ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

ホルバイン ‐ ナショナル・ギャラリー(9)

2014年04月03日 |  ∟イギリスの美術館

 久し振りに、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの旅。
 今回は、ドイツ・ルネサンス期に活躍したハンス・ホルバイン(1497-1543 )、その彼の傑作、「大使たち」。

 向って左側が、使節としてロンドンに駐在するフランスの貴族で、棚の下段の地球儀には彼の城館があった土地ポリシーが、右手の短剣のきらびやかな鞘には29歳と年齢が記されている。
 右手は彼の友人、数年前にラヴォ‐ルの司教となった同国人の古典学者で、25歳という年齢が記された本に右肘を載せている。

 衣A_4装や姿勢や態度からふたりの友人は、それぞれ活動的人生と瞑想的人生、相互に競い合う関係を代表しているらしいのだが、ことほど随所に多くの示唆が描き込まれているという。

 例えば、中央の飾り棚には、微細に描写されたトルコ絨毯の上の天球儀、円筒形のカレンダー、ふたつの時間を指している多面体の円盤、ドイツ語の商人用算術の教本、音楽に対する教養を示すリュートなど、彼らの広範な趣味の対象、すなわち当時の文化の見取り図として、実に様々なものがごちゃごちゃと描き込まれているのである。

 特筆すべきは、ウェストミンスター寺院にある床を写したとされるモザイクの床の真ん中、奇妙な形が横たわっている。
 なんとそれは頭蓋骨、巧みに歪められていてカンヴァスの端の位置から視たときにのみ、本来の形を認めることができる。

 いB_6わゆるトロンプ・ルイユ(だまし絵)、室内の壁や天井に窓や柱がいかにも実際にあるように描き込む技法とされ、欧州では古典的な建物にも多様される装飾法らしいのだが、この絵においてはいろいろな意味があるようだ。

 その一説に、“ メメント・モリ = 死を想え ” という標語を示した典型ともされている。
 また、五感で知覚される現実も、正しく眺められてはじめてその意味が完全に明らかになることを示唆し、事物の現世的な外観を正面から見て頷くだけでは充分じゃないよと言うことのようだ。

 で、鑑賞者はこの絵の前に来ると、ひととおりはキャンバスの端に立って覘きこみ、そして、頷きつつも苦笑いを浮かべていたっけ。

 ペトロ とカタリナ はどうしたって? 勿論、端に立って眺めましたとも、いやはや。
 そのトロンプ・ルイユ、その巧みさには感心させられるので、美しいもンじゃないが参考までにアップする。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.789

 ※ ロンドン・ナショナル・ギャラリーの旅(8)へは(コチラ)から入れます。

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1 コメント

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へぇ~、なるほどそうですか。 (sakura)
2014-04-10 23:47:23
へぇ~、なるほどそうですか。
床の羽のような物は何かしらと思っていたのです。思わずパソコンの下から覗いてみましたが、暗くなってダメでした。だまし絵なのですね。よくわかりました。
SAKURA[E:cherryblossom]
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