台風の近づく雨の中、自転車で娘と与野本町へ向かい、ランチ会に合流。彩の国シェイクスピア・シリーズ第23弾「じゃじゃ馬馴らし」千穐楽にご一緒する北西のキティさんの車に乗せてもらって劇場へ。地下の駐車場から劇場に入るのは初めてだったので、それもなんだか面白くウキウキ気分で入場。
オールメールシリーズではよく楽師隊として舞台出演もしているメンバーが舞台の扮装で演奏しているロビー。そこには「蜷川幸雄芸術監督に文化勲章が授与されます」というお知らせのパネルがあり、その周りにお祝いの花鉢がずらっと並んでいた。パネルが光らないようにするにはかなり斜めに撮らないといけなかったのだが、雰囲気はわかっていただけると思う。
その文面は公式サイトにあるこちらのニュースと同じ。
最後の3行がご本人の決意表明。
「キャスト・スタッフ、そして観客の皆さまに支えられて、走り続けることができました。この度の受章は、もう少し仕事をし続けろというメッセージと受け止め、今後も頑張りたいと思います。ありがとうございました。蜷川幸雄」
「走り続ける」「仕事をし続けろというメッセージ」という表現が、泳ぎ続けないと息ができなくて死んでしまう、大海を泳ぐマグロのようだという私の蜷川さんへのイメージをまたまた裏打ちしてくれている。身体はとうにズタボロのようなのに、ここまでハイレベルな仕事を続ける姿に敬意を表し、可能な限り観つづけようという思いを強くした。
次はネクスト・シアターの「美しきものの伝説」千穐楽のチケットGET済みだ。
稽古中の市川亀治郎と遭遇した話はこちらでもご報告したが、いよいよ舞台で亀治郎キャタリーナに会える!
旅の一座による芝居という劇中劇という設定なので、その役者たちが登場すると大きな帽子を目深に被った女形がいて亀ちゃんとわかるが、キャタリーナとしての登場までお預けというのが憎い。
そして登場しての髪型がスカーレット・オハラの娘時代のヴィヴィアン・リーのパロディのようなのだが、残念ながらこの髪型はあまり似合わなかった。しかしながら、ひねくれ者の「じゃじゃ馬娘」の心の動きを過剰に顔に出すのが可笑しく可愛い。
結婚してからのアップに結い上げた髪型は実によく似合い、ペトルーチオの調教で目を吊り上げた表情がしおしおし、反抗し、従順な妻としての態度をみせるようになっていくにつれ、大人の女の落ち着いた美しい表情に変わっていく。
しかしながら、台詞は夫に従順な妻のものになっていくのに、その生き生きとした表情からはそのように振る舞って実は夫を操縦している、したたかな女を感じ取った。「薩摩おごじょ」をはじめとして九州の女たちがそうだという話は聞いているのだが、そういう演出にぴったりの亀治郎の魅力炸裂という感じだった。
最後の従順な妻としての在り方を説く演説は、剣を振り回しながらの力強いもので、その所作は実に美しい。
床にグサッと刺して終わるのだが、芝居が終わって剣を抜いて退場する時には床の一部がはずれて一緒に袖にもっていかれた。これって今日だけ?いつもなの?
亀ちゃんキャタリーナが途中で立ち見得を切る場面もあり、「西太后」の藤間紫のタイトルロールの姿を彷彿とした。カーテンコールの最後に登場した、亀ちゃんは伏し目がちに進み出て舞台の前方で目を上げるという堂々とした立女形ぶり。
千穐楽は1階の後ろ席にいるはずの蜷川さん。今日は私たちの席の列の一番後ろのコーナーに増設のパイプ椅子に座っていた。正面の最後列には瑳川さんもいたし。カーテンコールの最中に姿を消すとちゃんと亀ちゃんに手を引かれて舞台に登場。
「NINAGAWA十二夜」で見つけた異色の女形芸をここまで生かして良妻の押し付け的ストーリーをここまで現代的味付けで演出した蜷川マジックに感嘆。二人の出会いが素晴らしい舞台を生み出した。それに立ち会えたことに感謝!