雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内「雪虫」その二 刑事・鳴沢了シリーズ①

2010-03-25 15:05:51 | 読書案内
 舞台は晩秋の越後・湯沢

 『すべての風景が海に溶け込む場所がある。
 何度も走っている場所なのに、私はいまだに慣れることができないでいる。
 お粗末なガードレールを突き破り、白い波濤がざわめく日本海に
 ダイブする自分の姿を、つい想像してしまうのだ』

  ブロローグは刑事・鳴沢了の心象風景と重なって、ハードボイルド的要素の詰まった
 シリーズ第一巻の幕が上がる。

  そこには、「組織になじめない、仲間とうまくやっていけない」妥協を許さない
  意地張りの鳴沢の姿が浮かんでくる。

 
  一人暮らしの老女が殺された。
 新潟県警捜査一課刑事・鳴沢了はこの事件を捜査するうちに、
 老女が50年前に新興宗教の教祖であったこと。
 当時、この教祖のもとで、殺人事件が起こったことを突き止める。

 50年前の事件が、今度の老女殺しと
 どんな関連性を持っているのか。
  あるいは
 まったく関連性のない事件なのか。

  すでに現役から退いた敏腕刑事の祖父、警察署長・捜査本部長の父、
 警官であることを誇りに思う私・鳴沢了。


  迷宮の淵をさまよう「了」の捜査の過程で、祖父の影が
 父の影がチラチラと見え隠れしてくる。


  刑事・鳴沢了の捜査行を縦糸に
 初恋の相手喜美恵との恋の行方、
 新米刑事・大西海の成長物語が横糸に織り込まれ、
 新潟・湯沢で起きた殺人事件は、
 晩秋から「雪虫」の飛ぶ冬へと季節は移っていく。

  刑事としてのプライドが
 50年前に起きた殺人事件の真相に蓋をし、
 真実を闇の中に葬り去ってしまうのか。

  「刑事・鳴沢了」シリーズ第一作目ということで、
 人物設定や鳴沢親子の確執など今後どのように変化し、
 厚みを増していくのか、楽しみなシリーズである。
       
             「雪虫」:雪国で晩秋から初冬にかけて出現する
                  ワタムシの俗称。白い綿状の分泌物を
                  つけて群れ飛ぶさまが雪の降るように
                  見えるからとも、この虫が飛ぶと雪が
                  近いからともいう。  
 
  
  
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読書紹介「雪虫」その一 刑事・鳴沢 了シリーズ ①

2010-03-18 21:15:48 | 読書案内
 『寝不足書店員続出!? 今まで紹介しなくてごめんなさい!?』
なんていう帯のキャッチコピーにひかれて購入してしまった本。

 乱読、活字中毒の私は、キャッチコピーや本の題名や表紙などにひかれて購入する本もたくさんあります。
 この本も「雪虫」という題名にひかれて購入した本です。

 祖父、父そして私鳴沢了は三代にわたる刑事一家である。

 この設定は、「警官の血」佐々木譲著と同じである。
ある事件の真相を追っていくうちに、祖父や父が事件にかかわっていたという設定も共通している。
                                      
 どちらの小説が面白いか、という比較の問題ではなく、読者の好みによって評価が分かれると思います。

 私は佐々木譲氏の「警官の血」が読み応えがあり、強い印象が残っています。
情景描写、時代描写も丹念に書き込まれ、それぞれが生きた時代の中で、
親子三代がどう生きてきたのか、丹念に描写してゆく。

 終戦間もなくの混乱した時代の中で起きた刑事事件が、祖父、父、私にどう関係してくるのか、
という状況設定も共通している。

 「警官の血」「雪虫」を読み比べてみるのも読書の楽しみの一つです。
                                                            つづく
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