湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

☆グリエール:交響的絵画「ザポロージュのコサック」

2017年09月22日 | グリエール
○ラフリン指揮ソヴィエト国立交響楽団(melodiya)LP

思いっきりロシアロシアした重厚な出だしから「シェヘラザードかよ!」というような旋律とハーモニー展開。リムスキー節を抜けるとロシア民謡のバレエ音楽的数珠繋ぎ。ラフリンは引き締まったアンサンブルを展開するがロシア劇音楽的な感情をいかにもロシア流儀のアゴーギグで表現している。一くさりカリンニコフかチャイコフスキーか晩年プロコかという民謡表現がすぎるといったんリムスキー主題が戻るが、このあたりのコード進行にグリエール独自の新しい表現が聞き取れる。グリエールはソヴィエト下で作風を穏健な方向に変化させてしまったとはいえ、リスト・ワグナーの衣鉢を借りて完成したロシア国民楽派の管弦楽の方向性を積極的に維持したという意味ではグラズノフ以上に右寄りな立場にあった。この作品も「穏健」というよりグリエールの世紀末的作風の昇華と聞き取れる。憂愁の民謡・・・チャイコだ・・・からふたたび冒頭主題に回帰して終わる。ラフリンはつかみ所の無い指揮者ではあるが聞いているうちになんとなくその立ち位置がわかります。いかにもロシアな人。○。

※2006/9/23の記事です
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☆カウエル:オンガク

2017年09月22日 | アメリカ
○ホイットニー指揮ルイスヴィル管弦楽団(FE)1958/4/20・CD

カウエルは意欲的に他国の音楽にも取材し多彩な楽曲を書いた。日本に取材したものもいくつかある。これはガガクとサンキョクからなる組曲だが、「まんま」である。三曲のほうはいくぶん西欧的なオーケストレイションにより20世紀前半にイギリスあたりによく聞かれた民謡編曲音楽(ま似てますからね)に現代の映画音楽風味をふんだんに盛り込んだかんじで、雅楽風の笛による繊細でのっぺりしたハーモニーに、アメリカらしいペットソロが乗ったりするところはなかなか凡百作曲家にできない絶妙さをもってくる。日本の作曲家に多かった感じもあるが、とにかく西欧置換が上手いので、下品にならない。気持ちがいい。雅楽のほうこそまさに「まんま」だが、三曲はRVWの哲学性にも通じる。かなり日寄った作品とも言えるが縁深いオケの、多少粗くもよく掴んだ演奏ぶりがいい方向に働き秀逸。カウエルはアメリカ前衛主義の創始者としてかなり左寄りに置かれているが、アイヴズより余程感傷的なロマンチシズムと音楽的合理性を持ち合わせたプロフェッショナルである。日本人が聞いても○。

※2006/7/22の記事です
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