つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

せめぎ合いと共生。

2023年01月07日 21時34分34秒 | 自然
                          
わが石川県・津幡町は豊かな森を有する。
少々乱暴に言えば、総面積の半分くらいが森林。
それは山を切り拓いた宅地や道路が増えた今のハナシだから、
かつての森が、より広く深かったことは想像に難くない。

昔々、森というのはそれだけで一つの宇宙でした
10年前に終了したラジオ番組「森の散歩道」のパーソナリティ、
「森本レオ」氏の決まり文句は、言い得て妙。
確かに鬱蒼とした森は、人ならぬ者たちが棲む別世界である。

人と獣の領域が接するあたり。
街中からほんの少し山間に入った棚田の農道には、
イノシシ用の「箱罠」が仕掛けてある。





十二支の一つ「亥(い)」として。
「猪突猛進」の語源として馴染みの深いイノシシ。
彼らの生息域は、低山帯から平地の森林。
植物の根、地下茎、果実(ドングリなど)、タケノコ、キノコ。
昆虫類、ミミズ、ヘビなど何でも食べる雑食性だ。
近年、人里に出没するニホンイノシシの数が増加していて、
農作物に被害を及ぼすことは、よく知られている。



田んぼの周りには「電気柵」も張り巡らしている。
イノシシより体の小さなノウサギやタヌキ対策だろうか?
何にせよ、農家の方々にとっては深刻な問題。
生活の糧を食い荒らされてはたまらないだろう。

こうした人と野生のせめぎ合いは、昔から繰り返されてきた。
その証拠が駆除したイノシシの供養碑「猪塚(ししづか)」である。



<1774(安永3)年から翌々年にかけて大雪が続き、
 山奥でエサがないイノシシが多く出没し、山里の作物を食い荒らしました。
 そのため、藩では役人を派遣して大規模なイノシシ狩りが行われ、
 数千頭が殺されました。
 村人たちは証拠として尻尾を持っていくと、
 イノシシ1匹につき米1升の褒美(ほうび)がもらえました。
 その尾を集めて埋め、供養した石碑がこの猪塚です。
 石碑は高さ1.36メートル、直径0.39メートルの円柱状で、
 正面に梵字(ぼんじ=古代インドの文字)と建立の年(安永6年2月15日)、
 銘文が刻まれています。
 ◆2011年(平成23年)5月1日 津幡町文化財(有形民俗文化財)指定>
(※<   >内 津幡町観光ガイドHPより抜粋/引用)



狩猟者の減少。
高齢化に伴う農業後継者不足。
中山間地域の過疎化により休耕地や耕作放棄地が拡大。
--- などの理由から、森林面積は減少傾向なのに、
イノシシをはじめとした動物の個体数は増加しているらしい。
どうやら当面のせめぎ合いにおける軍配は、野生に上がりそうだ。

仮に将来、人が彼らを駆逐するようなことがあれば、
その結果は大自然のバランスを狂わせ、災いとなって跳ね返ってくるだろう。
僕たちも自然の一部。
やはり「対峙して共生する」のが正しい選択なのかと思う次第である。
                     
コメント
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