◎デレーヌ(T)ソーゲ(P)(ORPHEE)LP
テノールによる珍しい演奏。この曲はやはりストラヴィンスキーの言うとおりピアノ伴奏版にかぎる。しかも女声による不安定さが払拭されなかなかいい感じに沈んで聞こえる。感情が顕わにならない歌い方、演奏はいたって安定しており、どうして難しいこの大曲を飽きも違和感も感じさせずにかなできっている。最後のサティならではの断ち切られかたは成功している例に出会ったことがなくこの演奏もその範疇に漏れないが、それでもそこに至るまでの生臭さのないフランス的としか言いようのない繊細でも面白みのある音楽の流れは十分に魅力的である(この「魅力」は「艶」ではない)。いわゆるアルクイユ派出身の「直系」作曲家ソゲの演奏もいい。プーランク的なスピードというかテンポ感はあるにはあるのだが、プーランクのように恣意的な解釈を入れず注意深く演奏している。これが絶妙である。サティのおそらく最も評価されているこの曲、フランス語の歌詞がわからなくても聴きとおせるというのは相当な演奏レベル。◎にしておきます。