(怪傑 2017 年 12 月 14 日)
<中国で発見された26万年前の頭蓋骨「ダーリー・スカル」
がアフリカ誕生説を覆す可能性>
人類の起源はアフリカであるというのが近年の考古学・人
類学の定説であるが、中国の考古学者がこの定説に異議
を唱える論文を発表し、話題になっている。
論文によると、ユーラシアやアジアにいち早く進出していた
初期人類の一部がアフリカに戻り、交雑の末に現生人類が
生まれたというのである。
この大胆な仮説は英「Daily Mail」ほか、様々なニュースサ
イトで取り上げられた。
問題の論文を発表したのは、中国科学院の考古学者・?新
智(Xinzhi Wu)氏と米国・テキサスA&M大学人類学部の
シーラ・アスレヤ(Sheela Athreya)氏である。
今回彼らが注目したのは1978年に中国陝西省大茘(ダー
リー)県で発見されたおよそ26万年前のものとされる初期
人類の頭蓋骨(ダーリー・スカル)だ。
今回ダーリー・スカルの顔面部や神経の形状を、これまで
に世界各地で発見された様々な初期人類も併せて詳細に
分析し、比較したところ、今年6月にモロッコで発見された
およそ30万年前のホモサピエンス最古の化石と非常に似
ていることが判明したというのである。
以前より、ダーリー・スカルはホモエレクトスとホモサピエン
スの両方の特徴を兼ね備えていると指摘されていた。これ
はホモエレクトスが世界各地に拡散した後、それぞれの地
方でホモサピエンスへと進化したという多地域並行進化説
の証拠とも考えられる。しかし、?氏らは今回さらに大胆な
仮説を提示した。
このグループがアフリカに戻り、我々の祖先の誕生へとつ
ながったというのである。
「American Journal of Physical Anthropology」(10/25掲載)
この仮説はあくまで化石の形状だけを根拠にしており、遺
伝子の解析は行われていない。現代人や化石から抽出さ
れた初期人類の遺伝子研究では、人類のアフリカ単一起
源説を支持している。 また、問題のダーリー・スカルに見
られる特徴はホモサピエンスの進化とは関係なく起こった
別の進化の結果であるという指摘もなされている。
以前より中国では、人類の進化では東アジア(要するに中
国)が大きな役割を果たしたという研究がたびたび発表さ
れており、今回の発表もその一環といえるだろう。
とはいえ、ホモサピエンスの進化には謎が多く、最近では
我々が考えているよりはるか昔からアフリカ大陸や西アジ
ア(中東あたり)の広い地域に分布していた可能性も指摘
されている。
はたして、東アジアに生きたダーリー人はホモサピエンス
の進化に貢献したのだろうか? ?氏は今後もダーリー・ス
カルの研究を進めるという。(吉井いつき)
(一歩が記録保存のため掲載しています)
<中国で発見された26万年前の頭蓋骨「ダーリー・スカル」
がアフリカ誕生説を覆す可能性>
人類の起源はアフリカであるというのが近年の考古学・人
類学の定説であるが、中国の考古学者がこの定説に異議
を唱える論文を発表し、話題になっている。
論文によると、ユーラシアやアジアにいち早く進出していた
初期人類の一部がアフリカに戻り、交雑の末に現生人類が
生まれたというのである。
この大胆な仮説は英「Daily Mail」ほか、様々なニュースサ
イトで取り上げられた。
問題の論文を発表したのは、中国科学院の考古学者・?新
智(Xinzhi Wu)氏と米国・テキサスA&M大学人類学部の
シーラ・アスレヤ(Sheela Athreya)氏である。
今回彼らが注目したのは1978年に中国陝西省大茘(ダー
リー)県で発見されたおよそ26万年前のものとされる初期
人類の頭蓋骨(ダーリー・スカル)だ。
今回ダーリー・スカルの顔面部や神経の形状を、これまで
に世界各地で発見された様々な初期人類も併せて詳細に
分析し、比較したところ、今年6月にモロッコで発見された
およそ30万年前のホモサピエンス最古の化石と非常に似
ていることが判明したというのである。
以前より、ダーリー・スカルはホモエレクトスとホモサピエン
スの両方の特徴を兼ね備えていると指摘されていた。これ
はホモエレクトスが世界各地に拡散した後、それぞれの地
方でホモサピエンスへと進化したという多地域並行進化説
の証拠とも考えられる。しかし、?氏らは今回さらに大胆な
仮説を提示した。
このグループがアフリカに戻り、我々の祖先の誕生へとつ
ながったというのである。
「American Journal of Physical Anthropology」(10/25掲載)
この仮説はあくまで化石の形状だけを根拠にしており、遺
伝子の解析は行われていない。現代人や化石から抽出さ
れた初期人類の遺伝子研究では、人類のアフリカ単一起
源説を支持している。 また、問題のダーリー・スカルに見
られる特徴はホモサピエンスの進化とは関係なく起こった
別の進化の結果であるという指摘もなされている。
以前より中国では、人類の進化では東アジア(要するに中
国)が大きな役割を果たしたという研究がたびたび発表さ
れており、今回の発表もその一環といえるだろう。
とはいえ、ホモサピエンスの進化には謎が多く、最近では
我々が考えているよりはるか昔からアフリカ大陸や西アジ
ア(中東あたり)の広い地域に分布していた可能性も指摘
されている。
はたして、東アジアに生きたダーリー人はホモサピエンス
の進化に貢献したのだろうか? ?氏は今後もダーリー・ス
カルの研究を進めるという。(吉井いつき)
(一歩が記録保存のため掲載しています)