○チェリビダッケ指揮トリノ放送交響楽団(WME:CD-R)1970/5/1live
シベリウスの傑作交響曲であり、1,2番の知名度に比べて落ちるが緻密な設計、流麗な筆致と壮麗な盛り上がりは何の欠点もない紛れも無くロマン派の最後に輝く金字塔である。余りに流麗がゆえに音楽的にこじんまりと聞こえてしまうというか、モノラル録音だと更にその点が強調され印象に残らない場合もあるのが難点だが、チェリまだまだ壮年の覇気が爽快な勢いある音楽を突き通し、晩年のガチガチさも若い頃の暴虐さもないバランスのとれた演奏振りが、すっかり馴染みのイタリアオケと組み合いラテンなノリさえ感じさせる。シベリウスを聞くとやはりどうしても自然を想起する。蒼みがかった氷壁を吹き抜ける風、北斎じゃないが凱風快晴、といった清々しさがある。けっこう複雑なアンサンブルや現代的な音響を駆使しているのにそこには非常に素直な自然への賛美が聞こえる。チェリはいささか人間臭いがそれでも旧いシベリウス指揮者たちに比べればずいぶんと透明度はある。チェリのシベリウスはいい。悪い録音のライヴばっかりだが、それでも。○。
シベリウスの傑作交響曲であり、1,2番の知名度に比べて落ちるが緻密な設計、流麗な筆致と壮麗な盛り上がりは何の欠点もない紛れも無くロマン派の最後に輝く金字塔である。余りに流麗がゆえに音楽的にこじんまりと聞こえてしまうというか、モノラル録音だと更にその点が強調され印象に残らない場合もあるのが難点だが、チェリまだまだ壮年の覇気が爽快な勢いある音楽を突き通し、晩年のガチガチさも若い頃の暴虐さもないバランスのとれた演奏振りが、すっかり馴染みのイタリアオケと組み合いラテンなノリさえ感じさせる。シベリウスを聞くとやはりどうしても自然を想起する。蒼みがかった氷壁を吹き抜ける風、北斎じゃないが凱風快晴、といった清々しさがある。けっこう複雑なアンサンブルや現代的な音響を駆使しているのにそこには非常に素直な自然への賛美が聞こえる。チェリはいささか人間臭いがそれでも旧いシベリウス指揮者たちに比べればずいぶんと透明度はある。チェリのシベリウスはいい。悪い録音のライヴばっかりだが、それでも。○。