HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

上質な白Tは意外に少ない。

2014-05-06 11:32:24 | Weblog
 モデル撮影をする時、意外に困ることがある。小道具に使う純白で質感のあるTシャツが日本には意外に少ないのだ。

 筆者が大学生の頃は、純白のTシャツといえば、米国製の「Hanes」と決まっていた。3枚セットの袋入りで、綿100%のレッドとポリエステル混のブルーがあった。でも、どちらも生地が薄く、赤は一度洗濯すれば襟が伸びてヨレッとなり、ブルーは型くずれしない分、真夏に着るとは暑かった。

 他に「フルーツオブブルーム」というブランドもあったが、こちらも質感では Hanesと大差はなかったように記憶している。リーバイス・ジャパンもグンゼのPBで発売していたが、ブランド料が載せられて大して良くもないのに「この価格か」って感じだった。

 その後、無印良品が天竺の無地を発売したが、「天然素材」「粗野」を売りにしたため色なしは「生成り」になった。ユニクロはカラーとプリントを使ったTがメーンで、無地は4オンス程度の薄手しか作っていない。

 純白のTシャツはどうして下着のイメージがあるのか、各社とも企画に二の足を踏んでいたようだ。ブランドメーカーが作る場合は「ワンポイント」が入らないと、付加価値がつかず価格を上げられないという意識があるように思う。

 結局、大手ジーンズチェーンがテレコやワッフルなどのデザインものの隙間を埋めるため、6オンスくらいのベビーなものを投入した。それが10年くらい前だっただろうか。それでもシャツインナーの感覚だから、シルエットは何となく野暮ったかった。

 一方、最近ではプロモーション用の方が純白は素材、サイズ、厚さと種類が多い。ただ、これもユニフォームの下地向けなので、ブランド感覚はない。ネットを見ただけではサイズや着心地、質感もわからないし、取り寄せれば、送料がかかってしまう。

 それでも、撮影用の小道具には十分マッチするから、昔に比べると隔世の感がある。そんなことを考えていたら、2014年春、ついにヘインズブランズジャパンから、「Hanes T-Shirts 14SS Japan Fit 」が発売されたので、早速買ってみた。

 こちらはまさに純白のブランドTで、下着にもアウターにも着ることができる。日本人の体型に合わせて着丈を短く、アームホールを絞り、襟ぐりを細めに設計。また、製品にあらかじめ洗いをかけてあり、心地よい風合いを出している。

 アメカジテイストのTシャツでは、すでに「Anvil」というブランドがある。米国アンヴィル社の主力ブランドで、生地は6.1ozとこしがある。ユニフォーム用に売られているためカラーバリエーションも豊富で、ファッションでも十分いける。

 ただ、如何せん、米国仕様だけに着丈が長い。Mサイズで73cm以上あるから、モデルの身長に合うようにスタイリストに命じて裾上げをしなければならない。

 スタッフが裁縫の技術をもたず時間もないときは、ベルトで裾を止めてごまかすこともあるが、やはり皺が出てスタイリングが決まらない。モデル撮影ではジャストサイズのTシャツは、ディレクターとして譲れないところだ。

 ファンデーションなどで汚れることを想定すると、撮影で使用する純白のTシャツは必ず予備を用意していかなければならない。その点、2枚パックはありがたい。価格も2500円程度と値ごろ感があり、コレくらいなら撮影経費で落とせる許容範囲だ。

 これらの条件を総合すると、Hanes T-Shirts 14SS Japan Fit は、待望の1枚と言えそうだ。ご多分に漏れず、中国製ではあるものの、かつてのような米国仕様ではなく、日本企画だから質的にも申し分ない。

 カジュアルライクなシチュエーションでは、アウターに着せる場合、ガーメントウォッシュで洗いをかけた風合いがちょうど良い。首回りがチクチクしないダグレス仕様も、「肌が弱いだの、アレルギーだの」とわがままを言うモデルにはもってこいだ。

 白須次郎の時代には、Hanesはカッコ良さの象徴だったのかもしれない。でも、すぐにヨレヨレになるから、買うのに二の足を踏んでいた時代から30数年。遅ればせながら、ヘインズもやっとジャパンマーケティングに本腰を入れたようである。

 バブル経済が終焉を迎え、デフレが進んだ時代には、3Pパックはどこが一番安く売っているかを競っていた。でも、今はいくら安くても質が悪いものは売れない。

 まあ、「値ごろで、上質で、風合いがあり、シルエットも良く、ブランド性をもつ」なんて、Tシャツに要求する人間なんてそうそういないだろう。

 でも、結果として、Hanes T-Shirts 14SS Japan Fitは、それらのニーズをほぼ満足させてくれていると、個人的には思う。たかがTシャツ、されどTシャツなのである。
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