散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

道草草子 Ⅰ

2006-07-31 03:31:57 | 自然観察





目に前が ふわっ と明るくなった。
視線を40度上げるとアカシアの木に
クリイム色の花がびっしり咲いている。
足元は無数のその小さな花が
一面に縫い取られた敷物のようで、
明るいのは花の所為だ。
クリイム色を背景に チコリの花が咲いている。
少し紫がかった空色の花は緑の中では
透き通るような不思議な色合いで、その薄青い花が
本当に見えたものか、気のせいだったのかと
立ち止まり振り返らせる。
夕暮れの空色がクリイム色に心憎いアクセントとなって
絵を引き締めていた。
◆緑-クリイム色-うす青紫、紫がかった薄青あるいは夕暮れの空色

花満開のラベンダーの茂みに11匹のモンシロチョウが
群がって踊っていた。
12匹だったかもしれない。
その間でリズムを奏でるのは
こげ茶の背中のマルハナバチだ。
◆紫-灰緑-白-焦げ茶

その上を歩くとプチプチっと後がする。
ドイツ菩提樹の種子はあまりの暑さに
早々に枝を離れて
地面に積もっているのだ。
妖精の羽のようなひらひらと言う感じの羽を持って、
その間から丸い種子は細い線でぶる下がっている。
プチプチプチプチ。。。。
プチプチプチプチっ。。。。
◆薄茶色からクリイム色

しばらく行くと
音が変化するのに気がついた。
今度はパチパチパチパチ。。。パチパチ。。だ。
しゃがんでみると
やはりこの珍しい快晴続きで
水不足の憂き目にあったらしいドンクリの実が
成長しきれずに落ちてしまっている。
直径5ミリほどの未熟な実が5,6個かたまっている細い枝が
沢山落ちているのだ。
◆薄茶色

空は青空、
もくもくと白い雲。
次々に生まれる形。
金魚-ライオン-カンガルー-ドラゴン-ペンギン。。。。
◆青-純白

アカバナルリハコベ

2006-07-26 04:09:30 | 植物、平行植物
学名:Anagallis arvensis
和名:アカバナルリハコベ
独名:Acker-Gauchheil,Weinbergstern=ワイン山の星、Wetterkraut=お天気草
ヨーロッパ原産

このクソ暑い青空の下で何も今やる必要はないのだけれど、スコップ持って土を突いたりしていたら、ライラックの足元を掃除していたら地面に赤い点々が散らばっているのに気がついた。貧血を起して紅い斑点が見えてきたわけではない。



ドイツ名Acker-Gauchheilの”Gauch”はNarrまたはKuckuckの意味がある。
Narr=たわけ、ばか者、愚者の意、。Kuckuck=カッコーの意。 Kuckuck=カッコーが何故”愚者”と同義なのかはっきりとはわからないが、カッコーは"悪魔”の別名の一つである。
ちなみに「Zum Kuckucks noch mal!」なんていわれたら「馬鹿やろう、とっととうせやがれ!」と言う意味だからすばやく退散した方が良いし、「Hol's der Kuckuck!」といったら「真っ平ごめんだ!」という事になり、何かしていてうまく行かなかったりしたら「Zum Kuckuck damit!こんなことクソ食らえ!」などと言って投げつけられたものが飛んでくるかもしれないので、カッコーが現われたら気をつけた方が良い。
当然KuckuckをそのままTeufel=悪魔に置き換えていう事も出来るわけです。
そういえば「カッコーの巣の上で」と言う映画があったけれど、あれはどうなんだろうかと思えば、マザーグースの詩が絡んでいるそうだ。
Vintery, mintery, cutery, corn,
Apple seed and apple thorn;
Wire, briar, limber lock,
Three geese in a flock.
One flew east,
And one flew west,
And one flew over the cuckoo's nest.
カッコーと悪魔。その関係について興味のあるところだけれど、それは又別の機会に調べることにして、Gauchheilに話を戻すと、”heil=良くなる"意を加えて、精神的病が治るというような意味になる。昔はこの植物を鬱病などに対して処方したのだそうだ。そして軽い毒性が含まれる。
この花は朝開き14時頃にはしぼんでしまうが、別名の”Wetterkraut=お天気草”が予感させるとおり雨模様を察知すると萎むのだそうだ。私はまだそれを観察した事が無い。残念ながらこのところの快晴続きで観察する機会を逸している。
又、この種子カプセルが魅力的だ。完璧な球形なのだ。種子が熟すと球の上半分がパカリと割れて細かい種を放り出す。直径4~5mmの小さな粒だがその完璧な形体には感心する。こういうものを見せられるたび、自然の多様性に改めて驚いてしまう。




夏、居座る

2006-07-24 10:32:22 | 植物、平行植物
暑い!と言ったら1ユーロの罰金ね!という約束していたとしたら、もう私の財布は空になる。
思わず何度も今年のドイツの異常な夏について書いてしまう。
「暑いわネエ。。。いえね、苦情を言ったらいけないとは思うのよ、いつも夏が無いって嘆いているんだから。。。でもね、やっぱりちょっと長引くわネエ、この暑さ。。。ふう。。。」と噴出す汗をタオルでぬぐう見知らぬオバサンと立ち話をした。人間勝手なことを言うもので、それそれの状況において文句がでてしまう。
しかし、私は今だ完全に治らない気管支炎を引きずっているのもあってか、かなりしんどい。
この暑さでいつもより売れ行きのよいものベストスリーは「デオドランド、水、日焼け止めクリーム」だと報道されていたけれど、私はそれにスイカを加える。私だけかなあ。
去年の夏は涼しかったから、北海方面に出かけた人々が日光浴、海水浴どころかウィンドブレーカーを抱きかかえるようにしてふきっ晒しの灰色の浜辺を黙々と歩く姿がニュースで流れたのを覚えている。今年は暑さと天気の良さだけを語れば何処も出かける必要は無い。何処もかしこも南国と化した。竜巻だって発生する。
救急車の出動回数もかなり多そうだね。

暑いなあとぼやきつつも園芸店に肥料を買いに出かけた。肥料を買うだけのつもりだったのに、どういうわけだか衝動買いをしてしまった。(身体が辛いと言いながら園芸店に行く元気があるわけだ。)


 
Eden Rose 85


Madame Figaro


この美しきマダム達はなんだか涼しげな顔をしている。

それにしても、あちこちの芝生は太陽に焼き尽くされてすっかり茶色くカサカサになってしまった。農家ではこの明るい天気に反して毎朝溜息をついて暗くなっているのに違いない。穀類、ジャガイモは値上がり確実だ。
本当にこんなの初めてだ。
まだ当分雨が降りそうにもない。

散歩:ご近所・目白

2006-07-22 04:48:53 | 移動記録
どういうわけだかこの度の日本帰国の際、面影橋界隈に住む方々二組五名とと偶然知り合う事があった。ほかにも何かに付けて近所の地名がたびたび現われるものだから、段々に妙な気分になった。
「これは何かの啓示でしょうか?”ここ”に帰って来いという意味なんでしょうか?」
「いいえ、そういう事とも限らないでしょう。”ここ”に帰ってきてもこんなに楽しいよ。という意味でしょう。」と、その中のある一人は言った。
長く日本を離れて生活していることから、どんどん絆が細く細く、切れ初めているのを感じていたのだけれど、今回の帰国では実に多くの新しい素敵な出会いを得た事は嬉しい事だった。

さて、住みかの裏は神田川で橋を渡ると目白となる。散歩に出て数分歩いた所に氷川神社があって大きな輪が鳥居に括りつけられていた。

『夏越大祓』とある。右足からまたいで左足で帰り、しかるべき文句を唱えることを三回遂行しなければいけない。
境内に看板が立っていて今年の罪の穢れ払い清めの為に茅の輪潜りをし、ヒトガタ(半紙)を社務所に持って行きお払いしてもらうのだそうだ。とりあえず茅の輪潜りだけ済ませて、先に進むと

怪談乳房榎所縁の地という看板が目に入った。南蔵院である。

 木に絵馬がポツンと掛かっていたり、馬頭観音があったりするかたわら、住職の好みなのか色々薔薇の苗が並び、雰囲気は”寺”というより小さな植木屋の様子に似ていた。

知らなかったのだが、乳房榎という怪談は落語にもなっているようだが、映画もあるようだ。

今日もかなり暑い。今現在21時半で30度だ。(暗くなったら少しは下がるだろう。)流石にこうなると街の中は眠れないなら遊ぼうという人々で賑わい、南欧の夜といった雰囲気になる。近所もガヤガヤしている。何せクーラーは普通必要ないし、扇風機も常設とは限らない国だ。眠れぬ子供達をベットに追い込もうとしかりつける父親の声、テレビの音、音楽、話し声、飛行機の騒音、スーパーマーケットの冷蔵庫のフル回転するモーター音、床の上の椅子を引く音、咳払い、笑い声、キスゲの誘いに群がる蛾のかすかな羽ばたき。。。。

こんな日の夜はゾクリゾクリとするような怪談話をしてみたかったのだけど、どうも思いつかない、思い出さない。
私の頭の中身がドロリドロリと溶け出すので、掬って元に戻そうとするのだが指の間からこぼれる。
最初はゆっくりと、そして堤防決壊、勢いよく噴出す記憶が細かい文字の流れとなって行くのをとどめる術なく眺めていると、濁流の中に溺れて、咽て、やがて私はすっかりその中で溶けて空白に。。。。なっ。。て。。。。。く。。。。。。

月菫

2006-07-21 06:51:07 | 植物、平行植物
Lunaria annua:中央ヨーロッパ原産

和名:”銀扇草”"合田草”

ドイツ名:”Silberblatt-銀の葉っぱ””Mondviole-月スミレ””Juda's Pfennig-ユダの小銭”

かなり逞しい植物で、拾ってきた種から始まって、毎年何処からからか生えてきて一株二株咲いている。
名前はこの美しい種の”包み”を銀色の”Luna=月”に例えたのだろう。
花よりもこの種子とその鞘の方が印象的だ。



種にはルナリン(lunarine)というアルカロイドが含まれているそうだ。
月菫のエキスは満月の夜に踊りだす様な成分だと想像したい。
月菫の種子カプセルが青白い月光を受けてシャラッと光るところを想像したい。

本日のぼやき

2006-07-20 13:06:08 | 思考錯誤
気分転換にテンプレートを替えてみようと思い立ったのはいいのだが、途中で嫌になった。
もう一つのブログParticlezooの方も模様替えをして、まだ気に入らないが途中で放り投げてしまった。
アーティストユニットFlugsamen・飛行種子のブログは何とか形だけ整えた。

今日は昨日よりは多少”涼しく”現在、すっかり暗くした部屋の中で31度だ。なるべく窓から日光が入り込まぬように暗くしているのだ。(そうしないと暑くなる!)
記録的な暑さ。熱波で穀物の収獲は落ちているそうだし、原子力発電所も心配を始めてるそうだし、車の排気ガスも増えている。
今日のお告げでは明日雨が降るという事だ。期待しよう。

スイスのアイガー東壁が崩れた
地球温暖化現象は確実に起こっている。

そういえば今思い出したのだが、今日20日が例のワールド・ジャンプ・デイである。あの後全く何の話も出てこない。どうせならちゃんと報告までもでっち上げて欲しいんだけれどな。

薔薇とスイカ

2006-07-19 07:53:51 | 植物、平行植物
薔薇を育てるのは難しいと固く信じていた私は、いつも遠巻きに眺めるばかりだった。ましてテラスでは尚の事難しいとすっかり諦めていたのだ。
まあ、どちらかと言うと私の場合、薬草香草類への興味が断然強い。目指すは修道院の庭である。
ところがある日連れて帰った薔薇が元気に育ってくれるので、すっかり調子に乗って少しずつ薔薇の苗が増えつつある。

(私の留守中に咲いた薔薇達。相棒撮影)
 場所が悪いのか、木の様子に元気が無い。
 饅頭のような薔薇。
 素晴らしく香がよい薔薇。

今手元にある薔薇は4種類しかないのに名前を書いた札を一つを除いて見失ってしまい、名前がわからなくなった。




写真はPierre Gagnaireという薔薇で、私の留守中に一重の可愛らしい花が山ほど咲いたらしい。今は二番手の花を咲かせている。苗についてきた花の特徴覚書を見ると、香の欄に”ベルガモットとスイカのような香”とある。なんとも奇妙な組み合わせだ。
私が香を嗅いで見ても”全くそのとおり!”というようには思わなかったけれども甘い香りではなく、確かにベルガモットと何かのハーブを合わせたような香である。

話はそれるが、スイカといえばこの所毎日スイカを食べている。暑い日に冷えたスイカを食べると身体の奥の方からシャキッとする。それに今年のスイカは甘くて美味しい。まさに甘露だ。
毎日なかなかの暑い日が続いている。
昨日の天気予報では今日は午後には雷付きの夕立が来ると言うことだったのに、今朝の予報では

晴れ晴れ晴れ、35度、湿度73% !!! 

週末日曜日辺りに雨が降るというお告げだ。こんなに長い真夏天気は本当に珍しい。

本日もスイカ日和!

物 - 私

2006-07-18 10:44:34 | 思考錯誤
2ヶ月間とは、結構長い時間の塊なのだと実感した。
久しぶりに我が家のドアを開けると、いつもと違う空気が私を迎えた。
というのも、色々な"モノ”達が少し”よそよそしい”のだ。。
もちろん私はといえば気管支からピコピコ音を立てたり、まっすぐに歩いているつもりで壁にぶつかるほど揺らいでいたし、話しかける声もカスカスと途切れて不明瞭だったりしたので、"モノ”たちが私をただちに認知してくれなかったのかも知れない。
私が不在だった”時間”が膜となってうっすら積もっている。
そんな感じだ。なんとなく不思議な感覚だ。
記憶に関係のある事なんだろうけれど。

”物と私”の”対話”は無意識であってもちゃんと行なわれているという事らしい。

「ちょっとそこの金槌君、何でそんな危なっかしいところに乗っているのですか!」
「そりゃあ、あんたが家を出る前に慌ててこんな妙な所に置き忘れて行ったんじゃありませんか。この2ヶ月の私の苦労といったら。。。何を勝手な。。!」
というような対話であるわけではないのだけれど。

そういえばアルベルト・モラヴィアの短編小説で『ぼくの世界(物は物)』と言う話を昔好きだった記憶がある。しかしその本を読んだのは随分と昔のことなので、殆ど内容は覚えていない。ある時主人公が気がつくと、身の周りの"もの”達が騒がしく色々な事を主張し始めると言うようなくだりがあったように思う。
物と自分の位地関係を違う角度で見手しまったときに何が起こったか?
主人公はコップや机の饒舌なおしゃべりを聞かされる。
もう一度読んで確かめたいのだけれど、手元には無し、本屋で捜しても見つからない。



上の写真に写っている愉快な"顔”はメジャー。東京の雑貨屋で手に入れた。
嘘の尺度を計るわけではなく普通に使える150cmのメジャーだ。もちろん鼻が伸びる。
これなどは喋りだしたらどんな事を言い出すことか?

種蒔カラクリ

2006-07-17 11:47:51 | 植物、平行植物

     


時々土手や畑の脇に沢山の赤い芥子が生えている。
ドイツでは辺りが真っ赤になるほどに咲いているのを見た事が無いが、北イタリアに旅した時には、そんな畑に何度も出くわしてはワクワクした。
カーブする坂道を曲がりきるとワッと言う感じで目の前に赤い帯が広がっていたりする。巨大な赤いスカーフを野原に広げて、それが風に波打っているといった感じである。本当にワクワクドキドキした。

今年は我が家のテラスのかぼそい林檎の木の下に沢山咲いていたらしい。芥子の種子のカプセルの形は素敵だ。
種が熟すと天辺の沢山の窓が開き細かな種子はそこからこぼれる。細いしなやかな茎は風に吹かれる語とに左右に傾いでは種を蒔いている。
いつ見ても、実にうまく仕上がっているなあ、と感心してしまう。

外来植物の繁殖と40台の寿命についての考察

2006-07-16 21:11:56 | 植物、平行植物
薄暗い坂道を降りてゆく。
少し蒸し暑くなってきた夜闇。温い風がほんの少しだけ空気を動かしているのを感じながら歩くというのはとても心地よい。なんだかバカンスで南の方に出かけたような気分かもしれない。ちょっとばかり軽く酒に酔った様な気分に似ている。
坂の途中には、頭の天辺に不思議な四角い溝が何故だか穿たれた変な顔の獅子どもが守る寺があったり、そして”○○食料品店”があったりする。




その店の脇の電信柱には勢い良く柱を締め上げんばかりに朝顔らしき植物が巻きついていて、青紫の花を沢山付けていた。
「あれ?なにかな?朝顔みたいだけど綺麗だね。」と友人と"それ"を見上げて立ち止まると、脇の物陰から
「ありゃ、朝顔じゃないよ」というしわがれ声がいきなり飛んできて驚いた。
「へえ、それじゃあ、あれはナンですか?」と思わず聞くと
「外来種っ」と、ぶっきらぼうな答えが飛んでくる。
ふ~ん、朝顔じゃないんだ。最も夜なのに咲いてるね。などと言いながらその場をとおりすぎようとした時
「あれは、種が出来んっ」と言う。
「ふうん、それじゃあ、一体どうやって増えるんです?」
「挿し木っ」何処までも突っぱねるような答え方だ。かといって喋るのが億劫なのかといえば、そうではない。
「外来種は強い。日本の植物を押しのけちまう。外来種ってやつらはみんなそうだ。」
「外来種がこの頃多くてね」
この辺りから、テーマは植物を離れてこの世を憂う親父さんのつぶやきとなっていった。
「。。。だから大体今の40才台の人間辺りは早死にだね。」
外来種の繁殖と40歳台の人間の寿命の微妙な関係という、その複雑な関連性を論じ合うとなると私の知識は間に合わないので、口を挟まず親父さんのぼやきを聞いていたが、まもなく手に提げたビニール袋の中身が気になり始めた。
晩御飯のナスと豚肉のピリカラ炒め弁当と餃子が入っていて、かなりお腹は空いている。
親父さんのぼやきは又この次に聞く事にして、とりあえず”早死に組み”は挨拶をしながら道を急いだ。

”○○食料品店”は23年前にはちゃんと食料品店としての面目を保っていたから、そこそこの小品が棚に並んでいた筈だし、実際私も時々買い物をしていた。
今では食料品店の内外に植物が並び始めて、一体何の店なのか一見して不明になってきている。店の親父さんは植物好きらしい。軒先にはCD盤が何枚も釣り下がって多分これは虫除けか鳥除けなんだろう。
頑固親父を画に描いたような親父さんは天気が良ければいつも道の向かい側の水色のプラスティックで出来たボトルケースに座って顎を突き上げるような感じに顔を上げて目を瞑っているか、「暑いなあ」とかなんとかブツブツと独り言をつぶやいている。

ところで、前置き話で私はすっかり呆けて、そのままフェイドアウトしてゆく所だった。
話の中に出てきた「外来種」の植物について書こうとしていたのだった。
青紫の朝顔のような植物は学名Ipomoea indicaでオーシャン・ブルーとかブルー・ダーウィンとか呼ばれているものらしい。
そこで思い出したのは以前10月頃のポルトガルで垣根にぎっしり咲く似た植物を見ていることだった。種採集家を自称する私は当然垣根に目を凝らして種を捜したけれど、何処にもそれらしいものが見えなかった。
それは花の色身が違い濃い赤葡萄酒色の花で、そこここの空き地にシックな花模様を描いていた。
葉や蔓の感じは全く良く似ているので、多分近種類だったのではないかと思う。
これは朝顔とは違って殆ど一日中花を開いている。風情が無いといってしまえばそれまでなんだけれど、なかなか美しかった。
しかし、やはり私なら朝顔を植えたい。(ああ、朝顔市を見られなくて残念だったなあ。。)

「外来種」達は確かに繁殖して、雑草のように茂り始めている。道端のあちらこちらにアカバナの月見草(Oenothera speciosa "Siskiyou")が咲いているのをみかけた。これはアメリカ、メキシコ原産の植物だが、日本の気候が気に入っているようだ。
我が家ではこのアカバナ月見草を2度ほど園芸店で手に入れて植えてみたが、冬越し出来ないようだった。
ヨーロッパでは日本から入った"イタドリ”やインドから来た”ツリフネ草”が在来種を押しのける。
面白がってよいものか憂いた方がよいものか、良くわからない。

ドイツの空

2006-07-14 00:15:48 | 思考錯誤
 
こんな青空が毎日続いている。


毎日ほんとに良い天気。散歩に出られないのがなんとも悔しい。


去年も今頃こんな青空だった。


去年のこんな青空の日にラベンダー摘みをした。


今日も彼女から「ラベンダーを摘まなくちゃいけないわよ!今週末はどお?」と電話が掛かってきた。


今はラベンダーのよい香を楽しめる”鼻”を持っていない私なのだけど。。。


電話に出ないわけ

2006-07-11 16:02:42 | 思考錯誤
7月10日

トゥリリリリ。。トゥリリリリ。。トゥリリリリ。。。囁くような電話の呼び出し音が聞こえている。 まるで夢の中から掛かってきたかの様な音だ。
それは、電話の呼び出し音がいつもよりも慎ましやかなわけではなく、私の耳が聞えなくなっている所為なのだ。ついでに声も出ない。だから電話に出ない。出られない。何度もかけてくる。誰だろう?

日本をたつ数日前から、気管支の具合が悪くなり始めて、出発前日かなりひどくなり滅多に医者には行かないので有名な私が医者に飛び込んだ。
明日飛行機に乗ってドイツまで飛ぶ事情を話すと、点滴を打たれて抗生物質の薬他3種類の薬が処方された。
出発を延ばそうかどうかという事を考える余裕もなく、翌日成田空港で重い荷物を持ってゆらゆらと立っていた。
機内ではマスクをかけて、それからの11時間、半覚醒状態で過ごす。
するとアムステルダムまで後10分程で到着する頃、耳が痛くなってきたのだ。これはなかなか辛いものだ。
そのうちに耳が遠くなってしまい、色々な事が遠くで進行しているかのような妙な感じがして、なんだかもうどうでも良いような気にもなってきた。。。とは言えそこで気分に流され、へこたれていてはいけない。
どういうわけだか乗り継ぎの飛行機が予定よりも20分も早い出発である事を掲示板は示している。既に間に合う筈の無い時刻で、掲示板どうりならもう出発してしまった所である。慌てて聞いてみると
「待機しておりますから、お急ぎください」という。
潤んだ赤い目と重たいパンパンに膨れた鞄を持て余すように抱えた私は最後の力を振り絞って走り始めた。
アムステルダムのスキポール空港は”鰻の寝床に数本の棘が生えた”かの様な形をしている。
私はその頭の部分から尻尾まで延々と走らなければいけないのだ。
走る走る、荷物がまるで”子泣き爺”のようにぐんぐん重くなる。ひたすら走りに走って突き当たった所はゲートB18。私はB25に行かねばならない。あたりを実に暇そうにうろついていた雲をつくように大きな男性警備員の3人組に、声にならない声で「ゲートB25は何処!!!」と聞くと、「そりゃあ、あなた戻らなきゃ、突き当たりまで戻って階段下がるんですよ。」
「マイン ゴット!この飛行機出ちゃうのだけど近道無いの?」
彼等は首を横に振るばかりだ。私の噴出す汗と、”出ない声”とボロ雑巾のような私の姿を哀れんで見おろしながら
「もう駄目かもしれないですけれどね、でも、飛行機は遅れてるかもしれない。頑張ってねえ」と肩をすくめて言うのだった。
結局、私はまたもや走り、ゲートB25に辿りつき「間に合いますか?遅すぎましたか?」と倒れるようになりながら声を振り絞って聞くと
「デュッセルドルフ行きですね、B25番ゲートから後10分後にバスが発車します。」
と涼しげに答える係員。何のことは無い当初の出発予定時刻だったのだ。ひどいではないか。
噴出す汗はなかなかやまず、しばらくの間首に巻いた綿のストールに顔をうずめてじっと耐えた。なんとアムステルダムも日本ほどではないがジケッと暑いのである。
それから50人乗りと思われるプロペラ機でデュッセルドルフまでの"おおいに揺れる”旅に耐えた。
なかなか出てこない荷物を待っている頃は荷物用カートにもたれて立っているのが精一杯だった。

。。。というわけで耳が遠くなっているのだ。電話の線の向こうに誰がいたのか知らないけれど、そんな事情で出られませんでした。ごめんなさい。

7月11日

声も出るようになったし耳も聞える。しかしこの気管支から出てくる嫌な咳は納まらず、夜もろくろく眠れない。まだ炎症が納まってくれないらしい。それでも喉の痛みは取れ始めた。咳で眠れないのとジェットラグで眠れないのとで、なんだか時間感覚がすっかり崩れている。頭はいつもの半分も働かない。グループ展に出品するものを早く考えて出さなきゃいけないというのに。。。駄目だ。
ドイツもすこぶるよい天気だ。


ところで、
2ヶ月間我が家を開けていた事が今まであったのだろうか?
無かったようだ。
久しぶりに部屋に入るといろいろなものがよそよそしい。
”違和感”がある。
なんだか面白い感覚だった。