アンソニー・ホプキンス主演『ヒッチコック』にみる、金髪フェチとティッピ・ヘドレンの受難 その2

2016年07月10日 | 映画

 前回(→こちら)の続き。

 映画『ヒッチコック』でも描かれていたように、偉大なる映画監督アルフレッドヒッチコックは、金髪美女が大好きなおじさんであった。

 なので、自作の映画に出演した金髪美女を口説くのであるが、一度として受け入れられたことがない。

 はっきりいってセクハラだが、女優に手を出さない監督は大成しないという意見もあり、その点ではヒッチ先生のやっていることは、よくある話なのである。

 ではなぜ、映画に出演させてやったにもかかわらず、モテなかったのか。

 これは女優ティッピへドレンとのエピソードによって、そのからくりが少しはわかることとなる。

 金髪を追い求めるヒッチ先生は、先生の代表作にもなる『』にティッピを抜擢。

 もちろんのこと、いつものごとく

 

 「オレの女になれヒッチ!」

 

 猛アタックをかける。このあたりのことは『ヒッチコック』でも、ふれられている通り。

 しかし、ティッピはそれを拒否

 それを根に持ったのか、映画の中で先生は、これでもかこれでもかとドSモードで鳥にティッピを襲わせる

 結果的にその嗜虐性が鳥の怖ろしさをスクリーンいっぱいに表すことになって、『鳥』は恐怖映画の名作となった。

 まあ、ここまでならクリエイターの変態性がいい意味で作品に貢献できたということで、映画史的にはいい話なのであるが、ここで止まらないのが先生。

 ヒッチ先生は、『ヒッチコック』にもあったように、『鳥』のあとにもティッピ・へドレン(その他、お気に入りの女優全員)の仕事プライベートにあれこれと口を出して、彼女を辟易させる。

 しまいには、ヒッチコックの干渉から逃れるためか、彼女は一時期女優業を休業することとなるハメに。

 こうなると、立派なパワハラであり、ストーカーである。

 いい感じに、見苦しいフラれ男だ。カッケーぜ! ヒッチ先生!

 さらに、ヒッチ先生が本領を発揮するのは、後年、『マーニー』でティッピをふたたび抜擢したときのこと。

 ティッピ・へドレンは撮影に、であるメラニーグリフィスを連れてきていた。

 撮影日がメラニーの誕生日だったということで、ヒッチ先生は彼女にプレゼントをあげることに。
 
 よろこんだメラニーが箱を開けてみると、そこには小さな棺桶の模型があった。

 子供への贈り物に棺桶

 これだけでも、それこそ『サイコ』のアンソニーパーキンス並みに怖い。

 しかも、その棺桶を開けてみると、中には精巧に作られたお母さん(ティッピ・へドレン)の人形が寝かされてた。

 さらには、そのにはロープが巻きついていたそうである。

 なんというのか、なかなかのゆがみっぷりであるというか、正直ドンびき

 プレゼント開けたら、お母ちゃんがヒモで首しめられて、棺桶に横たわっている!

 これを見てメラニーは、



 「こんなゲッスいオッサン知らんわ」



 心底軽蔑したそうである。そらそうやろうなあ。

 そんな、クリエイターとしては120点としてはマイナス1万点なヒッチコック。

 けど結果的に、先生にとってこのモテなさっぷりは、映画監督としては、よかったのではなかという気もする。

 あくまで私見であるが、ヒッチ先生の創作の源の何分の一かは、この

 

 「満たされないリビドー」

 

 に拠っていたのではないかという気がする。

 ド変態ではあったけど、そのあふれでるフェチっぷりを、妙なアートとかでなく、あくまでエンターテインメントに昇華させたところは、さすがは職人技。

 そこが、ヒッチコックの偉大さだと思うわけなのだ。




 ★おまけ 『ヒッチコック』の中であつかわれていた『サイコ』は→こちらから。







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