ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/06/10 歌舞伎座昼の部②「閻魔と政頼」

2007-06-12 23:45:08 | 観劇

染五郎の長男「藤間 齋 初お目見得」で親戚代表と高麗屋幸四郎に紹介されていた播磨屋吉右衛門(控え目にほとんどしゃべらずにニコニコ頭を下げているのがよかった)。構成・脚本を松貫四の筆名でした新作「閻魔と政頼」。「妹背山婦女庭訓 小松原~吉野川」でしっかり泣かされた後で、気持ちをほぐしてもらえるかと期待して観たら・・・・・・。
【閻魔と政頼(えんまとせいらい)】
狂言の「政頼」をもとにした松羽目物の舞踊劇。今回の配役は以下の通り。
閻魔大王=富十郎  鷹匠政頼=吉右衛門
赤鬼=歌六  青鬼=歌昇
あらすじは以下の通り。
揚幕からまず閻魔大王が登場して「地獄の一丁目に住まいする閻魔大王にて候」などと名乗りをあげる。最近は世の中が泰平になったし、人間たちも言葉巧みに言い逃れて極楽行きになる者が多くなってしまった。あらためて厳しい詮議をしようと決意を固め、赤鬼と青鬼を六道の辻に赴かせると、鷹匠の政頼がやってくる。主君の鷹を逃がしてしまい首を切られてしまい、途中で鷹と巡り会って一緒に連れてきたのだった。閻魔はに「鷹狩りで小さな獣や鳥を殺した殺生の罪」を問うが、「獲物を捕らえたのは鷹であって自分ではない」と弁明。やりとりの中で鷹狩りの由来を物語る長唄にのって政頼が舞う。閻魔が興味を示したのを幸い、鷹狩り体験をさせることになり、鬼どもを勢子にし、冥土の獲物を鷹がとってくる。その褒美になんでもやると約束した閻魔に頭上の冠を所望。ところがこれは駄目だという閻魔。政頼は腹を立てて鷹にとらせてしまう。冠をとられた閻魔は通力を失って右往左往。その隙に政頼は娑婆に戻ろうとし、閻魔と赤鬼・青鬼が「やるまいぞ」と追いかけて、幕。

富十郎が閻魔大王の衣裳に相当工夫したということをきいているがなるほどの拵え。発声も狂言を意識してさらに大きなお声で気合が入っている。学校がない週末は鷹之資くんも後見に出すということで、裃をつけて金色の観音像を持ってきたり、お茶を持ってきたりしている。
「えっ?鷹?鷹?」というところは鷹之資と顔を見合わせるという親馬鹿チャンリンお定まりのチャリも入れてある。初日近くでご覧になった方たちのレポよりもバージョンアップしているんじゃないかと思えるくらいの大きな声とオーバーアクション!
歌六の赤鬼・歌昇の青鬼コンビのぼやき漫才のチャリ場。最近の人間は白黒つけようと迫ると「ビミョー」と答えるというような当世のことばを盛り込んでいる。
吉右衛門も正月の初夢にひっかけて「一富士」と「三なすび」を自分で描いた裃をつけての登場。長唄にのっての軽妙な舞い。ところがこれが眠くなってしまった。大体私は長唄の高い声をきくと眠くなりやすい。鷹狩りの歴史を長唄で延々と歌われてもあまり面白くない。長唄は色っぽい内容の方がいい。吉右衛門の語りで説明してもらいたかったな。それだったら睡魔は寄り付かなかったんじゃないかな。

鷹狩りの実演も揚幕に鷹を投げ込む→獲物をつけた鷹の人形が投げ返されてくるという演出。狂言の方法を真似したらしいが、大きな劇場には不向きかも。また、獲物の鳥を鳥の丸焼きみたいにしたところはゲキ×シネ「アオドクロ」で鋼の鬼龍丸が火炎放射で焼き鳥をつくった場面を思い出してしまった(染五郎が出ていたし、もしかして同じ小道具屋さんで調達??)。それを「ムシャムシャ」「バリバリ」と狂言チックにかぶりつかれましても~(笑)
勢子の鬼さんたちもけっこうな人数が出てきても、動きもゆったりしているし、たいしたことがなかった。
吉右衛門と富十郎のおふたりとも頑張って弾けていただいているのだが、面白さはかなり中途半端な感じ。この中途半端さに2005年9月歌舞伎座の「東海道中膝栗毛」で富十郎・吉右衛門コンビで弥次さん喜多さんを観た時の感じを思い出した。まぁ、愛知万博閉幕直前の時局ネタだと大目にみたのだった。

まぁ、吉右衛門が次々と新作に取り組む意欲を応援していこうとは思っている。

さて、五月演舞場歌舞伎で「鬼平」を観て、アマゾンで買った本をちょうどこの頃に読み終わった(かしまし娘さんの記事で存在を知ってからずっと文庫オフをチェックしていたが在庫なしのままなので我慢できずに定価で買った(^^ゞ)。これはめちゃくちゃ面白い。おすすめである。

扶桑社文庫『「鬼平」を極める』 表紙デザインはこちら
写真はこの前の「妹背山婦女庭訓」のために設けた仮花道の揚幕。3階からは見えないので1階席まで観にいってやっと納得した。監事室隣に鳥屋がつくられていた。両花道を設けた舞台を初めて観た時にチェックするのを忘れて次は絶対確認しようと思っていて、今回ようやく確認できたのだった。
以下、この公演の別の演目の感想
6/10昼の部①「侠客春雨傘」染五郎長男の初お目見得
6/10昼の部③「吉野川」
6/26千穐楽夜の部①染五郎の「船弁慶」
6/26千穐楽夜の部②「盲長屋梅加賀鳶」
6/26千穐楽夜の部③絶品の「御浜御殿綱豊卿」
追記
辛口の感想になってしまっているが、五月の演舞場の「釣女」があまりにも面白かったのでどうしても喜劇どうしで比べてしまうのかもしれない。「閻魔と政頼」も練り上げての再演に期待したい。


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7 コメント

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結局、これ見ました! (玲小姐)
2007-06-13 21:49:53
朝が早い妹背山に行く根性もなく(爆)。・・・だって、息子が今日昼から説明会で、ちゃんとアイロンかけしてあげてたの。(こちらも親ばかでした!)

この幕と、オチビちゃんお目見えを見てしまいました。

ぴかちゅうさんとは逆で、長唄好きには、気持ちよかった演目でした。長唄、鳴り物が賑やかだから好きなのよね。

オチビちゃん、今日はお客様にバイバイをたくさんしながら引っ込みましたよ。なかなか舞台度胸があるじゃない。

染ちゃんで、助六見たいね!松嶋屋さん系の、「初花桜」ならやれるのでは?
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★玲小姐さま (ぴかちゅう)
2007-06-13 22:17:36
おっとニアミスですな。フレックスで早上がりして夜の部の「御浜御殿」を友人の娘さんと幕見してきました。大学入ってゼミで歌舞伎のレクチャーを受けた直後の初歌舞伎観劇だったので好奇心も最高潮で、仁左衛門さんの綱豊卿でしょう。すごく感激してくれました。大学でも演劇サークルに入ったようでその公演が近いからこの一幕だけで大学に戻っていきました。
そういう人だけにニザさまの台詞回しの妙に感じ入ってくれたんですよ。染五郎は知っているというので、さっきの助右衛門がそうだというと、気がつかなかったって。綱豊と助右衛門の緊迫の台詞のやりとり、ニザさまと染ちゃんがすごくよかった。染ちゃん、予想以上の出来でした。かなり見直しましたよ。
それと女の人(女方さんのこと!)が思ったより綺麗だったって。アジア人の成人の男女差の少ない身体についても説明。なんか大学の補講をしてあげちゃったな。
最近「勧進帳」をTVで観たけれどそれと全く違うって。だから歌舞伎といってもいろいろあるとしゃべって入門書の文庫本を貸し出しました。
帰ったら、そのためにバイトを休んでもらって業者さんの作業の立会いを頼んでいたのにちゃんとやってくれてない娘にガッカリ。肝心の午後に昼寝してて通り過ぎられてしまったらしい。明日は午前の時間帯にイレギュラーでやってもらうことを業者さんに頼まないといけない。同じ年の娘なのにと思ってしまうのでした(T-T)
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楽しみました (スキップ)
2007-06-14 01:51:52
ぴかちゅうさま
「妹背山」で涙しぼられた後、っていうのは同じでしたが、私はこの演目結構気楽に楽しみました。
それにしても富十郎さんの子煩悩(というか親バカ?)バージョンアップぶりはどうでしょう。

ところで、
> 綱豊と助右衛門の緊迫の台詞のやりとり、ニザさまと染ちゃんがすごくよかった。染ちゃん、予想以上の出来でした。かなり見直しましたよ。
私もあの場面好きでした。あの敷居を越えていくところなんて、染五郎さん大熱演でしたね。ぴかちゅうさんに見直していただいてよかった(^o^)丿
ご感想のアップ、楽しみにしています。
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★「地獄ごくらくdiary」のスキップさま (ぴかちゅう)
2007-06-14 22:01:37

TBも有難うございますm(_ _)m
獲物を焼き鳥にするところで「アオドクロ」を思い出したことを追記しておきました(読んでみて!)。ちょっとあれは染五郎つながりかしら。小道具が同じところから調達したの??って思って笑いそうになりました。でもちょっと違うだろうって(^^ゞ
「閻魔と政頼」は練り直しに賛同しま~す(^O^)/
「御浜御殿」の感想アップはもう少々お待ちくださいませ。染五郎、ちゃんと褒めますよ!!
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♪♪♪ (かしまし娘)
2007-07-03 12:40:18
ぴかちゅう様、まいど!
『「鬼平」を極める』
OH!読んでくれましたか!
文庫は手軽でイイんですが、友人から借りた「単行本」の方が
もっともっとズデギィィなんです。
鬼平が!なんてったってカラーだし。グフフ。

只今、時代劇専門chでは「鬼平犯科帳3」がOA中!
若かりし吉右衛門にアップアップしてま~す。

風邪ひいてヘロヘロだったのですが、
吉右衛門の新作に大拍手!
さっすが狂言が元になってるだけあって大爆笑~。
鬼もキュートだったし、
鷹も差し金ついてないってのが妙にツボにはまりました。
オチは忘れたけどね!(こら!) 

チビッコはそっちのけで
「梅玉&仁左衛門&吉右衛門」
私の愛する人がトリオでっっっ
スリーショットでっっっ
双眼鏡はそっちにズームイン(笑)
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私も (るるる)
2007-07-04 00:42:24
結構楽しみました。
こういう、気楽に拝見できそうな演目ってよいと思うのです。(^^v)
やっぱり鬼がかわゆい!!
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皆様、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2007-07-04 01:45:13

★かしまし娘さま
これを観た頃にちょうど、かしまし娘さんおすすめの『「鬼平」を極める』を読んでいたので、ご紹介させていただきました。めちゃくちゃ遅いご報告で恐縮です。TB&コメントさせていただきましたがコメント返しを有難うございますm(_ _)m
私はあの鷹狩の説明の長唄舞踊で寝てしまいました。あそこがキッチーの語りだったら絶対寝なかったです(ホントか?)!差し金ついてない鷹というのは狂言の手法が面白いのでそのまま使ったとかいうエピソードありのはず。どこかで読んだ記憶があります。
>チビッコはそっちのけで「梅玉&仁左衛門&吉右衛門」......「侠客春雨傘」の方ですね。そうそうそっちの方が私にも魅力的~(^^ゞ
風邪が早く治ることをお祈りしていま~すm(_ _)m
(注)かしまし娘さんの記事はお名前の欄をクリックすると読むことができます(^O^)/
★るるる様
吉右衛門さんは五月演舞場の「釣女」がもうよすぎてよすぎてそのイメージとの比較もしてしまうのかもしれません。そして私は竹本はいいのですが長唄が苦手なんですよ。あの高い声で何やら歌われると眠気が~。色っぽいシーンならまだ大丈夫なんですけどね(^^ゞ練り直されての再演を期待しています。
6月歌舞伎昼の部はなんといっても「妹背山」が素晴らしかったです。るるるさんの記事も下記にご紹介させていただきますm(_ _)m
http://ameblo.jp/kaechan/entry-10036245237.html
私も夜の部の「御浜御殿」のアップで完結します。なるべく早く書こうと思ってま~す(^O^)/
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