ビル・ゲイツ氏、コロナ100年に1度と想定す

2020年02月29日 22時00分07秒 | 医科・歯科・介護

<time>2020年2月29日</time>

米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が、新型コロナウイルスについて29日までに、「100年に1度レベルと想定すべき」と訴えた。

米有力医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに寄稿し「この1週間で、100年に1度の病原体のような様相を見せ始めた。そうでないことが分かるまでは、そのように想定すべき」と指摘。裕福な国が、今からアフリカや南アジアなどの貧しい国々の対策準備を支援することが、人命を救い、ウイルスの世界的な拡散を遅らせることにつながるとした。

また治療やワクチン開発、世界での共有などのために、国際社会の一致協力や巨額の投資の必要性も強調した。ゲイツ氏は自分の慈善団体からウイルス対策に最大1億ドル(約110億円)の提供を発表している。

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女性看護師「重篤」に 新型肺炎発症前の行動公表

2020年02月29日 21時57分56秒 | 社会・文化・政治・経済

2/26(水) 熊本日日新聞

熊本市は25日、熊本県内で最初に新型コロナウイルスの感染が確認された東区の20代女性看護師は人工呼吸器を装着するなど「重篤」になったと明らかした。

市によると、女性は同日午前3時ごろから呼吸器障害が悪化。同5時20分ごろ、口から気管に挿管して人工呼吸器を装着し、呼吸管理を始めた。

 担当医師らは治療法について厚生労働省に相談し、新たな投薬も検討したが、「すぐに使用できる適切な薬剤がない」と判断。人工呼吸器によって酸素濃度を高く保つ治療を続けるという。

 市はまた、女性が発症前の今月8日夜、福岡市のマリンメッセ福岡であったロックバンド「WANIMA」のライブに参加していたと発表した。公表には主催者側も了解したという。所属事務所によると、感染拡大を防ぐため、2月29日、3月1日の福井公演、同月7、8日の愛媛公演の中止を決めた。

 女性は今月8日、JR熊本駅から新幹線に乗り、午後4時ごろ博多駅に到着。待ち合わせた友人と2人でライブを鑑賞。翌9日正午に友人と別れた後、博多駅から新幹線で熊本に帰った。女性は17日にせきの症状が出始め、21日に感染が確認された。(久保田尚之)

 



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感染3人、100人規模のライブ参加 2週間前、大阪で

2020年02月29日 21時22分33秒 | 社会・文化・政治・経済

2/29(土) 朝日新聞社

新型コロナウイルスへの感染が確認された男女3人が、大阪市内で15日に開かれたライブに参加していたことがわかった。大阪府や高知県などが29日、発表した。ライブには約100人が参加しており、大阪府の吉村洋文知事は会見で、小規模な集団感染「クラスター」が起きている可能性がある、との見方を示した。

ライブに参加した3人が新型コロナウイルスに感染していたと発表された「大阪京橋ライブハウスArc」=2020年2月29日午後、大阪市都島区、細川卓撮影

 府によると、会場は大阪市都島区の「大阪京橋ライブハウスArc(アーク)」。高知県と高知市が29日、市内の整形外科医院に勤務する30代の女性看護師の感染を確認したと発表し、この女性が大阪市のライブに参加していたことを明らかにした。15日午後5時半から午後10時ごろまで会場に滞在し、マスクはつけていなかったという。

 ライブには、札幌市が25日に感染を確認した40代男性と、大阪府が27日に確認した40代男性もライブ関係者として参加していた。2人は大阪府在住で、翌16日にも同じ会場で別のライブに参加したという。

 吉村知事は29日夕に開いた会見で、ライブハウスの名前を公表したことなどについて「15日のライブでコロナの感染が広がったとみるべきだ。さらに感染クラスターが広がらないように発表する」と説明。

「(ライブに参加した心当たりがある人は)症状が出たら速やかに連絡を頂きたい。不要不急の外出も控えてほしい」と、府内の保健所などへの連絡を呼びかけた。

 

 
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やなせたかし 明日をひらく言葉

2020年02月29日 20時39分29秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

 

やなせたかし 明日をひらく言葉 (PHP文庫)

 

PHP研究所 (編集)
 

内容紹介

大人気キャラクター「アンパンマン」や国民的唱歌「てのひらを太陽に」の父、やなせたかしさん。
幼少期は劣等感に悩み、戦争も経験し、作品がブレイクしたのは七十歳手前と、その人生は必ずしも順風満帆ではなかったといいます。
しかし、どんなときにも希望を失わず前へ進んできた彼の言葉からは、生きることの素晴らしさやよろこびがビシビシと伝わってきます。
本書ではそんなやなせさんの心がこもった、ユーモアあふれる深い言葉を精選。忘れかけていた大切なものが、きっと見えてくる一冊です。
◇本書の内容例◇
◎ひとはひとをよろこばせることが一番うれしい。
◎一寸先は闇でも、その一寸先には光がある。
◎人間は欠点のない人を好きにはなりませんよ。
◎笑って楽しむ気持ちがあれば、いくつになっても心を若々しく保つことができる。
◎今までやってきたことが、全部、役に立っているんだよ。無駄なことはひとつもない。
文庫書き下ろし。

内容(「BOOK」データベースより)

「アンパンマン」「てのひらを太陽に」の父、やなせたかし。幼少期は劣等感に悩み、戦争も経験、作品がブレイクしたのは七十歳手前と、その人生は順風満帆ではなかったという。

逆境でも希望を胸に前へ進んできた彼の言葉からは、生きることのよろこびがビシビシと伝わってくる。本書では心に刺さるやなせ氏の言葉を精選。

忘れかけていた大切なものが、きっと見えてくる一冊。

 

70ページのこの項目がとくに好きです。 ↑
...(中略)幸福の正体はよくわからない。おなかをすかせて一杯のラーメンがとてもおいしければそれは本物の幸福だ。(中略)インスタントラーメンもシュウマイ弁当も、アンパンも、ときにはパリの高級レストランの食事よりおいしい...

自分では形にできず、それを上手く(粋に)活字にしてくれる人がいると感動することがあります。この本ではそんな思いをされる方が多くいらっしゃるでしょう。「幸福の正体はわからない」という言葉もとてもいいです。体裁、表向きの心の言葉ばかりが並ぶような時代に、立ち止まり考える時間をくれます。

本の構成は、上記の「」のような短いメッセージが大きな文字で右ページに書かれていて、
左ページにはそれに似合うエッセイが文庫本の通常の文字サイズで記されてあります。

気軽で、手軽で、でも、心に入ってくる言葉があちこちに散りばめられた一冊。
つくづく、良き絵本を書いた方の言葉は、誰にでもわかりやすく、誰にもとっても優しい、と思います。どこにも優しさがあります。
誰をも不幸にしないメッセージばかりです。

 

子どもが幼い頃一緒に見ていた「アンパンマン」でしたが、大勢の子どもたちが最初にハマる理由がわかる一冊です。一見単純に見えるキャラや物語の背景に、「戦争体験」「身内を亡くされた悲しい体験」「売れない時代にも誠実に仕事に向き合っていた姿勢」などが集約されていたのでした。文体も読みやすく、若い人からかなりの年代の人まで、生きる指針となり得る言葉が散りばめられた名著です。

 

2ページで読み切り形式なので,細切れ時間でも読めるし,パラパラ読めていい。

勇気づけられたり,人生の指針となるような言葉があり,生涯何度も読むような気がする。

もちろん著者の考え全てに同感なわけではないが,著者の皆を想う優しい気持ち(博愛の精神)がじわじわと伝わってくる良書。

 

やなせさんはいろいろ本を書いておられましたが、この本はそのレビューともとれて、よかったです。私は子育ての時期がアンパンマンのTVデビューの時とリアルタイムでした。あのころはあまり意識していませんでしたが、今になって「アンパンマンのマーチ」の歌詞を反芻しているところです。

 

 

 

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黒い司法 0%からの奇跡

2020年02月29日 19時47分48秒 | 事件・事故

黒い司法 0%からの奇跡

見どころ

えん罪で死刑宣告された被告人の容疑を晴らそうとする弁護士の奮闘を描いた人間ドラマ。ブライアン・スティーヴンソンのノンフィクションを、『ショート・ターム』などのデスティン・ダニエル・クレットン監督が映画化した。主人公を『クリード』シリーズなどのマイケル・B・ジョーダン、死刑囚を『ジャンゴ 繋がれざる者』などのジェイミー・フォックス、主人公の協力者を『ルーム』などのブリー・ラーソンが演じる。

あらすじ

黒人に対する差別が横行している1980年代のアラバマ州。黒人の被告人ウォルター(ジェイミー・フォックス)は、身に覚えのない罪で死刑を宣告されてしまう。新人弁護士のブライアン(マイケル・B・ジョーダン)は、彼の無実を証明するために奔走するが、陪審員は白人で、証言は仕組まれ、証人や弁護士たちは脅迫されていた。

ストーリー

ブライアン・スティーブンソン英語版ハーバード大学のロースクールを卒業し、弁護士資格を取得した。好待遇のオファーが複数あったにも拘わらず、ブライアンは使命感からアラバマ州で人権運動に携わることにした。同州で受刑者の人権擁護活動に励むエバ・アンスリーの協力もあって、彼は小さな事務所を設立することができた。

1988年、ブライアンの元にとんでもないニュースが飛び込んできた。ウォルター・マクミリアン英語版という黒人男性が白人女性を殺した容疑で死刑判決を受けたのだが、彼が犯人であることを示す証拠は一つとして存在しなかった。

それにも拘わらず、検察側は誘導尋問などを駆使してウォルターを犯人に仕立て上げたのである。しかも、州の司法当局は杜撰な裁判が行われたことに対して全く関心がなかった。

憤慨したブライアンはウォルターの無実を必ずや証明すると心に誓い、その弁護を買って出た。

当初、ウォルターは「大学出のインテリ先生に差別の何が分かるというのか」などと頑なな態度を取るばかりであったが、ブライアンの奮闘ぶりを眺めているうちに、彼に心を開くようになった。

こうして、ブライアンとウォルター、エバの3人は司法制度の不備及び黒人への差別意識という難敵と闘っていくのだった。

映画『黒い司法 0%からの奇跡』弁護士ブライアン・スティーブンソンによる“奇跡の実話”を描く

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映画『黒い司法 0%からの奇跡』は、冤罪の死刑囚たちのために闘う弁護士ブライアン・スティーブンソンによる“奇跡の実話”を、『ショート・ターム』の監督デスティン・ダニエル・クレットンが描いたドラマ作品。

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舞台となるのは、黒人への差別が根強く残る1980年代のアメリア・アラバマ州。無実の罪で死刑宣告された黒人の被告人ウォルターを助けるため、新人弁護士ブライアンが立ち上がることから物語は始まる。

しかしそんなブライアンが直面するのは、仕組まれた証言に、白人の陪審員たち、証人や弁護士たちへの脅迫といった、数々の差別と不正。果たしてブライアンは、最後の希望となり、罪なき黒人たちを救うことができるのか?可能性0%からの奇跡の逆転劇に挑むー。

Who is ブライアン・スティーブンソン?

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日本ではあまり馴染みのないブライアン・スティーブンソンだが、彼は社会正義活動家としても活躍する、アメリカの著名弁護士。アラバマ州モンゴメリーを拠点とする司法の校正構想の事務局長も務める人物だ。

アメリカでは“黒人の3分の1が刑務所に入ったことがある”という深刻な人種差別問題を抱える中、ブライアンは多くの死刑囚の救済措置を勝ち取ってきた。貧困者や黒人に対する偏見に立ち向かうその姿勢は高く評価されており、マッカーサー財団の“天才”賞ほか、数々の受賞歴を有している。

キャスト

主人公にマイケル・B・ジョーダン

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本作では、そんなブライアン・スティーブンソンの“駆け出し”時代を、「クリード」シリーズや『ブラックパンサー』で知られるるマイケル・B・ジョーダンが演じる。絶望の淵に立つ人々に寄り添いながら、不利な司法システムの中で闘う弁護士を熱演する。

豪華オスカー俳優が共演

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また共演者には、オスカー受賞歴のある豪華実力派俳優が集結。不当な判決を受ける死刑囚ウォルター役を『Ray/レイ』のジェイミー・フォックス、ブライアンと共に黒人死刑囚を助けるための法律事務所で働く女性エバ役を、『ルーム』『キャプテン・マーベル』で主演を演じたブリー・ラーソンが演じる。

【詳細】

映画『黒い司法 0%からの奇跡』
公開日:2020年2月28日(金)
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
脚本:デスティン・ダニエル・クレットン/アンドリュー・ランハム
原作:「黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う」ブライアン・スティーブンソン著/亜紀書房刊
キャスト:マイケル・B・ジョーダン、ジェイミー・フォックス、ブリー・ラーソンほか
配給:ワーナー・ブラザース映画

©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

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21世紀の啓蒙 上: 理性、科学、ヒューマニズム、進歩

2020年02月29日 13時48分42秒 | 社会・文化・政治・経済

ビル・ゲイツ絶賛!「生涯の愛読書となる一冊だ」世界をよりよいものにする意志に満ちた全米ベストセラー21世紀の啓蒙――理性、科学、ヒューマニズム、進歩 上・下スティーブン・ピンカー(ハーバード大学教授・認知心理学者)橘明美+坂田雪子訳

知の巨人ピンカーが綴る、事実に基づいた希望の書

「理性」「科学」「ヒューマニズム」「進歩」といった啓蒙の理念を軽視・否定する反啓蒙主義を痛烈に批判。いま人類は、啓蒙の理念の実践のおかげで、かつてないほど良い時代を生きており、将来にも希望が見いだせると論じた全米ベストセラー、『21世紀の啓蒙』(原題:Enightenment Now)の邦訳がついに刊行されました。

ここでは、本書執筆の背景・動機について書かれた「第1部 啓蒙主義とは何か」の冒頭の文章を掲載いたします。

内容紹介

世界は決して、暗黒に向かってなどいない。

食糧事情から平和、人々の知能まで、多くの領域が啓蒙の理念と実践により改善されてきたことをデータで提示。
ポピュリズムと二極化の時代の今こそ、この事実を評価すべきと説く。


“世界は良くなり続けている。たとえ、いつもはそんなふうに思えないとしても。
スティーブン・ピンカーのように、大局的な視点から世界の姿を我々に見せてくれる
聡明な思想家がいてくれることを、私は嬉しく思う。
『21世紀の啓蒙』は、ピンカーの最高傑作であるのはもちろんのこと、
私の生涯の愛読書となる、新しい一冊だ。“
――ビル・ゲイツ

著者について

スティーブン・ピンカー Steven Pinker
ハーバード大学心理学教授。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。

主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『良い文章とは(The Sense of Style)』(未邦訳)があり、最新の『21世紀の啓蒙』が10冊目になる。

研究、教育ならびに著書で数々の受賞歴があり、2004年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、2005年にはフォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」に選ばれた。米国科学アカデミー会員。『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』の語法諮問委員会議長も務めている。

橘 明美(たちばな・あけみ)
英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学卒。訳書にドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット『大惨事と情報隠蔽』(草思社、共訳)、ジェイミー・A・デイヴィス『人体はこうしてつくられる』(紀伊國屋書店)、フランソワ・ヌーデルマン『ピアノを弾く哲学者』(太田出版)ほか。

坂田 雪子(さかた・ゆきこ)
英語・フランス語翻訳家。神戸市外国語大学卒。訳書にドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット『大惨事と情報隠蔽』(草思社、共訳)、ロバート・I・サットン『スタンフォードの教授が教える 職場のアホと戦わない技術』(SBクリエイティブ)、クリストフ・アンドレ『はじめてのマインドフルネス』(紀伊國屋書店)ほか。


啓蒙主義の理念――理性、科学、ヒューマニズム、進歩――は、
今、かつてない大きな成功を収め、人類に繁栄をもたらしている。
多くの人は認識していないが、世界中から貧困も、飢餓も、戦争も、暴力も減り、
人々は健康・長寿になり、知能さえも向上して、安全な社会に生きている。
どれも人類が啓蒙主義の理念を実践してきた成果だ。
にもかかわらず、啓蒙主義の理念は、今、かつてないほど援護を必要としている。
右派も左派も悲観主義に陥って進歩を否定、科学の軽視が横行し、
理性的な意見より党派性を帯びた主張が声高に叫ばれている。
ポピュリズムと二極化、反知性主義の時代の今こそ、啓蒙主義の理念は、
新しく、現代の言葉で語り直される必要がある。
つまり、現代ならではの説得力を持った新しい言葉、「データ」「エビデンス」によって――。

知の巨人ピンカーが驚くべき明晰さで綴る、希望の書。

『21世紀の啓蒙』「第1部 啓蒙主義とは何か」より
人が生きる意味と、啓蒙主義の理念

 言語や心、人間の本性について公開講座で話をするようになって数十年になるが、そのあいだにはずいぶん奇妙な質問も受けてきた。

「最良の言語は何語ですか?」「貝に意識はあるんですか?」「いつになったら自分の心をインターネットにアップロードできるようになりますか?」「肥満は暴力の一種ですか?」
 だが、これまで講義のあとで答えてきた数々の質問のなかで最も印象に残っているのは、心は脳の活動パターンで決まるという(科学者のあいだではもう常識だが)話をしたときに寄せられたものだ。講義が終わると一人の女子学生が手を挙げて、こう訊いた。
「なぜわたしは生きなければならないんですか?」
 その無邪気な口調から、自殺したいわけでも皮肉をいっているわけでもないのは明らかだった。

つまり彼女は、不滅の魂についての伝統的かつ宗教的信念が最新科学によって崩れつつある今、どうやって人生に意味と目的を見出したらいいのかという純粋な好奇心を抱いたわけだ。

わたしはこの世に愚かな質問などないという方針で臨んでいるので、このときも思いつくまま話しはじめてみたところ、その学生も、他の受講生も、何よりわたし自身が驚いたことに、そこそこまともな答えになった。

わたしがいったのはおおむね次のようなことである──もちろん正確に覚えているわけではないし、“後知恵”による尾ひれもついて、少し違ってしまっていると思うが。

 そういう質問をされたということは、あなたは自分が納得できる「合理的な理由」を探しているということです。
それはあなたが、自分にとって大事なものを見つけたり、その正当性を示したりする手段として、「理性」を頼りにしているということです。そして生きるための合理的な理由ならたくさんあります!
「感覚をもつ存在」であるあなたは“わくわくするような人生”を送る力をもっています。
たとえば、学んだり考えたりすることで、理性の力そのものを磨くことができます。科学を通して自然界の真相究明に努めることも、芸術と人文科学を通して人間のありようについて探究することもできます。
喜びや欲求充足のために自分の力を存分に発揮することもできます。あなたの先祖もそうすることで繁栄し、だからこそあなたも存在しているわけです。
あなたはこの世界の自然の美しさや文化の豊かさを愛でることができる。数十億年も続いてきた生命の継承者として、あなたもまた命をつなぐことができる。
あなたには「共感」を抱く能力──好ましく思い、愛し、尊敬し、助け、そして思いやりを示す能力──があり、その共感を友人、家族、同僚と分け合うことができます。
 そしてこれらのどれ一つとして、あなただけに特有のものではないことが理性によってわかるのですから、あなたには自分が得られて当然だと思うものを、他の人々に提供する義務があります。
あなたは他の「感覚をもつ存在」の生活の質、健康、知識、自由、豊かさ、安全、美、そして平和をより高めることによって、彼らの幸福を育むことができます。
歴史を見ればわかるように、他の人々に共感し、自ら創意を凝らして人間のありようを改善しようとするとき、わたしたちは進歩できるのです。そしてあなたも、その進歩の継続に力を貸すことができます。

 人生の意味を説くことは、認知科学の教授職の一般的な職務には含まれない。だからもし、難解な専門知識や心もとない個人的見解だけを頼りにするしかなかったとしたら、彼女の質問に答えるのは傲慢に思えて、避けただろう。

だがあのときわたしには、自分が説いているのが実は二世紀以上も前に練り上げられ、しかも今再び、かつてないほど今日的な意味を帯びている信念や価値観であることがわかっていた。すなわち、啓蒙主義の理念である。

啓蒙主義の理念は今こそ擁護を必要としている

「わたしたちは理性と共感によって人類の繁栄を促すことができる」という啓蒙主義の原則は、あまりにも当然で、ありふれた、古くさいものに思えるかもしれない。

だが実はそうではないとわたしは気づき、それでこの本を書くことにした。古くさいどころか、理性、科学、ヒューマニズム、進歩といった啓蒙主義の理念は、今かつてないほど強力な擁護を必要としている。わたしたちは啓蒙主義の恩恵に浴していながら、あまりにも慣れすぎてしまった。

たとえば、今生まれる子どもたちは八〇年以上の寿命を期待でき、市場には食料品があふれていて、指をちょっと動かすだけで清浄な水が流れ、同じく指をちょっと動かすだけでごみが消え、痛みを伴う感染症も錠剤で治癒し、息子たちを戦場に送り出さずにすみ、娘たちが通りに出ても危険がなく、権力者を批判しても投獄されたり撃たれたりせず、世界の知識と文化がシャツのポケットに入ってしまうといったことを、わたしたちは当たり前だと思っている。
 しかしこれらはすべて人類が可能にしたことであって、当たり前の生得権ではない。読者の皆さんの多くも、戦争、食糧難、病気の蔓延、無知、命の危険などが日常の一部だった時代のことを記憶にとどめているだろうし、恵まれない国の人々なら体験してもいるだろう。

しかもわたしたちは、国というものがそうした昔の状態に逆戻りしうることを知っている。つまり啓蒙主義の成果を無視するのは、自ら危険を招くようなものである。
 その女子学生の質問に答えて以来、「啓蒙主義の理念」(ヒューマニズム、開かれた社会、コスモポリタン自由主義、古典的自由主義など、いろいろないわれ方をする)について改めて語るべきではないかと思うことが何度もあった。

いや、たんに同じような質問のメールがよく送られてくるからではない(「ピンカー先生、ご著書の内容と科学を重く受けとめ、自分を原子の集合体としか思えなくなっている人に、何かアドバイスをいただけませんか? つまり自分が、利己的な遺伝子からこの時空に飛び出してきた、限られた知性しかもたない機械だとしか思えない人のことです」)。それ以上に、人類の進歩という視点を忘れてしまうと、実存的不安よりもっと悪い状態に陥りかねないと思うからだ。

たとえば、自由民主主義や国際協力機関といった、啓蒙思想から発想を得て生まれた諸制度に対して人々が冷笑的な態度をとり(そうした制度が人類の進歩を支えているにもかかわらず)、まるで先祖返りのように大昔の制度に引き戻してしまう恐れがある。
 啓蒙主義の理念は理性が生み出した。しかし人間の本性は二本の糸を縒り合わせたようなもので、その一本である理性は常にもう一本の糸と戦っている。

もう一本の糸とはすなわち、部族への忠誠、権力への服従、呪術的思考、不運を何者かのせいにすることなどだ。現に、二〇一〇年代に入ってから、自国が悪の派閥によって地獄さながらのディストピアに引きずり込まれつつあり、それに抵抗できるのは「再び偉大な国に」引き戻してくれる強い指導者だけだと考える政治運動が高まりを見せている。

しかもその運動は、対抗勢力のリーダーたちがよく口にする話に煽られて勢いづいてきた。つまり、現代の諸制度は破綻したとか、生活のあらゆる面で危機が深まっているといった話である。
 結局のところ「今ある制度を壊せば世界は良くなる」という点では両陣営が声を揃えているわけで、これはなんとも恐ろしい事態である。

人類の長い進歩のなかで、その流れに反する諸問題が起こったときに、それらを解決することでますます進歩を重ねられると考えるような前向きなビジョンをもつ人々の声は、今は小さくなってしまっていてあまり聞こえない。

啓蒙主義の理念は繰り返し語られねばならない

 これでもまだ啓蒙主義の理念に強力な擁護が必要だと思えないなら、イスラム過激派について研究しているシラーズ・マハーの言葉に耳を傾けてもらいたい。「西洋は自分たちの文明に対する評価が低すぎる。

古典的自由主義をはっきりと主張しない。これらの価値に自信がないのだ。何やら居心地悪く感じている」。これに対してIS(イスラム国)のほうはというと、自分たちの価値に自信満々で、「ISが支持しているものが何なのかを正確に理解している」。それは間違いなく、「信じがたいほど魅惑的なもの(incredibly seductive)であり、その頭文字もまたISなのだ」。このような鋭い指摘は、以前、ジハーディスト・グループの「ヒズブ・タフリール」の地区リーダーだったことがあるマハーならではのものだ。
 一九六〇年、自由主義の理想がその最大の試練であった第二次世界大戦を耐えしのいでからさほど経たないころ、経済学者のフリードリヒ・ハイエク〔反ナチ、反共産主義の自由主義思想家でもあった〕は、自由主義についての考えをこう述べた。

「古くからの真実を人々の心(men's minds)にとどめておきたいなら、世代ごとにその言語と概念で語り直さなければならない」(men's minds〔「男たちの心」の意味にもなる〕という現在は不適切とされる表現そのものが、図らずも彼の「世代ごとにその言語と概念で……」という主張の正しさを証明している点に注意)。「かつては最もふさわしい表現だったものも、やがて使い古されて摩耗し、明確な意味を伝えられなくなってしまう。根底にある考えは古びていないかもしれないのに、言葉のほうはそうはいかず、現在にもかかわりのある問題を語るときでさえ、もはや同じ信念を伝えはしない」
 本書は、啓蒙主義の理念を二一世紀の言語と概念で語り直そうとする試みである。まず、現代科学が教えてくれる人間のありようについて、これを理解する枠組み──わたしたちが何者で、どこから来て、どういう課題を抱えていて、どうすれば対処できるのか──を提示する。

その後は、つまりこの本の大部分は、啓蒙主義の理念を二一世紀ならではのやり方で、つまりデータを使って擁護することに充てる。
 こうして改めて証拠を挙げて啓蒙主義という事業の成果を見てみると、啓蒙主義の理念がたんなる甘い希望ではなかったことがよくわかる。啓蒙主義という事業は間違いなくわたしたちの役に立ってきた。

だが、「偉大な物語はめったに語られない」ということなのか、啓蒙主義の勝利は語られてこなかった。

そのせいで、勝利を可能にした理性、科学、ヒューマニズムといった理念も正しく評価されていない。

それも、何らかの合意された過小評価がなされているというのではなく、もっとひどいことに、今日の知識人はこれらの理念を無視し、あるいは疑いの目を向け、時には軽蔑さえする。

だが、わたしがこれから提示するような適切な評価がなされれば、啓蒙主義の理念は実のところ感動的であり、刺激的であり、崇高でさえあり、つまり生きる理由と呼ぶにふさわしいものだとわかるはずである。

著者紹介
スティーブン・ピンカーSteven Pinker

ハーバード大学心理学教授。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『良い文章とは(The Sense of Style)』(未邦訳)があり、最新の『21世紀の啓蒙』が10冊目になる。

研究、教育ならびに著書で数々の受賞歴があり、2004年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、2005年にはフォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」に選ばれた。米国科学アカデミー会員。『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』の語法諮問委員会議長も務めている。

 

『21世紀の啓蒙』目次

◎上巻

序文

第一部 啓蒙主義とは何か

人が生きる意味と、啓蒙主義の理念
啓蒙主義の理念は今こそ擁護を必要としている
啓蒙主義の理念は繰り返し語られねばならない

第一章 啓蒙のモットー「知る勇気をもて」

啓蒙とは何か。啓蒙主義とは何か
「理性」とは本来、交渉や駆け引きとは無縁のもの
「科学」による無知と迷信からの脱却
感覚をもつ者への共感が「ヒューマニズム」を支持する
啓蒙主義の「進歩」の理念とは何か
いかに富は創造され、「繁栄」が実現するか
「平和」は実現不可能なものではない

第二章 人間を理解する鍵「エントロピー」「進化」「情報」

人間を理解する第一の鍵「エントロピー」
人間を理解する第二の鍵「進化」
人間を理解する第三の鍵「情報」
三つの鍵で人類は呪術的世界観を葬った
認知力と規範・制度が、人間の不完全さを補う

第三章 西洋を二分する反啓蒙主義

西洋生まれの啓蒙主義を批判したのも西洋
現在もなお続くロマン主義による抵抗
所属する集合体の栄光を優先する人々
進歩あるいは平和を批判する衰退主義
科学批判による反啓蒙主義

第二部 進歩
第四章 世にはびこる進歩恐怖症

世界が良くなっていることを認めない人々
ニュースと認知バイアスが誤った悲観的世界観を生む
世界を正しく認識するには「数えること」が大事
前著『暴力の人類史』への反論の典型
過去の進歩の実績を認識することはなぜ重要か
悪いことを想像するほうが簡単なのはなぜか
知識人とメディアが過度な悲観論に傾く理由
事実、世界は目を瞠る進歩を遂げてきた

第五章 寿命は大きく延びている

平均寿命は世界的に延びている
乳幼児死亡率と妊産婦死亡率は著しく低下
長生きする人も増加、健康寿命も延びている
寿命が延びることに文句をつける人たち

第六章 健康の改善と医学の進歩

医学の進歩が一つずつ問題を解決してきた
疾病制圧の功労者たちを忘れてはならない
今も感染症根絶の努力が続けられている

第七章 人口が増えても食糧事情は改善

飢餓は長いあいだ当たり前の出来事だった
急激な人口増加でも飢餓率は減少した
科学技術の進歩がマルサス人口論を無効化した
農業の技術革新は不当に攻撃されている
二〇世紀の飢餓の最大要因は共産主義と政府の無策

第八章 富が増大し貧困は減少した

世界総生産は二〇〇年でほぼ一〇〇倍に
実は総生産の増大以上に我々は豊かになった
貧困からの大脱出を可能にした三大イノベーション
「極度の貧困」にある人の比率も絶対数も減少
「毛沢東の死」が象徴する三つの貧困削減要因
グローバル化が貧しかった国を豊かにした
科学技術の発展がより良い生活をより安く実現

第九章 不平等は本当の問題ではない

不平等は過度に注目され問題視されている
所得格差は幸福を左右する基本要素ではない
「不平等が悪を生む」という考えは間違っている
不平等と不公正を混同してはならない
経済発展に伴い格差はどう推移するか
二〇世紀以降の格差縮小の最大要因は戦争
資本主義経済の発展とともに社会移転は増えた
先進国の空洞化した中間層とエレファントカーブ
エレファントカーブは事態を過大に見せている
先進国の下位層・下位中間層も生活は向上した
「中間層の空洞化」という誤解が生じる理由
実はアメリカの貧困は撲滅されつつある
優先課題は経済成長、次はベーシック・インカム
所得格差は人類の後退の証拠ではない

第一〇章 環境問題は解決できる問題だ

環境問題の事実を科学的に認めることが必要
半宗教的イデオロギー「グリーニズム」の誤り
グリーニズムの黙示録的予言はすべてはずれた
さまざまな面で地球環境は改善されている
生活や生産活動の高密度化・脱物質化が重要
間違いなく憂慮すべき事態にある「気候変動」
気候変動予想に人々はどう反応してきたか
自己犠牲の精神ではこの問題が解決しない理由
解決のため途上国に犠牲を強いるのは間違い
世界の「脱炭素化」はこれまでも進んできた
「カーボンプライシング」が脱炭素化の第一の鍵
脱炭素化の第二の鍵は原子力発電
脱炭素化はエネルギー技術の進歩にかかっている
大気中の二酸化炭素を減少させるにはどうするか
「気候工学」の手法も条件付きでは使っていい
悲観的にならず解決する方法を模索し実行する

第一一章 世界はさらに平和になった

『暴力の人類史』刊行以降、暴力は増加したか
長期的な戦死率の減少傾向は続いている
多くの内戦が終結、難民数も虐殺規模も縮小
国際的商取引と国益重視が戦争を遠ざけた
戦争を違法とする国際合意の功績は大きい
ロマン主義的軍国主義の価値観から脱却
かつての軍国主義を勢いづけた反啓蒙主義

第一二章 世界はいかにして安全になったか

事件・事故を低減する努力は軽視されがち
「国家の統治」「商取引」は殺人を減少させる
「根本原因の解決なしに暴力減少は無理」の噓
「世界の殺人発生率を今後三〇年で半減」は可能
殺人発生率を半減させるための方法
自動車事故による死亡率は六〇年で六分の一に
歩行者の死亡事故も大きく減少してきた
火事・転落・溺死の減少率も非常に大きい
薬物過剰摂取事故による死者は増えている
かつて「進歩の代償」とされた労働災害も減少
地震・噴火・台風などの被害緩和策も効果発揮
事故も殺人も減らせる。その減少にもっと感謝を

第一三章 テロリズムへの過剰反応

テロの危険は非常に過大評価されている
テロによる死者の大半は内戦地域に集中している
テロの目的は注目を集めること。実際は無力だ
テロへの恐怖は、世界が安全である証しでもある

第一四章 民主化を進歩といえる理由

民主化を進歩の証しと見なせるのはなぜか
「世界の民主化は後退している」という悲観論の噓
選挙こそ民主主義の本質、というわけでもない
民主主義とは国民が非暴力的に政権を替えられること
国家による人権侵害は徐々に減っている
国家による究極の暴力行使、死刑の減少
アメリカにおいても死刑は消滅前夜にある

第一五章 偏見・差別の減少と平等の権利

平等の権利獲得の輝かしい歴史は忘れられがち
ネット検索の履歴データに表れた偏見減少の趨勢
アメリカのヘイトクライムは減少傾向にある
西洋以外の国々でも偏見と差別は減っている
現代化が進むと「解放的な価値観」が根づく
「先進国の価値観は保守化している」の噓
先進国以外の国々も価値観は解放的になった
アメリカでは子どもの虐待やいじめは減少
世界の児童労働の比率は減少、教育機会は拡大

◎下巻
第一六章 知識を得て人間は賢くなっている

教育は社会を豊かにし、平和で民主的にする
教育は世界中に広まりつつあり、男女格差も縮小
世界的なIQの上昇「フリン効果」の原因は何か
フリン効果は世界を豊かにした要因の一つ
「人間開発指数」の改善は進歩の実在を証明する

第一七章 生活の質と選択の自由

好きなものを手に入れられるのは良いことだ
労働に費やさなければならない時間が減少
家事や生活維持のためにかかる時間も減少
家族の時間は増え、遠くの人との交流は便利に
食べ物が国際的になり食事の選択肢が増加
文化に触れ学ぶことが簡単・便利・安価に

第一八章 幸福感が豊かさに比例しない理由

わたしたちは豊かになっても幸福を感じないか
客観的な意味での幸福を形づくるものは何か
主観的な幸福はどのように測られるか
人々の幸福感は本当に向上していないのか
裕福でも幸福感が高くない国アメリカの実態
現代人はより孤独になっているというのは誤り
自殺率と不幸度の関係についても誤解が多い
鬱病と診断される人が増えているのはなぜか
本当に鬱病に苦しむ人は増えているのか
自由の獲得が幸福感の伸びない理由の一つ
神や権威から離れ自らの責任で生きる不安

第一九章 存亡に関わる脅威を考える

科学者が提示する数々の「脅威」は本物か
むやみに脅威を語ることが危機をつくり出す
低確率事象のリスク評価は過大になりがち
二〇〇〇年問題に見る科学者のバイアス
科学技術は人間を災害から守っている
人工知能は進化しても人間を滅ぼさない
AIの暴走も人類への脅威とならない
悪意ある個人が世界を滅ぼせるようになるか
世界を滅ぼせるテロリストは存在しえない
バイオテロは非常に困難で効率も悪い
核の脅威は本物だが過大に喧伝されている
核戦争を防いできたのは何かを考えるべき
核は究極兵器でも究極の抑止力でもない
世界の核兵器は近年減少しつづけている
まずは核の運用法を安全にする必要がある

第二〇章 進歩は続くと期待できる

この二世紀半のあいだにもたらされた進歩
進歩は自動的にもたらされるものではない
進歩の継続を信じる合理的理由は歴史に
経済成長の停滞は進歩の継続を妨げるか
将来の進歩をもたらしうる技術の数々
ポピュリズムは進歩をはばむ脅威となるか
ポピュリズムの支持層は「文化競争の敗者」
ポピュリズムは老人の運動。衰退の可能性大
進歩の継続を支持し、前向きに取り組む

第三部 理性、科学、ヒューマニズム
第二一章 理性を失わずに議論する方法

理性や客観性を否定したら議論は不可能になる
人間の理性を使う能力は進化によって磨かれてきた
不合理な主張を信じるのは無知だからではない
人は評判を気にして集団内の主流意見に同調する
知識が深まるほどに意見が二極化することさえある
知能が高くても偏見があると誤った結論に飛びつく
左派の右派への、右派の左派への偏見を検証
右も左もイデオロギーのせいで人類に貢献し損ねた
右・左・中道で選ぶのではなく、合理性で選択する
専門家を予測の正確さで評価すると多くが落第
驚くべき精度で予測を当てる「超予測者」の特徴
政治の二極化と大学の左傾化は確かに進んでいる
政治と大学の二極化・偏向は何をもたらしたか
「ファクトチェック」が理性的な人々に力を与える
長期的に見れば理性は今まで真実を広めてきた
認知バイアスに関する教育で「脱バイアス」は可能
党派性の克服には理性的議論のルールも必要
人間はたいていの状況下では十分に理性的
物事が「政治問題化」すると人は理性を失う
理性的な政治の実現をあきらめてはならない

第二二章 科学軽視の横行

科学の偉業は否定しようもなく大きく普遍的だ
アメリカの政治家による科学軽視の事例
多くの知識人たちも科学を軽視・敵視してきた
否定論者はどのように科学を非難してきたか
科学支持者が広めたいと考える二つの理想
「科学は領分を守るべし」という論の誤り
科学や科学論の誤用・誤解・曲解が横行
科学的人種主義の罪を科学は負うべきか
科学の悪者扱いが大学でまかり通っている
バイアスを正すには科学的知識が不可欠
科学と人文学の協力は双方の得になる
知の統合を妨げる「第二の文化」の警察官

第二三章 ヒューマニズムを改めて擁護する

ヒューマニズムとは人類の繁栄を最大化すること
道徳の非宗教的基盤は「公平性」だけでは不足
道徳の基盤となる人間の身体・理性・共感
功利主義的道徳は必ずしも悪いものではない
ヒューマニズムの功利主義的主張がもつ利点
ヒューマニズムを否定したがる二つの勢力
有神論的道徳からのヒューマニズム批判の中身
「基礎物理定数」は神の存在の証拠?
「意識のハードプロブレム」は神の存在の証拠?
有神論的道徳が抱える第二の欠陥
信仰擁護無神論者「信仰を否定するな」
神がいなくても人が生きる意味は見出せる
「宗教は巻き返している」という見解は誤り
宗教復興と見誤らせる「出生率」「投票率」
イスラム諸国の停滞の原因は明らかに宗教
イスラム世界でもヒューマニズム革命は進む
ヒューマニズムの敵を育てたニーチェの思想
ニーチェに感化され独裁者を支持した知識人たち
ニーチェからトランプに至る二つのイデオロギー
トランピズムの思想基盤は論理的に破綻している
啓蒙主義の理念はつねに擁護を必要としている

 

30年ほど前にリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を読んで以来ダーウィニズムという魅力的なウィールスにとりつかれている私はドーキンス、マット・リドレー、ダニエル・デネットそしてスティーブン・ピンカーの邦訳著書は必ず読むようにしている。

進化人類学、進化心理学(ゲーム理論)の同じような立場に立つハラリやジャレット・ダイアモンドの著書もそれなりに興味深いが4人と比べると考察の甘さや観念的・情緒的論述が気になる(ジャレット・ダイアモンドの最近の著書「危機と人類」での、特に日本に関する皮相的な考察にはがっかりした読者も多いのでは。)。

ピンカーの主張は前作の「暴力の人類史」に凝縮されていると思うがなんせある意味難解(とくに図表解釈が)で読むのに時間がかかるし高価(上下巻で10,000円)で一般読者向けとは言い難かった。ということで多岐にわたる彼のデータ分析とその考察を人口問題、食料問題、エネルギー問題、環境問題、経済格差問題などの現代的テーマに絞って一般に「受け入れられやすい」論述としてではなくたとえそれが「受け入れられにくいとしても」現実のデータを基にした「真実」として明らかにしようとするのが当著書の意図だと思う。

当著書でもピンカーは相変わらずの歯切れの良さと鋭いデータ分析で説得力のある説を展開している。団塊世代の70年以上を生きてきた身としてピンカーの主張する「現代は過去より確実に良くなっており、将来は現代よりも確実によくなるだろう」に同意する。マクロ的に見れば、世界が、もちろん多くの例外や時間的、地域的な誤差があるにしてもあらゆる面で「過去よりも現代が確実に良くなっている」と思う。思い出して欲しい、50年ほど前の世界を。後進国(開発途上国)の爆発的人口増加で食糧危機が叫ばれていたことを、それが今、それらの国々から多くの観光客が日本を訪れている。

オイルショックでエネルギー危機が叫ばれてれていたことを、エイズなど感染症への恐怖が世界に蔓延していたことを。評論家や学者連中がまるで明日にでも世界が崩壊するように騒ぎ立てていたことを。それが現代どうなっているのかを。宗教的・社会的因習がいまなお強く残っている地域でさえももちろん不十分極まりないにしても以前に比べ現代ははるかに人命が尊ばれていることを(以前は隠し通すことができた虐殺や迫害もインターネットにより瞬時に世界中が知ることとなる現代、どのような地域でも交易など外部との交流が不可欠な現代、為政者もその影響を考えざるを得ない。もちろん知られることを恐れ強権的に防ごうとする為政者は現代も多いがそれがうまくいかないことはソ連など旧社会主義国家の崩壊など歴史が証明している。)。

あらゆる分野での絶え間ない科学的進歩、分業と交易のグローバル化など様々な「イノベーション」が徐々に、そしてかなりの負の副産物を生んでいるにしても確実に多くの問題を解決してきたのではないだろうか。

それが現代・将来・未来には起こらないと考えるのはおかしいのではないだろうか。負の副産物自体も徐々に解決されていくのではないだろうか。

現代の私たちの身の回りの食料・エネルギー・医療・各種製品・交通・通信そして「文化」「知識」などあらゆる「もの」の中でグローバルな「イノベーション」の恩恵を受けていないものがどれだけあるだろうか。

私個人としてはDNA構造の解明など戦後のめざましい科学的進歩の中でドーキンスやマット・リドレー、ピンカーなど先駆的科学者、ジャーナリストの著書を読むことで生と死を科学的に理解することができたし、宗教家の商売道具の「あの世」が存在しないことも確信できたし、どういう根拠があるのか多くの人々が今なお崇め奉っている天皇や私の祖先も「サル」だったことも確信できたし、「徳」や「信頼」が宗教の専売特許ではなく分業と交易の進歩によって私たちホモサピエンスが獲得してきたものであることなど様々な面で彼らの著書に「啓蒙」されてきたたことに感謝している。

私はオバマ前大統領の言ったように「もしこれまでの歴史の中で生きる時代を選ぶことができるなら躊躇なく現代を選ぶ」だろう。「サムライジャパン」や「なでしこジャパン」の時代、一億火の玉「ワンチーム」であることが強制された戦前の日本などは決して選ばない。

ただ、誤解してはいけないのはピンカー教授は過去のどの時代よりも最良な「現代」やより良くなるであろう「未来」が目的をもって「実現した」、あるいは「実現するであろう」と予測しているのではなくある意味利己的な(分業や交易での利得のための取引相手との信頼関係の増進、より大きな利得を得るための生産手段の改良、互いの安全のためのさまざまな手段の開発・選択、より多く子孫を残すための富や栄誉の獲得など。

 

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ビッグデータ探偵団

2020年02月29日 13時29分09秒 | 社会・文化・政治・経済
[安宅和人, 池宮伸次, Yahoo!ビッグデータレポートチーム]のビッグデータ探偵団 (講談社現代新書)
 
 
いかに膨大なデータも価値を発揮しるのは、人間の感性や伝える力が不可欠。
 
ビッグデータ、という単語を聞いたことのある人は多いかもしれない。
しかし、これによっていったい何ができたり、どんなことがわかったりするのかを知らない人は、まだまだ多いのではないか?
私たちが本書で示していくことは、ビッグデータが、これからのビジネスを考えるうえで、また、あなたの生活をより快適なものにするために、こんなにも役に立つのか、という驚きと発見である。
今後は、すべての産業が「データ×AI化」していく。
ネットとリアルは別個の世界であるどころか、切り離しえないものであり、今後ますますその連関が密接なものとなっていくことは間違いない。
このような時代に生きる人々にとって、変革のカギとなるデータについての皮膚感覚的な理解が欠如していることは、致命的と言わざるを得ない。
データを正しく理解する力(=データ・リテラシー)は、リアルな現実世界を生きていくうえで、もはや「常識」として身に着けておくべき必須のツールとなる。
データを分析し、意思決定に役立てていく「データ・ドリブン」の思考力、分析力、情報科学の基本、データの力を解き放つ力――これらをしっかりと会得し、応用できる人だけが、これからの社会を生き抜いていけるのだ。
さあ、私たちが分析した以下の新事実を読んで、データの魅力と無限の可能性を体感してみよう!
第1部 ビッグデータは、「深層」を描き出す1―1 
新社会人は4月に「モットーとは」、5月に「新入社員 辞めたい」、6月に「恋活」と検索する1―2 
ママは、生後102日目にわが子をモデルへ応募したくなる1―3
 「頭が痛い日本人」が最も多い時刻は、17時である1―4 矢沢永吉と郷ひろみは、双子レベルの「そっくりさん」1―5 
日本は、「東京」と「それ以外」の2つの国からできている幕間劇1―6 音楽CDが売れる時、サバの漁獲量が増える――擬似相関とは何か?
第2部 ビッグデータは、こんなに役立つ2―1 
これからの「混雑ぶり」がわかり、移動のストレスが消える2―2 
救援活動をスムーズに進める、「隠れ避難所」を探せ!
2―3 リニアで日本はどれだけ狭くなるのかを、実際に見てみよう2―4 
政治への関心が薄い日本人の注目を一挙に集めた、「令和」発表の瞬間2―5 検索量を分析すると、選挙の議席数予測は96%も的中する2―6 
今の景気を予測することは、どこまで可能か?
膨大なデータは見えてこそ、意味を持つ。
明快にわかる、オールカラー図解版!
 
 内容(「BOOK」データベースより)
膨大なデータは見えてこそ、意味を持つ。明快にわかるオールカラー図解版!データと人間の発想でわかったニッポンの新事実!
 
著者について
安宅 和人
Yahoo!ビッグデータレポート統轄。慶應義塾大学環境情報学部教授/ヤフー株式会社CSO。データサイエンティスト協会理事。マッキンゼーを経て、2008年よりヤフー。全社横断的な戦略課題の解決、事業開発に加え、途中データ及び研究開発部門も統轄。2016年より慶應義塾大学SFCにてデータドリブン講座を担当。イェール大学脳神経科学プログラムPh.D.。東京大学生物化学修士。著書に『イシューからはじめよ』(英治出版)がある。

池宮 伸次
Yahoo!ビッグデータレポート編集長。シニアデータアナリスト。雑誌編集者を経て2007年ヤフーに入社。Yahoo!検索を含む複数のサービスや全社データの分析に従事。「データをみんなに見える形で活用する」をモットーに、分析レポートやヤフーが持つログを活かしたコンテンツを対外的に発信。数多くのメディア出演や登壇、大学での講義も行っている。

Yahoo!ビッグデータレポートチーム
安宅和人を中心に、ヤフーの有志メンバーで構成されたビッグデータ分析班。東大博士号取得者から元雑誌編集者、ママさんまで、多様な経歴・スキルを持つデータのスペシャリストが集う。2012年の結成以降、「データの面白さとパワーを伝え、社会の課題を解決する」を使命として、世の中のあらゆる事象の予測やデータの可視化に挑戦している。
 

 

データを扱える企業は必読本だし、データによってユーザーを知る喜びを得るために中学の教科書にしてほしい本。
ビックデータ≒ダッシュボードやAIと勘違いしてる企業も多い中でデータからユーザーの行動、不安、欲望を深く知り、インサイトの出し方がわかりやすく学べ。

何よりもデータは何のためにあるのか?といつ向き合い方が学べます。

筆者が前職の先輩ということもあり、筆者のユーザーの事実に向き合う真摯さを知っていてもなお素晴らしい本です。検索のYahooだからできることと蓋をせず、自分の企業でもできることを考えるかどうかで圧倒的な差がつにます。

 

ahooのスタッフが自社のサービスで蓄積したデータを時間帯、季節、場所、年齢層などの切り口から徹底分析。

キーワードから人の心の動きが透けて見え、景気は高い精度で予測可能、選挙の議席予測は週刊誌を上回る精度で的中、日本は「東京」とそれ以外の二つの地域でできていることなどの解析結果を報告します。
データは世の中の実態に対する影に過ぎないと著者は冷静な態度を崩しません。我々の残した足跡で高い確率で未来が予測できてしまうことは残酷でもある一方、まだ見ぬ世界が広がっているとも思わせます。
オールカラーで図版多数。ビッグデータの動きを撮った動画へのリンクをQRコードで紹介してあります。

 

オールカラーでグラフや図を満載し、こんなに面白く、為になる本はそうはない。本書は大ヒットするのではないか。ヤフーで最も多く検索された用語を割り出して分析する。

これが本書の言うビッグデータである。新入社員の入社式から1ケ月間のビッグデータが特に面白い。給料日には「両親へのプレゼント」が多いのは、親子関係の健全さも考えられるが、モラトリアム人間の親への依存度の強さと感謝の気持ちを考えるべきであろう。「奨学金の返済」も厳しい現実を浮き彫りにする。

女性は「化粧」などコスメへの関心の高さが面白い。「足の裏の臭い」が気になりだすのも、この頃だ。「定期預金」や「貯金」は素晴らしいが、更に感心したのは、「日経新聞購読」である。

サラリーマンとして景気の動向への関心が強まるのであろう。入社時には「ネクタイの結び方」が気になるようだ。
こうしたビッグデータを見て、日本社会の健全さを伺うことができよう。

しかし、数ヶ月経つと、早くも「転職」が出てくるのは、残念であるが、つらく悲しい現実である。
ビッグデータを見て、その時期なぜその語が多く検索されるのか考えてみるのが参考になる。それを考えないのであれば、ビッグデータも宝の持ち腐れになってしまい、無用のものになる。
日本社会の特色や世相の分析に役立つ情報が満載だ。お勧めの一冊だ。

 

これから私たちが生活していくうえで、ビッグデータを活用することは非常に有用だと考えられています。
 そこで、今所では、日本最大級のデータ量を誇るヤフーの様々なサービスを通じて蓄積されてデータ群を活用し、様々な事柄を明らかにしています。
 もちろんデータ解析を行わなくてもなんとなくそうではないかと思っていることもありますし、
 全く予想だにしなかったこともあります。
 しかしデータに裏付けされたことと、そうでない事実には大きな差があるのは当然の事です。
 本書では様々なデータ分析が行われています。新入生の行動、思考をクロノロジカルに見た分析、
 個人の24時間の感情の動き、この辺りは大体予想できる範囲です。
 しかし、歌詞から見た歌手の類似性になると、中々予想は難しいのではないでしょうか!
 ただ疑似相関ということがあるので、これには注意が必要です。
 本書では、さらに選挙予想、景気動向にもビックデータ活用を試みています。
 この辺りはAIを活用すればもっと正確な予想ができそうに思いますが?!
 

 

主に検索された用語に着目して、人々の行動や考え方に思いを巡らせる。
全日本国民とは言わないまでも、それに近い母集団による検索行動によって集まったデータを使えば、こんなことが分かりそうですよ、ということが図表もふんだんに使いながら示されている。大変示唆に富む本だと思う。
全カラーにした出版社の判断も素晴らしい。

 

安宅さんが書いた本というだけで手に取りました。結論から言えば面白い本ではありました。日本最大級の検索数を誇るヤフーがその膨大なデータを分析して様々な“事実”を明らかにしていきます。例えば、時期別や時間帯別の検索語がこんなに人々の気分を表すものだと分かったり、県民性や東京の異質性をあぶり出すことになるとは、考えれば当然のことなのですが改めてデータで示されると納得させられます。

ただ、同時にツッコミどころも満載です。私自身はヤフーで検索することはないので日本最大級とか言われてもピント来ないですし、そもそも「ビッグデータ」という言葉自体がもはや死語なのですが、2012年暮れ頃から始まった取り組みだそうなのでそこは致し方ないでしょうか。

また、本書ではヤフー社内のチームメンバーを紹介していますが、そんなアクノレッジは社内でやって欲しいところで、一般読者からすればうざいと感じるかもしれません。本書の体裁もオールカラーになっていますが、本当にカラーで見せる必要がある図版は数ページ程度で収まりそうなので、他は一色刷りにして価格を下げて欲しかったところです。

より本質的なことを言えば、取り組みの社会的意義や方向性には非常に賛同するものの、そこから導き出されたファクトがあまりに表層的というか、ハッキリ言って“どうでもいいこと”ばかりなのが残念です。データの力はこんなものじゃないでしょうに。

本書の最後でも触れられているようにヤフーが独自に景気動向指数を発表するようになり、それが政府発行のものより信憑性が高いとなったら、この取り組みは真に価値を生むのだと思います。そこへの応援の意味も込めて本書を前向きに評価したいと思います。

 

 

 
 

 

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岐路の前にいる君たちに

2020年02月29日 12時34分53秒 | 社会・文化・政治・経済
岐路の前にいる君たちに ~鷲田清一 式辞集~

 ~鷲田清一 式辞集~

鷲田清一 (著)

内容紹介

未来はけっして明るくない。そんな気分が充満するなかで、
どうかこのことだけは心に留めておいてほしいという願いを込めています。


――あとがきより

哲学者・鷲田清一が、大阪大学、京都市立芸術大学の入学・卒業式で、
新しい世界に旅立つ若者へ贈った、8年分の人生哲学。


東日本大震災の2週間後、戸惑いのなかで話されたリーダーシップ論
「… 請われれば一差し舞える人物になれ … 」も収録。

不安と希望が入り混じった若い人へ向けたメッセージはそのまま、
私たち現代人が直面する仕事や人生の悩みに寄り添い、背中を押してくれます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

・自分が何を知っていて何を知らないか、自分に何ができて何ができないか、
それを見通せていることが「教養」というものにほかなりません
2008年度 大阪大学卒業式

・もしリーダーに推されたとき、いつでも「一差し舞える」よう、
日頃からきちんと用意をしておけ
2011年度 大阪大学卒業式・学位記授与式

・同じ枠のなかでのゲームや競争に埋没していては、
ほんとうの科学革命につながるようなすばらしい研究は生まれない
2009 年度 大阪大学入学式

・人をまとめ、平均化し、同じ方向を向かせようとする動きに、
最後まで抵抗するのが、芸術だ
2015 年度 京都市立芸術大学卒業式

・問いはみなさんの内側にあるだけでなく、
掘り下げていけば社会のさまざまな困難にも接続していきます
2017年度 京都市立芸術大学入学式

・困ったら、教えてもらう、手伝ってもらうということが、
あたりまえのようにできる空気こそ、社会にもっとも必要なものでもある
2016 年度 京都市立芸術大学入学式

内容(「BOOK」データベースより)

哲学者鷲田清一が若者に贈った、不定の時代を照らす教養の言葉。

著者について

1949年京都生まれ、哲学者。京都大学大学院文学研究科哲学専攻博士課程単位取得。
2007~2011年大阪大学総長。2015~2019年京都市立芸術大学理事長・学長を歴任する。
現在はせんだいメディアテーク館長、サントリー文化財団副理事長。
医療や介護、教育の現場などに哲学の思考をつなぐ臨床哲学を提唱・探求する。 著書に『モードの迷宮』(ちくま学芸文庫、サントリー学芸賞)、
『「聴く」ことの力―臨床哲学試論』(ちくま学芸文庫、桑原武夫学芸賞)、 『生きながらえる術』(講談社)など多数。
2015年4月から朝日新聞で『折々のことば』を連載中。

 

誰もが全容を把握できない複雑化・肥大化を続ける現代。
自分と身近な人との<生身のリアリティー>に即して世界を測り、自身を時代に位置付け、根差すのを知ることだと語る。
そして、大切なのは<中間世界>、つまり一市民や地域住民としての「未知であるような人たちとのかかわり」だという。
「成熟した市民」に、と望む。
他者を他者の側から理解し、その喜びや悲嘆への想像力を持つこと。
この見えないものへの想像力を強化するのが学問や芸術だ。
だからこそ「苦境のなかでも希望の光を絶やさない」使命の人に、と呼びかける。
不確かな時代の若者に宛てた、視野が晴れるような珠玉の一書である。

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“1人”に端を発し次々拡大…新型コロナウイルス感染者

2020年02月29日 11時30分32秒 | 社会・文化・政治・経済

愛知で判明した28人の関係性は

 名古屋市は新たに市内に住む60代の男性が新型コロナウイルスに感染していたと発表しました。

 感染が確認されたのは、名古屋市に住む60代の男性で、27日に38度の熱を出し、市内の医療機関を受診。28日に市の衛生研究所が行った遺伝子検査の結果、陽性と判明しました。

 男性は27日に陽性と判明した60代の女性の夫で、この女性から感染したとみられています。

 容体は安定していますが、愛知県内の医療機関に入院する予定です。愛知県の感染者はこれで28人目で、夫婦での感染は3組目です。

【これまでに判明した愛知県の感染者】

・1月26日(日)武漢市から愛知を訪れた40代男性

・1月28日(火)武漢市から愛知を訪れた40代男性

・2月14日(金)ハワイ旅行から帰国した名古屋市在住の60代男性

・2月15日(土)ハワイ旅行から帰国した60代女性で14日に判明した60代男性の妻

・2月16日(日)愛知県在住の60代男性で、15日に判明した60代女性の知人

・2月17日(月)愛知県在住の60代男性で、16日に判明した60代男性の知人

・2月18日(火)愛知県在住の60代男性で、16日と17日に判明した60代男性2人の知人

・2月19日(水)名古屋市在住の50代女性でハワイ旅行から帰国した60代女性と同じ施設を利用

・2月20日(木)名古屋市在住の80代男性でハワイ旅行から帰国した60代女性と同じ施設を利用

・2月21日(金)名古屋市在住の20代女性と70代男性の2人 2人ともハワイ旅行から帰国した60代女性と同じ施設を利用

・2月22日(土)名古屋市在住の40代女性、60代男性2人、60代女性のあわせて4人 このうち3人はハワイ旅行から帰国した60代女性と同じ施設を利用 60代の男性1人は19日に感染が確認された50代の女性が訪れた別の施設を利用

・2月23日(日)名古屋市在住の70代男性と70代女性の2人 2人ともハワイ旅行から帰国した60代女性と同じ施設を利用

・2月25日(火)名古屋市在住の40代女性、70代女性2人のあわせて3人 3人ともハワイ旅行から帰国した60代女性と同じ施設を利用

・2月26日(水)名古屋市在住の50代男性、60代男性、70代男性2人、70代女性のあわせて5人 50代男性と60代男性はハワイ旅行から帰国した60代女性と同じ施設を利用 70代男性2人は22日に陽性が判明した60代男性が利用していた別の施設で感染 70代女性は20日に感染が確認された80代男性の妻 ※このうち1人が25日の午前7時台と午後5時台に地下鉄の名城線と名港線、午前7時台から8時台にかけてと午後5時台に名鉄犬山線を利用

・2月27日(木)名古屋市在住の60代男性と60代女性の2人 男性は22日に陽性が判明した名古屋高速の男性職員(60代)の同僚 女性は22日に陽性が判明した60代の男性とこれまでに3人が感染したとみられる市内の屋内施設で接触

・2月28日(金)名古屋市在住の60代男性 27日に陽性が判明した60代女性の夫

 

最終更新:2/29(土) 
東海テレビ

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【自転車】UCIトラック世界選手権ベルリン

2020年02月29日 11時30分32秒 | 未来予測研究会の掲示板

【自転車】UCIトラック世界選手権ベルリン:2月26日に開幕、日本から15選手出場

2020年トラック世界選手権大会派遣選手団

選手(短距離)

脇本雄太(JPCA JPCU福井/チームブリヂストンサイクリング)

河端朋之(JPCA JPCU岡山)

新田祐大(JPCA JPCU福島/ドリームシーカー)

深谷知広(JPCA JPCU愛知/ドリームシーカー)

雨谷一樹(JPCA JPCU栃木)

小林優香(JPCA JPCU福岡/ドリームシーカー)

太田りゆ(JPCA JPCU埼玉/チームブリヂストンサイクリング

選手(中距離)

橋本英也(岐阜 JPCU岐阜/チームブリヂストンサイクリング)

窪木一茂(福島 チームブリヂストンサイクリング)

今村駿介(福岡 中央大学/チームブリヂストンサイクリング)

近谷 涼(富山 チームブリヂストンサイクリング)

沢田 桂太郎(宮城 日本大学/チームブリヂストンサイクリング)

梶原悠未(茨城 筑波大学)

中村妃智(千葉 日本写真判定)

古山稀絵(東京 日本体育大学)

スタッフ

短距離ヘッドコーチ:ブノワ ベトゥ

中距離ヘッドコーチ:クレイグ グリフィン

短距離コーチ:ジェイソン ニブレット

強化医科学部会員:大林 治

強化支援スタッフ:井上純爾

強化支援スタッフ:中山真臣

強化支援スタッフ:青山ゆう

強化支援スタッフ:森 昭雄

強化支援スタッフ:斉藤健吾

強化支援スタッフ:ギルバート アヴァンティーニ

強化支援スタッフ:田畑昭秀

通訳:アリス ボナミ

通訳:柴みちる

JCFスタッフ:貝塚直子

JCFスタッフ:齊藤真未

【東京オリンピック出場枠争い】自転車競技・ロード&トラック:トラック種目は開催国枠なしも、ケイリンで日本にメダル可能性大

■2020年トラック世界選手権大会:競技日程(現地時間)

2月26日(水)

13:00- 女子チームパシュート予選

14:55- 男子チームパシュート予選

18:30- 女子チームスプリント予選

19:17- 男子チームスプリント予選

20:09- 女子スクラッチ

20:27- 女子チームスプリント1回戦

20:38- 男子チームスプリント1回戦

20:59- 男子チームパシュート1回戦

21:25- 女子チームスプリント決勝

21:33- 男子チームスプリント決勝

2月27日(木)

14:30- 男子ケイリン1回戦

14:53- 女子スプリント予選

15:40- 男子ケイリン敗者復活戦

15:58- 女子スプリント1/16決勝

16:36- 男子ケイリン準々決勝

16:50- 女子スプリント1/8決勝

18:30- 女子チームパシュート1回戦

18:58- 女子スプリント準々決勝

19:14- 男子ケイリン準決勝

19:25- 男子チームパシュート決勝

19:57- 男子スクラッチ

20:42- 男子ケイリン決勝

20:54- 女子チームパシュート決勝

2月28日(金)

15:00- 女子オムニアム(スクラッチ)

15:18- 男子1キロタイムトライアル予選

15:46- 男子個人パシュート予選

17:06- 女子オムニアム(テンポレース)

18:32- 男子ポイントレース

19:24- 女子スプリント準決勝

19:34- 女子オムニアム(エリミネーション)

20:00- 男子1キロタイムトライアル決勝

20:36- 男子個人パシュート決勝

20:51- 女子スプリント決勝

21:01- 女子オムニアム(ポイントレース)

2月29日(土)

11:00- 女子500メートルタイムトライアル予選

11:30- 男子スプリント予選

12:16- 男子オムニアム(スクラッチ)

12:39- 男子スプリント1/16決勝

13:17- 女子個人パシュート予選

14:33- 男子オムニアム(テンポレース)

16:30- 女子500メートルタイムトライアル決勝

16:52- 男子スプリント準々決勝

17:10- 女子マディソン

17:51- 男子オムニアム(エリミネーション)

18:41- 女子個人パシュート決勝

19:02- 男子オムニアム(ポイントレース)

3月1日(日)

11:00- 男子スプリント準決勝

11:08- 女子ケイリン1回戦

11:49- 女子ケイリン敗者復活戦

14:02- 女子ポイントレース

14:39- 男子スプリント決勝

14:47- 女子ケイリン準々決勝

15:03- 男子マディソン

16:03- 女子ケイリン準決勝

16:36- 女子ケイリン決勝

2020 UCI TRACK CYCLING WORLD CHAMPIONSHIPS PRESENTED BY TISSOT - TIMINGS AND RESULTS

世界選手権公式練習が始まり、一気に大会モードになってきました

ここまでやる事はやって来たので後は自転車に乗ってる時以外は適度にリラックスして本番まで過ごします
その練習風景を動画にまとめてみました

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脇本、ケイリンで銀 五輪枠で出場確実

2020年02月29日 11時18分32秒 | 未来予測研究会の掲示板

【ベルリン=共同】トラック種目の世界選手権第2日は27日、当地で行われ、男子ケイリンで脇本雄太が銀メダルに輝き、東京五輪出場枠1を獲得した。脇本の代表選出も確実となった。日本勢は昨年の新田祐大、一昨年の河端朋之(いずれも日本競輪選手会)に続き3年連続の銀。

◆課題を再認識「次につながる」

 東京五輪の男子ケイリン代表を確実にした脇本の次の照準は、本番で表彰台の頂点に立つことだ。「次(五輪金メダル)につながるという意味で銀メダルは良い結果。足りなかった部分を探す練習が始まる」と、早くも頭を巡らせる。

 準決勝は脇本がオランダのラブレイセンを尻目に、残り2周から一気に加速し逃げ切った。しかし、同様に仕掛けた決勝では直後にラブレイセンに捕まり、そのまま差を広げられた。

 高い対応力とパワーに屈した展開。昨年12月のワールドカップ第4戦のケイリンで5位になった際、「先頭に出るだけしか能がないと思われている。相手が嫌なことをしないと」と話していた課題を改めて突きつけられた形だ。

 日本自転車競技連盟の中野強化委員長は「もうワンテンポ早くいけたはず。迷ったように見えた」と指摘。ただブノワ・ベトゥ短距離ヘッドコーチは「テクニックは改善できる」と見通しを口にした。

 2位となって場内を走った時には笑顔はなかった脇本。帰国後はいったん休暇を取り、五輪へ向けた最終調整に入る。「自分の中で前進した」との手応えを胸に新たな戦いに挑む。 (共同)

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新型コロナ「衝撃の休校要請」…多くの医師が疑問を抱いている

2020年02月29日 10時37分08秒 | 社会・文化・政治・経済

2/29(土) 現代ビジネス

突然の臨時休校

 2月27日、政府から全国の小中高校や特別支援学校の臨時休校という方針が打ち出された。クルーズ船やチャーター機の患者数も含めれば日本国内での患者数は900人弱で死亡者は7人というのが現状だ(2月27日現在)。

【緊急】新型コロナウイルス、実は「マスク着用」より先にやるべきことがある

 学級閉鎖や休校といえば、インフルエンザ対策としてはなじみがある手法である。

 もちろん子どもの生命と健康を守るのは大人の義務として、政府が責任をもって行うのは当然のことだ。

 だが、閉鎖されたクルーズ船内や病院内で新型肺炎COVID-19が流行したとのニュースは数多いが、学校で流行というのはあまり聞かない話だ。

 世界の感染者数の人口別グラフをみても、べつに子どもや未成年に多いわけではない。

 また、新型肺炎で生命が危険にさらされるリスクが高いのは、高齢者や心臓病や糖尿病の持病のある人だ。4万人以上の大規模調査によれば、80歳以上の場合は14.8%の死亡率だが、39歳以下では0.2%という。

 私も含めて多くの医師が、学校だけを大きく取り上げて感染症対策の大きな柱に位置づけることにはハテナ? という気分になった。

 さらには、時代遅れの「学童防波堤論」という発想をも思い起こさせる。

アジア風邪と休校

 日本での感染症対策としての休校は、「アジア風邪」とよばれた1957~8年のインフルエンザのパンデミックがきっかけとなったとされる。

 全世界で大流行を起こしパンデミックとなる呼吸器疾患といえば、インフルエンザが代表だ。

 歴史書から推定すれば16世紀からインフルエンザのパンデミック(というか風邪症状で始まる病気で人びとがたくさん亡くなったとの記録)が十年から数十年ごとにあったようだ。

 ただし、当時もちろんウイルス検査はできていないので、ひょっとしたらコロナウイルスも人類史に登場していたのではないかと、私は疑っている。

 「アジア風邪」は、1957年の4月に香港で確認され、その後世界各地に広がったインフルエンザだった(それ以前の冬に中国で流行していたといわれる)。

 インフルエンザとしては季節外れだったため、当時は非常に恐れられた病気だった。実際に、そのインフルエンザによる死亡者数も世界で100万人と推定されている。

 日本では5月から流行し、新学期になっていた学校での集団発生があり、さらに修学旅行による日本全国への拡散が疑われたことで、休校や学級閉鎖が厚生省から通知された。

 これが感染症対策としての休校の始まりらしい。

ワクチン集団接種と休校

 その後、1960年代半ばからはインフルエンザワクチンが大量生産されて広く使われるようになった。

 学校で呼吸器疾患が広がることで社会全体に流行が拡大するというイメージは、その後の対策にも影響し続け、1970年代後半からは予防接種法に基づいて学童への集団予防接種が行われ始めた。

ただし、ほとんどの場合、健康な子どものインフルエンザは、生命に関わったり、重度の障害を残したりする病気ではないし、一生に一回しか罹らない(=ワクチンも一回ないし数回でよい)病気ではない。

 その意味では、天然痘やはしかや破傷風や狂犬病などに比べれば優先度は高くはない。

 そのワクチン集団接種にメリットとして期待されていたのが「学童防波堤論」ともいわれる社会防衛の考え方だ。

 つまり、子どもでの流行を防げば家庭内感染を防ぐことになり、会社で働いているお父さんたち(今なら女性もだが)のインフルエンザでの休業を減らすことができて、生産性低下を防止して、経済成長を減速させないで済むという発想だ。

 インフルエンザワクチンそのものは症状軽減や重症化予防の効果はあるものの、感染予防効果には無効との疑問が持たれたこと、さらにはワクチン接種による有害作用での訴訟なども問題化し、1980年代には強制的な集団接種への保護者からの批判が強まった。

 その経緯で、学童に対するインフルエンザワクチンの集団予防接種は1994年に廃止となって保護者の希望による任意接種となっている。

 ただし、今から見直してみると、集団免疫を上げることでインフルエンザワクチン集団予防接種は予防にも間接的には少し役立っていたとの説もある。

「学童防波堤論」よりは自主休学の支援を

 さて、こうした歴史的な経緯やら学級閉鎖と休校という集団的な感染症対策の背景にある考え方を思い起こすと、現在の感染症対策もまた、社会を大人中心の目線で見て子どもたちに緊急措置の不便さのしわ寄せを強いる古い発想を引きずっているように感じられてならない。

 学校で新型肺炎の局地発生が起きれば恐ろしいことであるのは事実だ。だが、学校の教室は、感染のリスクから言えば、会社のオフィスや満員電車と大差ないようにも見える。

 「なぜ、学校だけを?」という疑問は消しきれない。

 それは、新型肺炎の蔓延の予防に有効かどうかという医学的な問題だけでなく、「上意下達に一律に集団で」という発想そのものへの違和感でもある。

 確立した治療法のない現時点では、入院による隔離よりも、重症ではない人は自宅で自主隔離が好ましいとの考え方は国際的コンセンサスになりつつある。

 同じように、自主的な休学や休職や自宅ワークを制度的にも金銭的にも手厚く支援するのが、独裁国家ではない日本にふさわしいやり方なのではないか。

 新型肺炎対策に1000万都市を完全封鎖するなど強権的に見える中国だが、北京在住の友人に聞いてみると、内実はどうも違うらしい。

 むしろ、これまでのSARSや鳥インフルエンザで震え上がっていた市民は、当初から政府発表は信用せず、率先して自宅に自主隔離を始めていたらしいからだ。だからこそ、政府命令での自宅隔離への反発は少ないようだ。

 中国では「上に政策あれば下に対策あり(上有政策下有対策)」というが、(有効かどうかいまひとつ分からない)政策待ちで動くのではなく、自分たち自身で思考し判断して対策を立てていくことが日本でも求められている。

美馬 達哉(立命館大学教授)

 

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霊能力は精神疾患?

2020年02月28日 18時06分02秒 | 医科・歯科・介護
メンタルヘルス
霊感ではなく幻覚?
精神症状のサイコシスとは
【医師が解説】見えないはずのものが見え、聴こえないはずの声が聴こえる。
 
精神医学的には、精神疾患の代表的な症状である幻覚・妄想が現れる「サイコシス」に当てはまるものですが、いわゆる霊能力など、個人の特殊な能力として捉えられるケースもあるようです。
心の病気の基礎知識として、精神症状に対する基本的な見方、病名がつくかどうかの診断の考え方について解説します。
中嶋 泰憲
執筆者:中嶋 泰憲さん
医師 / メンタルヘルスガイド
 
不思議な体験は特別な能力か、精神病性の症状か
 
一般に、精神病性の精神症状といえば、見えるはずのないものが見える、聞こえるはずのない声が聞こえるといった精神体験が挙げられます。日常生活でもそれに近い経験をすることは、実は誰にでもあるものです。そしてそれはもちろん疾患のレベルとは大きく異なります。
しかし、かなりこうした経験が多くなっても、それらが病気の症状ではなく、その人の特殊な能力のように本人や周りが捉えるケース、も現実には少ないとはいえ、あることです。実際にそのような能力があるのかどうかは医学的な見地からはわからないことですが、今回は精神医学的な見地から、紐解いていきたいと思います。
 
今回は心の病気を正しく理解していくための基礎知識の一つとして、精神症状の考え方も解説します。
違和感を感じる出来事があったとしても、気にしなくてよい日常的なレベルのものが、治療が必要な疾患と判断されるレベルのものになるまでには、いくつかの段階があります。精神病性の精神症状を例に詳しく解説しますので、ぜひ頭に入れておいてください。
 
サイコシスとは……誰にでもある精神病性的な体験
 
「サイコシス(psychosis)」とは、精神疾患の代表的なものの一つです。日常的にあまり見聞きしない言葉のため、人によっては何か極端で特殊なものをイメージするかもしれませんが、直訳すると「精神病」です。
少し専門的な言葉になりますが、サイコシスの症状が現れていることを「精神病性がある」と表します。
 
「サイコシスの症状」をごく簡単に説明すると、現実と非現実の境がぼやけてしまったような精神症状と言えるでしょう。具体的には、幻覚や妄想などです。
 
サイコシスの原因は、一般に精神疾患であることが多いです。
代表疾患の一つとしては、まず統合失調症が挙げられるでしょう。
また、場合によっては精神疾患ではなく、内分泌系の機能異常などの身体疾患が原因で同様の症状が現れることもあります。
 
「サイコシス」「精神病性」といった言葉だけ聞くと、何か特別な病気のように感じる方がいるかもしれませんが、同様の体験は、日常的に誰にでも起こりうるものです。
たとえば音楽を聞いている時にスマホが鳴った気がして慌てて確認してしまったり、他人の会話から耳に入った言葉が、自分に対する話題のように聞こえたり、といったケースです。前者では、音楽に集中しているときに、実際に何らかの物音があり、それを着信音と聞き違えてしまったのかもしれません。
では、他の人は自分に対して言ったわけではなくとも、実際に自分に関係のある言葉を何かしら発したのかもしれません。
いずれも、現実だったのかどうか、なかなか確認できないものです。
 
こうした「現実か非現実かの違いを見極められないもの」は、広く捉えると精神病性的な要素とみることができます。
こうした日常的な聞き違えや見間違いとも言えるようなものが、サイコシス的な精神要素の最初のレベルです。そして、この程度のレベルのものは、ほぼ全ての人に経験があるものだと思います。
 
サイコシスの進行……自分の名を呼ぶ声や被害妄想的な観念も
 
そして一部の人には、この精神症状が少し進んだ状態で現れます。
例えば、街中を歩いていると、突然自分の名を呼ぶ声がはっきり聞こえたり、何か考え出すとすぐに被害妄想的な観念が頭に広がってしまったり……という場合です。
 
これらは妄想や幻覚などのごく軽いものとも言えますが、仮にこうした精神体験があっても、頻度が稀で、自分自身でもその状態をある程度自覚できるのであれば、日常生活にそれほど大きな問題は現われないでしょう。
精神医学的には、ごく軽いレベルで、なおかつ一時的な問題とはいえ、現実と非現実の区別がはっきりつかない点では「精神病性的な要素がはっきり現われている」と考えますが、治療が必要なものではありません。
 
このレベルの症状は自分には全く関係がないと思う方が多いかもしれませんが、もし過去に周りの人を疑り深くなった時期があったりした場合、その時期はこのレベルに該当していた可能性もあります。
 
症状が進行しても、日常生活に支障がなければ病気ではない?
 
さらに症状が進行すると、症状による問題が一層はっきりとしてきます。しかし、それでも日常生活は回り、必要な仕事はできていたり、周りの人ともそれなりに人間関係を保ったままつきあえたりしているケースは少なくありません。
 
通常、日常生活がしっかり機能していれば、精神疾患の診断はなかなかつけにくいというのが現状です。
そもそも精神疾患のマニュアル的な存在である、いわゆる「診断基準」では、「日常生活に深刻な問題が生じていること」を、診断する際の前提にしています。
そのため、精神症状と見なせる問題がはっきりと現われていたとしても、日常生活に問題が生じていなければ、一般の疾患レベルとは分けて考える必要があるのです。
 
具体的にはサイコシスの特徴的な症状である幻覚などが明らかに現われて「いないはずの人が見える」「みんなには聞こえない声が聞こえた」といったことを公言していても、日常生活に何も問題がなければ、通常の疾患レベルとは分けて考えるということです。
 
そして、いわゆる霊能者と呼ばれるような方は、このパターンに該当することが少なくありません。
周りの人が見えないものが見える、周りには聞こえない声が聞こえる……といった科学的には説明がつかないものは、精神医学的な面から見るならば、そうした精神症状として当てはまるものでもあるからです。
 
精神医学的には幻覚と見なせるものでも、日常生活に問題が生じておらず、むしろその精神症状において、周りから特別な人物だと認識されていて社会生活も成り立っているような場合、精神的な疾患とは捉えられません。
 
このように精神症状の深刻さを評価する尺度は、症状の内容よりも、むしろその症状が生み出す「日常の問題の大きさ」になっていることは、ぜひ頭に入れておいていただきたいと思います。
 
症状ではなくパーソナリティの問題と捉えられることも
 
さらに深刻さが増すと、疾患レベルの一歩手前とみなされる状態になります。具体的には、猜疑心や、幻覚のような錯覚、魔術的思考が現れて強くなったり、まわりの人が明らかな違和感を覚えるような言動をしたり、気持ちの不安定さや睡眠障害といった問題が持続的に現われたりします。
 
しかし、これらの症状が全て現れている場合でも、精神的な疾患とは診断されないことがあります。それは、日常生活が一応機能している場合です。そのような場合、現れている症状は精神科を受診すべき問題とは本人も周りも考えず、当人のパーソナリティや生活態度の問題のように受け取りがちです。
 
そのためにこれらの症状がさらに深刻化し、実際に精神的な病気を発症するか否かは、残念ながら現段階では見極める確かな術はありません。
しかしもし仮に先々日常生活が成り立たないほどの病気の発症につながるならば、これら症状が出ている時期に精神科的な対処を始めていれば、経過が大きく違う可能性があることは、広く指摘されています。
 
実際にまだ病気を発症していない1歩手前の段階で、いかに治療を開始するかは、現在の心の病気に対する、治療する側の大きな課題の一つになっています。
 
日常生活が困難になっている場合は、やはり適切な治療が必要
 
サイコシスでどのような症状が現われるかには、かなりの個人差があります。
疾患特有の幻覚や妄想などがはっきり現われているときも、問題の出方は人それぞれですが、それらの問題の本質には「現実と非現実の違いが分かりにくくなっている」という点が共通して挙げられます。
 
強い幻覚や妄想がもし持続的に現われていれば、通常はそれまで通りの生活を送ることは、かなり難しいでしょう。
そしてこれらの問題は、精神科を受診して、必要な治療を開始しない限り、いつまでも続いてしまう可能性もあります。
なぜならこれらの症状の原因は、脳内の機能に問題が発生したことだからです。
抗精神病薬などの治療薬でこれに対処しないかぎり、事態はさらに深刻化してしまう可能性もあります。
もし日常生活が困難なレベルになっていれば、その時点ですぐ精神科を受診すべきだということは、ぜひ覚えておいていただきたいことです。
 
以上、今回は精神病性的な要素が現われる精神体験を日常レベルから疾患レベルまで詳しく解説しました。
なお、サイコシスの初発年齢は16歳から30歳頃までが大半です。発症率は人口の数%程度と言われています。
発症前から現われてくる違和感のある言動などは、その年代特有のものだと勘違いされやすいこともありますので、ご注意いただければと思います。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。
診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
 
更新日:2018年08月24日
 
 
 
 
 
 
 
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霊が見えるという誇大妄想

2020年02月28日 17時59分50秒 | 伝えたい言葉・受けとめる力

誇大妄想(こだいもうそう)とは妄想のサブタイプの一つであり、様々な精神障害患者に生じ、躁状態にある双極性障害の2/3、統合失調症の1/2、妄想性障害の1/2、薬物乱用者の多くに確認されている。
誇大妄想は、己が有名で、全能で、裕福で、何かの力に満ちているという幻想的な信念を特徴としている。
その妄想は一般的に幻想的であり、典型的には宗教的、SF、超自然的なテーマを持っている。 
迫害妄想や幻聴幻覚とは対照的に、誇大妄想に関する研究は比較的不足している。
健康な人の約10%が誇大的な考えを経験しているが、誇大妄想の診断基準を完全には満たしていない。

妄想の原因

誇大妄想を形成する原因は、2つが挙げられている

  • 防衛としての妄想: 自尊心の低下や抑うつに対しての防御。
  • 感情の一貫性: 誇張された感情の結果として。
  • 診断[

    脳機能を妨げるような広範囲の精神障害を持つ患者は、誇大妄想妄想を含む、さまざまな種類の妄想を経験する

  • 誇大妄想は通常、ハンチントン病パーキンソン病ウィルソン病といった疾患による、続発性躁病と関連付けられている。

  • 続発性躁病は、モノアミン作動性神経伝達物質機能を調整するL-DOPAおよびイソニアジドなどの物質によっても引き起こされてきた

  • ビタミンB12欠乏症[14]尿毒症,[15] 甲状腺機能亢進症[16]カルチノイド症候群[17]などが、続発性躁病を引き起こし、誇大妄想の原因となると分かっている。

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3月は、自殺対策強化月間です。

2020年02月28日 17時33分50秒 | 社会・文化・政治・経済

もし、あなたが悩みを抱えていたら、ぜひ相談してください。

大切な人が悩みを抱えていることに気づいたら、声をかけてみてください。
そして、その人が悩みを話してくれたら、話をそらしたり、「そんなことで」と否定したり、安易に励ましたりせず、じっくりと話を聴いて、相談窓口を紹介してあげてください。
その後も、「何かあったらまた話して」と寄り添い、温かく見守ってあげてください。

こころの健康相談統一ダイヤルについて

平成20年9月10日より、都道府県・政令指定都市が実施している「心の健康電話相談」等の公的な電話相談事業に全国共通の電話番号を設定する「こころの健康相談統一ダイヤル」の運用を行っています。

  1. 1.各都道府県・政令指定都市が実施している「心の健康電話相談」等の公的な電話相談事業に全国共通の電話番号を設定することにより、全国どこからでも共通の電話番号に電話すれば、電話をかけた所在地の公的な相談機関に接続されます。
    (自殺予防週間(毎年9月10日から16日)及び自殺対策強化月間(毎年3月)の期間中は、御相談が集中するため、お電話がつながりにくい場合もございます。)
  2. 2.平成31年4月現在、全都道府県と政令指定都市(札幌市、さいたま市、川崎市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、熊本市)に共通の電話番号を設定しています。
    ※新潟市、名古屋市、静岡市、浜松市、広島市については県で一括実施。
  3. 3.相談に対応する曜日・時間は都道府県・政令指定都市によって異なります。相談窓口の受付日時は、以下の表をご覧ください。

 

◎SNS相談(LINE・チャットで相談ができます。悩みを相談してみませんか。)

○10代20代の女性のためのLINE相談
≪特定非営利活動法人 BONDプロジェクト≫
LINE「10代20代の女の子専用LINE」友だち登録
相談時間:2019年4月1日~2020年3月31日
毎週  月水木金土
【1部】16:00~19:00(相談受付18:30まで)
【2部】19:30~22:30(相談受付22:00まで)


○18歳以下の子どものためのチャット相談
≪特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター≫
チャイルドライン
https://childline.or.jp/chat/
相談時間:チャット相談
毎週 木曜日
隔週 金曜日
16:00~21:00
(カレンダー)
https://childline.or.jp/chat/calendar

 

 

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