今年の“締め”をしようかなという、ちょうど良いタイミングで、灘高キムタツ こと、木村達哉先生の東大英語シリーズの最終版、ライティング&グラマー編が発売されました。何かの縁でしょう、せっかくですので、今年の本紹介のトリをかざっていただきます。(明日はごあいさつと写真でもUPします)
これまで 東大リスニング、東大リーディング ともじっくり見てきましたが、本書がもっとも広い範囲の生徒に薦められるものに仕上がっています。(前の二冊は、東大合格専用テキストのおもむきです)
もちろん本書もターゲットは東大合格ですが、英作文のある中堅大学以上の受験生が使うのであれば充分役立ちます。 “役立つ” どころか、とても完成度の高い参考書に仕上がっていますので、ぜひ薦めたいテキストと言っても良いでしょう。
東大の英語、特に作文と文法問題は、難問奇問の類ではなく、正確な基礎力とそれに基づいた英語運用能力があるかどうかを測ることを目的に作られています。そこを徹底的に鍛えるわけですから、どの大学の受験生にとっても有用です。
また、同じ偏差値レベルの受験生の間で、英語力の差がもっとも如実に出るのは、読解ではなく、英作文です。また、英作文指導は、教える方のレベル、英語に対する考え方の差も出るだろうと思っています。
(そういえば先月の代ゼミの早稲田模試の講評にも、読解に比べ、全体的に英作文能力が極めて低いと指摘していました)
まず本書では、どの問題にも、解答例として、誤文が2例ずつあるのですが、その生徒の間違え方が抜群に良いのです(笑)。
どういうことかと申しますと、日本の高校生は、帰国子女でもない限り、全国どこの進学高に通っていたとしても、みな日本語を使って、同じようなカリキュラムや教科書、似た参考書で英語を学習しているために、間違え方もみな似ているんです。
アメリカの移民が Mother を Maza と書いてしまうような、アメリカ版スットコ的間違えは、日本の大学受験生には絶対にありません。同じところが苦手で、同じところしかミスしませんから。
採点する側からすれば、毎年、“ほ~ら、またやってる”、“これみんなできないなぁ~”という感じです。本書は解説の中でも繰り返し基本の徹底を言っていますが、3単現の S だとか、主語と動詞の不一致や時制の間違えなど、読んでいて微笑みたくなるほど、「そうそう、あるあるこういう間違い」そういう風に間違えてくれています。
他の大学受験の対策にも使えるという、もう一つの要因です。
こうした “模範的誤答” とそれに対するキムタツ先生の的を射た解説も出色ですが、何よりも本書の特徴、利点は、それを語り口調で、非常にわかりやすく、手間を惜しまずに説明していることです。いわゆる “実況中継” を聞く感覚で勉強が進められるはずです。繰り返し読めば、大きな学習効果が期待できます。
合格への具体的戦略やネイティブとの模範解答の比較は、我々英語教師にも勉強になりますし、巻末の文法のまとめも受験生にはぜひやってもらいたいものです。
今年のトリを務めるのに実にふさわしい一冊でした。見事です。
http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】
『灘高キムタツの東大英語 ライティング&グラマー』木村達哉
アルク:240P:1890円
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
以下は、書かなくても良い、従ってもちろん読まなくても良い“つけたし”みたいなものです。ここで記事を終えても良いのですが…、このブログを定期的に見ていただいている方は、私が時おり木村先生とお付き合いさせていただいていることをご存知だと思いますので、あまりにも他人行儀だなぁ~(笑) …
もう年末だし、いいや!今年を振り返る意味でも、今日はぶっちゃけたお話を書いちゃいましょう。
【ぶっちゃけ書評】
今回、ありがたくも、キムタツ先生からご献本いただきましたが、見る前は正直、“あんまりできが良くなかったらなんて書こう”、な~んて考えておりました(あ~ごめんなさい)。
いやいやいや、まさか英語力を疑うんじゃないんですよ、もちろん。
心配するには理由があるんです。英作文のテキストは読解やリスニングとはわけが違います。書き方、要するに説明のしかたが難しく、実際に市場に出まわっている参考書も、本当に “玉石混交” なんです。
そうですねぇ~、リスニングのテキスト作りが富士山登山なら、リーディングはマッキンリー登山に挑戦するようなもの、さらに英作文のテキスト作成はK2やエベレストに挑むほどチャレンジングな仕事だと私は考えているんですね。
だからいくら灘高キムタツと言えども、今年の受験生向けに完璧に仕上げるのは、時間的に厳しいんじゃないかと。 たいがい、ちょっと売れた参考書の著者が、今だ!というので、その後に続けて出す本は、センセーショナルなタイトルとは裏腹に、手抜きが目立ちます、誰とは申しませんが…。
その上、灘高は今秋に、履修もれが指摘され、きっと英語とは無縁の雑務に追われるという環境下にもあったはずですし…。
実は、本書の執筆を始められた頃、キムタツ先生からお電話で、“~~こういう形にしたいと思うけれど、どうだろう” と意見を求められたのは今年の夏休み後半です。
その時期から生徒に実際に英作文をしてもらい、それを2例選んで、添削する形で進めたいということでした。あとは模範解答をキムタツ先生が書かれ、さらにネイティブにもう一例書かせるというのです。それを秋に出すと。率直な意見は、 今年の受験生に “間に合うのか” ということです。
アイデア自体に異論をはさむ余地はまったくありません。それだけのことがうまくできれば本当にすごい、理想的なテキストです。
が、しかし大学受験の英語教師ならお分かりだと思いますが、そもそも英作文の添削というのは非常にやっかい。文法の間違いを指摘するだけならどうってことないのですが、英作文の添削となると、正解は無数にあります。
その中で、生徒にその英文がなぜダメなのか、どうして別の表現が好ましいのかを説明するのはいっそう骨が折れる。教室ならまだしも、それを文にして、読者である受験生に納得のいく解説を施すというのは気が遠くなるほどの作業ですし、書けば書いたでどこからでもこっちの方が良い、などとケチをつけることも可能なんです。
だからこそ、竹岡先生の『ドラゴンイングリッシュ 基本英文100』のように、同じ英作文対策と、銘打っていても、暗記例文集という形にする方が、手間もリスクも圧倒的に少ないし、実際人気もあります。
英作文のコツは、例文暗記 “英作文は英借(しゃく)文” と信じ込んでいる先生もたくさんおられますが、それは勉強の一過程に過ぎません。
例文暗記自体は大いに結構で、私も生徒にさせますが、100文暗記したら合格できるとすれば、東大レベルの受験生なら楽勝です。そうではないプラスアルファーの得点力が東大受験生は欲しいわけでしょう。
さて、そんなことを考えながら、本書を読んでみると、キムタツ先生はその困難な仕事を見事にやり遂げています。実際に読んでいたときは、“いや~よくできている、”と何度口にしたことでしょう。うちの教室には私より優れた英語教師が何人もいますが、彼らも異口同音にそう言いました。
ですから、英作文のある生徒は本書をどんどん使って下さい。
本心を言えば、最初に書いた、私の浅はかな考えはまったくの杞憂だったとホッとしているんです(ホント失礼)。
キムタツ先生は、「VIVAちゃん、本送っといた。うまく書いて、頼むで~」 な~んていう姿勢でご著書を寄こしたのではまったくなく(超大失礼)、「自信作だ、VIVA見てくれ!」 ってな感じだったんだと痛感したわけでございます。ハイ。
とにかくすばらしいできばえであることは間違いありません。さすが日本有数の進学校、灘の英語教師の力を見せつけられました。
灘高キムタツの実力と熱意にあらためて敬服し、勉強させてもらいました。売れりゃあ、何でもいいという風潮の出版業界の中で、夢を追う生徒たちのために、ますますの活躍が期待されます。
■■ 良い参考書、良い先生と知り合えた2006年に乾杯!■■
そんな気分です。ダブルタイトルとはできすぎの2006年。日々応援してくださる方々が、ランキング上位にしていただいたおかげで、それを見て訪問してくださった方も多いようです。本当にありがたいことです。
このブログが少しでも、そうした生徒やご父母のお役に立てれば本当にうれしいのですが…。
さぁ、受験もブログランキングもラストスパート!
↓ ↓
人気blogランキングへ にほんブログ村 本ブログ
P.S. おもしろくなってきたんでどんどん書いちゃいましょう。年忘れ、言いたい放題(笑)。
実はキムタツ先生のテキストにも、手抜きはあるんです。ボクは見逃しません!
先生の生年月日、1964生まれのはずが、61年になっている。(ブログにあるように64年生まれならボクより年下、61年なら年上ですから気になったんです(笑)。)
実は、以前、東大リスニングのテキストでそれを発見し、61年になってますよと連絡したら、最初の反応は “まじっすか?” でした(笑)。 今回もまさかと思いましたが、何気なく見るとまた“61年生まれ”。連絡しますと、“まじっすか?ほんまに?”でした。これは明らかな手抜きです(爆)。アルク~、ファイト!
|
灘高キムタツの東大英語ライティング&グラマー
アルク
詳細
|
P.S. これはやや高度になりますが、キムタツ先生と見解の異なる部分を列記しておきましょう。私の勉強のために。
P76 合格答案の文で最後の一文 someone より anyone
P104 very various は多少くどいが可能。
P134 合格答案最後の文で will より should または原形。
P191 leave a large amount of garbage behind も可能。
このあたりまで考えられる生徒は、近くの先生に聞いてみたらよいと思います。
わからない人は、私VIVAが教えますので、来年の入塾をお待ち申し上げております(笑)
↓ ↓
http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】