいます。
九州大学
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メンタルヘルスの社会問題とは
メンタルヘルスの社会問題についてご紹介します。
若者の自殺者数とその背景
乳幼児期から青年期までのこころの育ちの過程では、心身のはたらきに大きな変化が起こります。乳幼児期の世界との出会いから始まって、家庭の中での親と子の関わり、幼稚園や保育園での子ども同士の関わり、学齢期の学校での学業や様々な社会活動、思春期のこころの自立と新たな他者との出会いまで、子どもはいつも「社会的存在」としてあり続けています。
社会的存在である子どもが世界と関わるとき、さまざまな影響を受けながら、子どもの個性が育っていきます。ライフサイクルを経て育ちつつある子どもの個性が複雑な周囲の世界に対応しようとするときに起きてくる、情緒や行動の変化がこころの問題です。
子どものこころの問題とは
子どもの情緒や行動の問題が起きてくるこころの仕組みや、脳のはたらきについて科学的な研究が進み、医学、心理学、社会学などの分野でいろいろなことがわかってきました。 まだ言葉をもたない赤ちゃんの脳は、人に強い関心をもち、社会的な出来事を捉え、学習しています。それにともなって脳のなかの神経ネットワークも複雑に変化していきます。子どもが学習や集団活動に取り組む就学前後には、計画や見通しを立て、感情や行動をコントロールする「司令塔」としての脳のはたらきに関わるネットワークが急速に形作られます。
家族の子育て、学校の教育、地域社会の交流のあり方は、このような脳科学の研究などでわかってきた子どもの育ちについての医学的な知見からみても、理にかなったものです。しかしながら家族、学校、地域を取り巻く環境は急速に変化しており、子ども一人ひとりの育ちのスピードに合った対応が難しくなっている現実もあります。
子どものこころの問題とは
子どもの「育ちの力」や、ストレスから「立ち直る力」を生かす診療を行います
積み重ねられている科学的な知識を踏まえて、現在の社会の中で育つ子どもの情緒や行動の問題の意味を理解し、子どもの「育ちの力」やさまざまなストレスから「立ち直る力」を生かそうとするのが、私たちの基本理念です。
子どものこころの診療部では子ども、家族、地域などを接点にこころや発達の問題に対応している、小児医療、教育、福祉などの関連機関とのつながりを大切にしながら、こころの診療のネットワークやこころの問題を見守ることのできる人材を育てていくことに取り組んでいます。
20代の死因のうち、その約50%が自殺によるものです。
その自殺者数は年間で、約2,800人 (出典:内閣府『平成26年版自殺対策白書』より)。
自殺者のうち、6割~9割の人々が何らかの不調をメンタルヘルスに抱えていたと言われています。
つまり20代の若者の自殺の背景にメンタルヘルスの問題が関わっていることが、
1日で5~7人
1年で1700~2500人(年間自殺者数と上記比率より)
それだけ多くの人々がこころの健康を失い、命を絶っていることになります。
20代の若者のメンタルヘルスを向上させることが、
今日の日本社会においては、重要な社会課題だと言えます。
メンタルヘルスによる経済的損失
keizai-Sonshitu
こころの病の主な損失は、
「患者の治療・サポートのための医療・社会サービスなどの費用」(上図の医療費と社会サービス費用)
「患者本人の家庭・職場での生産性低下による損失」(同、罹病費用)
「精神疾患が原因での死亡により実現されなかった期待収入の損失」(同、死亡費用)
などがあるとされており、総合失調症、うつ病性障害、不安障害による社会的損失は、
計8兆円以上と試算されています。
メンタルヘルスによる経済的な損失は、生産性の低下や医療費の増加など、
社会が成長するために必要な資本(ヒト・カネ・モノ)に大きな悪影響を与えています。
したがって、メンタルヘルスの解消に向けた取り組みは、経済的にも必要であると言えます。
(出典:学校法人慶応義塾『平成22年度厚生労働省障害者福祉総合推進事業補助金「精神疾患の社会的コストの推計」事業実績報告書』)
また2011年、厚生労働省により、精神疾患が癌などと同様の「五大疾患」に認定されたことからもわかる通り、日本においてメンタルヘルス問題は、もはや病気の枠を超えて、誰もが損失を受ける可能性のある社会問題となっています。
メンタルヘルスの社会問題が解決されない理由
このような状況であるにも関わらず現在の日本においては、メンタルヘルス問題の「予防」に対する意識が低く、病気や不調が生じてからの対策に重点を起きがちです。結果として、今現在、健康な方がこころの健康を保つことについて十分な対応がされていません。この状況こそが、メンタルヘルスが解決されない課題であるとLight Ring.では考えています。
つまり、私たちは「予防に対する認識や施策が不足している社会状況」こそが、社会問題であると捉えています。
なぜこの問題が解決されないのか、以下の3つの原因があると考えています。
1)病気自体の問題
・本人に症状の認識がなく、異変に気づきにくい。
・精神病を患った方に対して偏見が生まれるような文化や法律があって、相談することがしづらい。
2)予防の活動がされていない
・現在の診療報酬制度では発症後の対応しか認められていないため、
発症前の軽度な症状に対しては、医師が対応しにくい。
・本人だけでなく周囲の人の理解や協力が必要であるにも関わらず、
それを可能にする対策が不十分。
3)国の管轄権限が不明確
・厚生労働省内のメンタルヘルスの部署においても
労働分野と障害分野など、重複する問題であるにも関わらず国家の管轄が
バラバラなため責任者が定まらず、総括的な対策を決めることが極めて難しい。