ケルン郊外にある友人のアトリエでクリスマス展示会をしているというので見に行く事になった。ドアを開けると可愛い犬が挨拶に来たのでしばし遊んだ。展示会そっちのけだ。
ワッフルやパンチをご馳走になり、甘い香りでお腹に満たした帰り道に森に立ち寄る事になった。この森の中ではクリスマス用のもみの木が栽培されている為、この時期には車が行き来していて喧しい。屋根に大きなもみの木を載せた車、荷台から半分頭を出したもみの木を載せた車がせわしげに引きも切らない。私たちは大きな道をはずして枯葉が積もる森の中を歩いた。道はぬかるんでちょっと歩きにくい。ずぶっと沈む道を足元に気を取られながら歩く。運動靴の底が泥でだんだんに重くなってゆくのを感じながら歩いていると、前方にまだ若いボクサー犬が私たちを見てピンと体を伸ばし、旧友を見つけたという勢いで駆けつけ、嬉しげにぴょんぴょんと跳ねながら挨拶をしてくれた。よだれが盛大にたれるタイプの奴だから、私のコートはたちまちあちこちよだれだらけになった。私は君のことを知らないのだけれど、人違いではありませんか?
飼い主はしきりに謝りながらそいつの首根っこを押さえて遠ざかった。一回り歩いての帰り際に又その元気な若者が前方からやって来た。私たちに気付くと又走り寄ろうとする。彼の主人は綱を慌てて引き寄せ、私達は笑いながらすれ違った。今日は何故だかいろいろな犬に出会った日だった。そしてそれぞれがやけに愛想良く挨拶に来るので、ひょっとして私は今日私の影犬を連れていたのだろうか。
時々私は見えない犬を連れている。