HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

大卒=幹部候補は幻想に過ぎない。

2011-12-04 11:15:49 | Weblog
 先日、とあるブログで紹介されていた「ユニクロが大学1年生から採用する」は、筆者も拝読していた。
恐らく柳井社長の真意は、店長育成=幹部候補の確保=将来の経営者予備軍を見据えてのこと。その前提が
「店長」なるわけだが、幹部育成はそれほど簡単にはいかない。かつて柳井社長には苦い経験があるからだ。

 同社は1998年のフリースの大ブレークにより業績を急拡大したが、ライバル参入によるブーム終焉や商品
構成の陳腐化で、成長は減速。2002年に柳井社長は日本IBMから転職した玉塚元一氏に役職を譲ったが、業
績を立て直したのはわずか1期止まりで、あっさり更迭した。
 玉塚氏と同時期に役員となった澤田貴司、森田正敏両氏は伊藤忠商事の出身。その後に委任型執行役員制
度、事業子会社制度を導入した松下正氏は、弁護士、日本GEの副社長からの転職だ。
 つまりこの頃のユニクロはとにかく経営体制を強固にするために一流大学、一流企業出身のエリート幹部
を揃えようとした。しかし、経営陣が考えるように現場が動くとは限らない。売場スタッフはアルバイト中
心でマニュアル通りの作業しかできない。頭で考えて仕事をすることなど無理だったのである。

 結局、頭でっかちのエリート幹部と、言われたことしかできないアルバイトの乖離は大きく、短期に溝が
埋められるはずもない。それがはっきり業績にも現れたのである。復帰した柳井社長は、2003年に「10年
に売上高1兆円企業に成長する」を標榜し、ブランド企業のM&Aや新規事業の立ち上げなども行なった。
 そうした中で、05年には「経営者は育てられません。創業者募集」。こんなキャッチコピーの求人広告を
全国紙に掲載した。玉塚氏や他の幹部が攻めの経営に出られない歯がゆさが、柳井社長をこうした経営者募
集に駆り立てたと言える。
 だからといって、同氏のようなカリスマ経営者の後任が簡単に見つかるはずもない。未だに自身が社長職
を務めているのが何よりの証拠だ。そのため、幹部候補や将来の経営者は1本釣りだけでなく、現場から育
てていくことにも目を向けざるを得なくなったと思われる。

 ただ、それに大学1年生が適合するかと言えば、甚だ疑問だ。内定をもらったとしても、キャンパスライ
フやクラブ活動を行なううちに心変わりするかもしれない。柳井社長の腹の中には、それくらいの目減り分
は織り込み済みだろうが、4年後にどれほどの人間が入社するかは未知数である。
 大学生になると、人格や人間性は固まり、対人関係でも巧みになっていく。ユニクロのようなチェーンス
トアこそ、店長を店舗経営者として考えるならば、より若いうちから現場で経験を積ませた方が必要な知識、
判断基準、価値観は身に付くはずである。 
 変に理屈をこね回して、言い訳がましい御託を並べる大学生より、すべてに素直で吸収が早い高卒の方が
店長としての適格性は高いように思える。それからさらに幹部、経営者を目標とさせるなら、今度はトップ
マネジメント研修やキャリア教育(MBA取得など)をユニクロ本部が行なえばいいのである。

 前出のようなエリート幹部がなぜ業績を上げられなかったかといえば、現場の経験がほとんどないからで
ある。澤田氏にしても森田氏にしても店舗にいたのはわずか半年程度で、本部に呼び戻されている。それで
売場スタッフの実態が理解できるはずもない。まして、お客さんから信頼されるわけがないのである。
 柳井社長が「店は客のためにあり、店員とともに栄え、店主とともに滅びる」と、店長に経営者としての
志を求める以上、純粋に商売の原理原則を理解させるのが先だろう。3000円のシャツを売って、1500円を
儲けるにはどうすれば良いか。スタッフの傷みがわかるからこそ、スタッフを動かすことができる。そうし
た単純ことはより若いうちから現場で学んだ方がいいし、経営者としての素養にも結びつくはずである。
 いくら店長は経営者と言っても、店舗商売には一種の泥臭ささは拭えない。ベンチャー企業を立ち上げて、
株式公開で創業者利益を得たり、企業再生やM&Aを仕掛けて高額の手数料収入を得るようなスマートビジネ
スと、同次元で見てはいけないと思う。
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