かつてのひまな野球人の記

野球が好きだった医者が書きたいことを書き散らすブログ。今は保健センター教員をしつつ神経内科医と研究者もやっています。

あっけない終わり

2015年02月16日 23時58分24秒 | 一般
生理カンファが終わり、さてこれからCCの打ち合わせと思っていた、その時だった。嫁さんから電話がかかってきて、子どものことで何かあったのかと思って出てみると想像だにしなかった話が聞こえてきた。父が倒れて運ばれ、心肺停止状態だという。
話を聞いて、とうとう来るべき時が来たのかも知れないと薄々覚悟は決めた。急いで運ばれた病院に行ったら、もう全ては終わっていた。状況は厳しいとはわかっていたし、どういうことになるのかももちろん予想はしていた。しかし、いざ現実に直面するとやはり何とも言えない。
触ると父の体はまだ暖かく、そして穏やかな顔をしていた。何の理由があるということでもないが、腕をさわり、手を握り、髪をなでた。もちろん、何の反応もない。31年もの間ずっと慣れ親しんできた人の顔を確かにしているが、寝ているのとは違う、もう生きている人ではなかった。
そばのホワイトボードを見て、厳しい状況の中で救急のスタッフが懸命に蘇生処置をしてくれたことがわかった。アドレナリンを21回もうってくれて、心静止になっても続けてくれたことがわかった。本当によくやってくれた。
聞いた話では、あまり苦しんだ様子はなく、すぐに意識がなくなったようで、突然ではあったが本人にはせめてもの救いであったのかもしれない。
これまで普段の父の様子を見ていて、こういうこともあっても不思議ではないとは思っていたせいか、思ったほどの驚きはなかった。でも、まだちょっと早いように思った。去年夏に孫が生まれて、言葉を話すのを楽しみにしていたのを知っている。話すようになったら、どんな話をしたかったのだろう。色々な本を読ませたかったのではなかろうか。
私は奇しくも同じ職業を選び、同じ専門に進んだ。もっともっと話をしたかった。研究を始めたら、研究についての話をして盛り上がりたかった。私の研究分野について心配してくれていたと聞いた。研究を始めるまであともう少しだったのに。残念という言葉では表現しきれない。
今日の父の最後の感触は一生忘れない。忘れたくない。



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