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サルトリオヴェナトル(3)


感想であるが、恐竜の指が外側から順に失われてきたことは従来からいわれていたことであり、またサルトリオヴェナトルの手も不完全なので、それが決定打といえるかどうかはともかく、ケラトサウルスの指が完全には見つかっていないのを補った形になっている。他の種類とともにケラトサウリアの祖先形を推定するのに役立っているわけである。こうしてサルトリオヴェナトル、ケラトサウルス、エオアベリサウルス、リムサウルスと並べてみると、リムサウルスの手は同じジュラ紀のエオアベリサウルスと比べても退化的で、特殊化したものであることがわかる。これをもとにアヴェロストラの祖先形やテタヌラ類のことを論じるのは、やはり無理があると思える。

そもそもテタヌラ類が3本指といっても、基盤的なテタヌラ類では第IV中手骨が残っているわけで、普通に考えると(コエロフィソイドで既に第IV指が退化的であることなどを考えると)I-II-III-IV で、これをII-III-IV-V とみるのは難しいのではないか。
 ここではメトリアカントサウルス科は解体されて、シュワンハノサウルスやスゼチュアノサウルス(ヤンチュアノサウルス)・ジゴンゲンシスは基盤的な位置にきている。ティラノサウルス類の中でというのは、グァンロンとメガラプトルで第IV中手骨が残っているためである。アロサウロイドの中では、シンラプトルで第IV中手骨が残っているので、アロサウリア(アロサウルス以上)で退化した、ということである。コエルロサウルス類の中ではティラノサウロイドが分岐した時点では残っていたはずなので、マニラプトル形類の祖先で退化したことになる。

ただしサルトリオヴェナトルが断片的であることを考えると、もし頭骨や脊椎が見つかってサルトリオヴェナトルが実はテタヌラ類やディロフォサウルス類になったりすると、このままのロジックでは使えなくなるということだろう。

恐竜が好きな人なら、コレクタ社のフィギュアを眺めるだけでも楽しめる。なかなかよくできている。しかし前肢を見て、この第III指が完全に保存されていることが、重要な意義があるのだなと思いをはせれば、さらに楽しめる。
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