穴にハマったアリスたち

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読んだので批判する その2:「プリキュアでカウンセリングを呼びかけるべき」(アゴラ)

2013年06月16日 | 王様の耳はロバの耳
コメントをいただいたので、書いてみる。
(ちょっと攻撃的な文章になったかもしれませんが、コメントが不快だったとかそういったことではないです。引用元の記事が不快なので、ついこうなった)

[前回の私の記事より]
 果たして「必要条件」(児童に性的興味があるものは、圧倒的大多数がプリキュアに興味がある)は正しいのか?
 答えは即答できますね。「NO」です。
[いただいたコメント]
 私も必要条件とは思わないが、即答で「NO」とは言えないのでは?

[発端の記事]
[引用]
私はプリキュアは「幼児性的犯罪の必要条件」と言ってよい(比喩)と思っています。
(中略)
「必要条件(比喩)」というのは、「幼児に性的魅力を感じない人」もプリキュアを観るかどうかは関係なく、「幼児に性的魅力を感じる人」は、ほぼプリキュアに釣られてしまうでしょう。ということを言ってるに過ぎません。
「必要条件とは言えない」というなら、「プリキュアなんて全く興味がないけれど、幼児には猛烈に性的魅力を感じる」という人が出てくるなら、反証できるのですけれど……。そんな比喩はどうでも良い。
[引用終]


といったわけで、即答で「NO」と言える理由を二つ書いてみる。

【一つ目の理由】

引用元の筆者が根拠を示していないから。

根拠がないのだから、「いや違うよ」「だって「必要条件だ」という根拠がないから」。
これで終わり。
根拠を示す必要があるのは、「ある」と主張する側。出せないのなら、その時点で否定して終了です。

…と即答して一切相手にしないのが最も効果的だとは思うのですが、せっかくなのでもう一つの理由も書いてみる。

【二つ目の理由】

まず話を整理します。
引用元の筆者は「児童に対して性犯罪をする者は、プリキュアにも興味を持っている」と主張しています。

根拠が示されていないので推測にならざるを得ませんが、「児童に興味があるのだから、児童が出ているコンテンツにも興味があるはずだ」という思考回路だと思われます。
ある特定の興味を持っていた場合、それと関連するものにも興味を持つだろうという発想ですね。
それなりに、筋は通っているようには見えます。

…ですが、この思考は正しいのでしょうか?

そこで以下の仮説を考えてみよう。

 前提:「特定の興味を持つ者は、それと関連したものにも興味を持つ」

 『女子中高生に対する性犯罪者Aがいるとする』

 仮説(1) 性犯罪者Aは、女性が好き
 仮説(2) 性犯罪者Aは、女子中高生が好き
 仮説(3) (性犯罪者Aは、ドラマが好き)
 仮説(4) 性犯罪者Aは、女子中高生が出るドラマが好き
 仮説(5) (性犯罪者Aは、アニメが好き)
 仮説(6) 性犯罪者Aは、女子中高生が出るアニメが好き
 仮説(7) 性犯罪者Aは、プリキュアが好き

それぞれの仮説の確からしさは、
 『仮説(1)が最も可能性が高く』
 『下に行くにつれ順に低くなり』
 『仮説(7)が最も可能性が低い』
です。

直感的には、「女子中高生を狙った犯罪者ならば、仮説(2)の方が(1)より可能性が高いのでは?」と思うかもしれません。
が、それは典型的な論理の錯誤。
「女子中高生」は「女性」なのだから、仮説(2)を満たす場合は、必ず(1)も満たします。
したがって、必ず仮説(1)>仮説(2)となる。
(元記事の筆者もこの錯誤を起こしてる気がする。だから訳の分からんことを言いだしてるんだろう)

仮説(2)>仮説(4)となるのは、「性質が近いものを好むはずだ」の前提があるから。
「生身の女子中高生」の方が、「フィクションのドラマ」よりも、「性犯罪の対象にした女子中高生」に近いので、この大小関係が成り立ちます。
仮説(4)>仮説(6)も同様。

仮説(3)>仮説(4)の理由は、「女子中高生が出るドラマ」は「ドラマ」なので、(4)が成り立つときは必ず(3)も成り立つから。
仮説(5)>仮説(6)>仮説(7)も同様。

ここまでは(前提を正しいとすると)根拠を示さずとも確実に即答で言える。(※1)
否定しようとすると、前提の「特定の興味を持つ者は、それと関連したものにも興味を持つ」が否定されてしまいますので、自動的に「児童性犯罪者とプリキュアは必要条件である」の主張も崩れ去ります。

対面で議論する際には、上手いこと挑発して相手自らにこれを否定するように持っていくことになるでしょうね。
例えば「性犯罪者はドラマよりもアニメを好むはずだ」と言わせることができたら、そこで終了です。

ここからの展開の仕方は概ね2つ。
「仮説(1)>(2)>(4)>(6)>(7)は成り立たないことを示す」(=前提と矛盾するので、前提は誤りとなる)か
「仮説(7)の可能性は非常に低いことを示す」(=前提とは直接的には矛盾しないが、関連性は非常に薄い)です。

まず前者。
材料なしでやるその場限りの議論では、これが一番有効です。
前述したとおり、アホな人なら論理構造に気が付かず、勝手に墓穴を掘って自爆してくれるでしょう。
(あまりにアホすぎると、敗北を理解してくれない可能性がありますが…)

ぱっと見て簡単そうなのは、仮説(4)>仮説(6)を崩すことでしょうね。
これ、言いかえると「アニメ好きはドラマも好きである」と言ってる。
普通に考えて違うでしょうね。(※2)

ちゃんと数字を調べてやるのなら、後者の「仮説(7)の可能性は非常に低いことを示す」。
もっとも、本来は相手が先に「仮説(7)は非常に高い」ことを示さないといけないのですけれど。
そして結局は前者と同じ理由で否定できるでしょう。

よって、いたって簡単に即答で「NO」と言える。


(※1)
 但し、(2)>(3)および(4)>(5)は不確定。
 生身の人間に危害を加えていることから、「女子中高生であること」よりも「現実の女性であること」への依存度が高いと感じたので、とりあえずこう置いてみた。
 故に括弧つきで書いています。
 (違ったとしても、後続の内容に特に影響はなし)

(※2)
 ここでは「(1)>(2)>(4)>(6)>(7)が成り立つかどうかは、犯罪者か一般人かで左右されない」ことを前提にしています。
 要は、「一般人の場合、ドラマを好きな人の内、40%がアニメも好き」だとしたら、犯罪者の場合も同じく40%で好むとする。
 犯罪者にのみ特殊な仮説が成り立つと主張すると(犯罪者はアニメを好む割合が高いはずだ、とか)、自動的に前述の「前提」が崩れます(児童が好きだから児童アニメが好きなのではなく、犯罪者特有の理由で好きなことになる)ので、いずれにせよ論が破綻します。
 
【まとめ】

まとめると、「児童性犯罪者ならばプリキュア好きである」の主張が、「女の子が好きなのだから、女の子の出てくるアニメも好きだろう」(関係性のあるものを好む)という前提によるものならば、即答で「NO」といえる。

「アニメの女性が好きだからって、現実の女性が好きとは限らない」「現実の女性が好きだからといって、アニメの女性が好きとは限らない」、この恐ろしく当たり前の事実を、理解できないものなのかしら。
多分、「現実の女性に相手にされないので、アニメの女性で我慢している」とか、そんな認識なんでしょうけど。
実際には「現実の女性の代替物としてプリキュアが好きなのではなく、プリキュアはプリキュアだから好きだ」なんです。

そして「いや、主張の根拠は違うものだ」とか「性犯罪者と一般人は違う」(性犯罪者はアニメを好む等)と言うのなら、「性犯罪者は特徴的にプリキュアを好む」というかなり極端な仮説を、根拠も述べずに書いたことになる。
いずれにせよ、終了ですね。

…というか長々書きましたが、「プロ野球ファンは「ドカベン」も好きだ」「ドカベンは必要条件だ」程度の話なんですよ、これ。
「プロ野球ファンで、漫画も好き」なら「ドカベンも好き」の可能性は比較的高くなるでしょうが、「漫画好き」という「プロ野球」と直接関係のない要素が必要になってきちゃう。

【蛇足】

そういえば書いてなかったので、追記。

引用元の記事では「プリキュアでカウンセリングを呼び掛けるべき」とあります。
性犯罪者とプリキュアは必要条件でも十分条件でもないので、全くの無意味です。
「全てのコンテンツで呼びかけるべき」ならば、説得力がなくはないですが。

また、そこに目をつぶって『仮に』必要条件だったとします。
それでもやっぱり、カウンセリングを呼び掛ける理由としては不足しています。
何故なら同様の構造は、他の趣味にも当てはまるから。

暴力衝動を格闘技で昇華するとか、独占欲を原動力に商売に励むとか、別段珍しい話ではありません。
従って、筆者の理屈に従えば、柔道教室では「暴力を抑えるようにカウンセリングを受けよう」とアピールし、ビジネス研修では「仕事が好きな貴方は独占欲の塊かもしれません。一度、カウンセリングを受けては?」と勧める必要が出てきます。
少なくとも、この程度の説得力しかない。

実際に言動がおかしい(暴力を振るったり、違法営業をしたり)のなら、この言い分もわからなくはない。
ですが、内面に限ったことを(しかも昇華しているのに)とやかく言われる筋合いはありませんし、犯罪傾向の無い多数の人にとっては迷惑以外の何物でもありません。

時代劇の冒頭に「刃物を使った犯罪者は時代劇が好きです。殺陣が好きな貴方はカウンセリングを受けましょう」、カーアクションのシーンが出るたびに「違法運転に興味がおありですか?カウンセリングを受けましょう」と表示するような社会は、誰も望んでいないと思うのです。

【蛇足2】

「女の子が好きだから、女の子の出てくるアニメも好きだろう」というシンプルな根拠を前提に書きました。
(そしてそれが間違いであることを示した)

筆者が根拠を示していないので、それ以上の「反論」は困難(反論する相手がいない)です。
ただ推測するに、次に来る言いわけはおそらく「女の子が好きだから、女の子が好きなアニメも好きだろう」かなと思います。
それなりにシンプルに妥当性があるように見えます。が、これもやっぱり事実とは違う。

本当に「自分の好きな人が好きなものを、その人も好きになる」のだとしたら、世のカップル・夫婦間の趣味や価値観を源とした対立は存在しません。
夫が野球好きだと、妻もほぼ例外なく野球好きになるとでも思ってるんですかね…。(※3)


(※3)
「二人とも野球が好きなので、趣味や価値感が似通っていたので惹かれあい、結果的に夫婦になった」は上記とは逆の現象なので含まれません。
「プリキュアが好きなので、子供とも会話があい、仲良くなった」のパターンですね。

念のために書きますが、そこから「プリキュアが好きなので、子供に対して性犯罪をした」には繋がりません。
それは「野球を好きな男は、野球を好きな女を見たら性犯罪に走る」「だから野球好きはカウンセリングを受けるべき」とほぼ同じことを言ってる。
筆者の言う必要条件と十分条件が入れ替わっちゃいますね。

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