国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

英国の不動産バブル崩壊の衝撃は米国のそれを上回るか??

2007年08月16日 | 欧州
●【経済コラム】サブプライム危機が次に襲う国はどこだ-M・リン  2007/08/10 14:22

8月8日(ブルームバーグ):信用力の低い個人向けのサブプライム住宅ローンの危機が金融市場に与える打撃については、誰もが知るところとなった。世界の株式相場が打撃を被っているのは米国の住宅ローン問題への懸念が理由だ。

次はどの国がこの問題に見舞われるのだろう?英国でも米国と同様の熱狂的な不動産バブルが発生している。不動産評価が水増しされ、融資基準が緩和された結果、英経済は依然として健全でも、返済の延滞は急増し始めている。英国はサブプライム危機に直面しているだけではなく、米国よりもはるかに深刻な危機に陥りかねない。

英国の負債と住宅ローンの延滞に関する最新統計は確かに、ぞっとさせられるものだ。ロンドンのコンサルティング会社キャピタル・エコノミクスは投資家向けリポートで、家計は「住宅ローンに関しては一段と苦境に陥っており」、「金利上昇の影響が今後完全に表れてくると、住宅ローンの延滞はさらに増加する公算が大きく、無担保の不良債権が再び増加する可能性がある」と分析した。

返済を継続できずに差し押さえを受けている住宅の数に、問題の前兆が見える。英国住宅金融貸付組合(CML)によると、今年1-6月期に金融機関が抵当流れ処分にした物件は1万4000件と、前年同期より3割増えた。

借金多い英国人

延滞件数もいい状況とは言えず、全体の1%に当たる推定12万5100件の返済が遅れている(CMLのデータ)。状況が改善されなければ、数カ月後にこうしたローンの対象となる住宅は差し押さえを受ける。英国の負債状況をより広範囲で見ても、慰めにはならない。英国立経済社会研究所(NIESR)のデータによると、個人所得に対する家計の負債の比率は英国が1.62と、米国の1.42や日本の1.36、ドイツの1.09を上回る。

英国も米国と同じ規模のサブプライム危機に直面している。英国で住宅ローンを申し込めば分かるが、銀行は多くの質問もせずに融資を決定する。英金融サービス機構(FSA)は先月、サブプライムセクターでの無謀な融資を批判し、「負担しきれない住宅ローンを承認する結果」をもたらしていると指摘した。

収入証明なし

英国の住宅ローンは、「プライム」と「サブプライム」をきちんと分類できない。大手金融機関の大半は、所得証明も求めずにローンを提供している。返済不履行の履歴のない「プライム」とされる借り手の多くは、返済が困難になるほどの住宅ローンを受ける可能性が高い。英国のサブプライム危機は米国よりもはるかに厄介になり得る。理由はこうだ。

まず、借り手がローンを背負えなくなる兆候が鮮明になっているにもかかわらず、住宅価格の高騰が持続していることだ。英住宅連盟が今週示した予測によると、国内住宅価格は今後5年で40%上昇し、平均価格は2012年までに 30万2400ポンド(約7200万円)に達する見通し。英国の平均住宅価格はすでに、平均所得の11倍となっており、この数字は上昇が続いている。

次は金利だ。米国の金利はピークに達して、間もなく低下するかもしれないが、英国ではそんなシナリオは描けない。イングランド銀行は少なくともあと1回利上げを実施し、政策金利を6%に引き上げる見込みだ。住宅価格や物価全般に利上げの影響が出てこなければ、金利は引き続き上昇する可能性がある。すでに返済に困窮する借り手にとっては、救いにならない。

住宅市場のサブプライム危機を終息させるには、2つの自動調整メカニズムが必要だろう。一つは住宅価格が静かに下落して不動産が買いやすくなるとともに、ローンの規模が縮小することだ。もう一つは、金利が安定または低下することでローンの返済を継続しやすくなることだ。

ただ、いずれも英国には当てはまりそうにない。金利は上昇し、住宅価格も上がっている。その結果、数千世帯が不安定な状況に置かれ、ローンを提供した銀行も同様の状況にある(こうしたローンを購入した投資家は言うまでもない)。

ただ立ち去るのみ

不動産価格が上昇している間は、誰もが安泰だろう。住宅価格がローン残高よりも高く評価されていれば、絶対に手放さないだろう。困った事態になれば、住宅を売ることができるし、ローンを返済してもっと安いところに引っ越すことも可能だ。

しかし、米国で露呈したように、住宅価格が下落し始めれば、その計算は成り立たなくなる。問題が生じた場合に物件を売却してローンを返すことは不可能であり、返済の継続を促す要因はほとんどない。ただ身を引いて、鍵と問題を住宅ローン会社に託すしかないのではないか。

英国はまだ、そうした状況には至っていない。だが、そうなった場合、米国よりもひどい混乱が生じかねない。(マシュー・リン)

(マシュー・リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:U.K.'s Subprime Crisis May Be Worse Than U.S.'s: Matthew Lynn(抜粋) {NXTW NSN JMFFDL1A1I4H <GO>}
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003001&sid=aK_FdQQc6v0c&refer=jp_commentary





●熱塩循環低下に伴う欧州寒冷化で北欧からスペインへの移民が殺到?スペインのバブルは弾けずユーロは安泰?
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/b09380b8b5fb285500eb652662e15b6f





●米国を上回るスペインの不動産バブルの破裂がユーロの信認に与える激震
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/8a9e00864259e978fca5c3f8c593efd7






【私のコメント】
サブプライム融資を発端とする米国の不動産バブル破裂が話題となっている。しかし、ブルームバーグの記事によれば、英国の不動産バブルは米国よりも深刻だという。その原因としては、1.不動産価格の上昇が継続していること、 2.金利上昇が継続していること、 3.金融機関の多くが所得証明なしに貸し出しを行うなど、返済能力の評価が不十分であること、等が挙げられている。

現在の世界的な過剰流動性が逆流し始めるならば、英国でも金融機関が貸し出し余力を失い、不動産バブルは急に蛇口を止められて破裂するだろう。更に、国際金融資本の本拠地であるロンドン金融街の繁栄に依存しきった英国経済は大手金融機関の相次ぐ破綻で大打撃を受け、大恐慌に突入する可能性が高いと思われる。

欧州諸国の中で不動産バブルが最も深刻なのはスペインである。ただ、2010年以降に太陽活動の低下に伴って欧州が寒冷化する可能性があり、スペインは寒冷化の打撃を受ける北欧諸国の住民の避難先として住宅需要が下支えされる可能性がある。英国は欧州寒冷化の打撃が最も大きい国の一つであり、住宅需要の下支えは存在しないだろう。

欧州経済で注目すべきことは、ドイツに不動産バブルが存在しないことである。このため、バブル崩壊による内需減少はドイツではほとんど起こらないと想像される。この点は日本も同様である。石油・天然ガスの輸出で蓄積した膨大な対外資産を有し、シベリア開発などの設備投資の高まりも想像されるロシア経済も成長を続けるだろう。近未来の世界では、恐慌の混乱の中でダメージの小さい日本・ドイツ・ロシアが経済的にも政治的にも急速に影響力を拡大すると想像される。英国は既に製造業を失い、北海油田も枯渇寸前であり、唯一繁栄している金融業も破綻がほぼ確実である。近未来の英国は英語だけが資産となり、ラテンアメリカとの言語的繋がりを有するスペインと同じ程度まで国際的影響力を低下させていくことになるだろう。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 旧樺太庁所在地の豊原の地名... | トップ | 円相場の行方:三分の二の法... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
異議あり!さんへ (蔵信芳樹)
2007-08-16 22:05:56
ブログ主さん失礼します。
保守系ブロガーの柳生すばるさんによれば三輪耀山さんは郵便局員らしいですよ。
返信する
それに対抗するアラブ派財界人 (江田島孔明のユダヤ官僚塾)
2007-08-17 14:12:26
http://my.shadow-city.jp/?eid=506154#comments
公式に円暴騰と世界恐慌と地震の警告が出ていたのに日本のマスコミは隠蔽したようですな。
DELLの社長を団長とするアラブ訪問団(反ユダヤ系財界人)は対応を取ったみたい。

知の巨塔とドルの終焉
投稿者: 日時: 2007年07月19日 13:50 | パーマリンク
http://www.teamrenzan.com/archives/writer/omnibus/iranoil.html

【特報】日本人視察団のアラブ訪問記
http://www.teamrenzan.com/archives/writer/mineyama/investigation.html
ユダヤ派マスコミ官僚とアラブ派財界 | 2007/08/17 2:08 PM
返信する

コメントを投稿