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No161「空中庭園」豊田利晃監督

最初のタイトルが出てくるまで、
キッチンの真上の蛍光灯の傘ごしに、俯瞰で食卓をうつしていく、
カメラのゆるやかな動きに吸い込まれた。
家族が順に現れ、朝食をとり、何気ない会話をかわす。
皆が出かけると、今度は、ふりこが揺れるように、ゆっくりと
バスに乗っている夫(板尾創路)、娘(鈴木杏)、息子(広田雅裕)をうつしだし、
走っていくバスの天井をうつす。
明るい朝の光の中、何を考えているのかわからない家族の姿が示される。

「家族の間では秘密をつくらない」という絵里子(小泉今日子)が決めたルールを守る京橋家。
分譲マンションのベランダには絵里子の世話する花々が咲き乱れ、
幸せで平和に見える家族。
しかし、夫には、愛人がいて・・・と、それぞれの秘密の存在が明らかになっていく。

人の心の中に、光と闇があるとすれば、
絵里子が、光の部分を信じて、大切につくりあげた家族が、
ちょうど毛糸玉がほどけていくように、
それぞれが持つ闇の力、得体の知れなさでもって、ばらばらになっていく。
この闇の部分を、「秘密」の力と言い換えることもできる。

夫や子どもたちは、家族がばらばらなことなど、とうにわかっていて、
絵里子に期待された役割を演じているにすぎない。
そんなどこか冷めた感じがいい。

絵里子と、同じ街に住んでいる絵里子の母(大楠道代)の
パワフルな存在感が映画をひっぱっていく。
かなりシュールな世界だ。
誕生日のケーキを前に、
小泉と大楠が向かい合い、本音をぶつけあう姿を
カメラが二人のまわりを回りながら、長回しで撮り続けるシーンの迫力はすごかった。
絵里子の抱えている感情のもやもやが、はちきれそうになって、
とうとうはじけてしまうのが伝わる。

クライマックスの血の雨のシーンのあと、
窓からほろっと風に乗って入ってくる花びらに心ひかれた。
呪縛からの解放。

小泉がそんなに叫ばなくても、十分伝わる、という気はしたが、
女優、小泉今日子の魅力をたっぷり堪能できる作品。

満足度 ★★★★★★★(星10個で満点)
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
 
 
満点 (kimion20002000)
2006-03-23 00:13:49
TBありがとう。

満点ですか。いいと思いますね。

最初のシーン。バビロンの塔の図像のアップなんだけど、ずーとカメラでなめていって、ああランプシェードで食卓の上かとわかる、あの入り方とてもよかったですね。
 
 
 
kimonさんへ (パラリン)
2006-03-27 22:48:13
コメントありがとうございます。

冒頭のカメラといい、

キョンキョンと大楠がケーキをはさんで向かい合うバトルといい、忘れがたいです。



なんだか、日常の垢というか、

普段、決して表には出さない、負の部分を

上手に映像化していたような気がして、

やはりみごとな作品でした。
 
 
 
はじめまして (kira)
2007-05-31 09:08:18
kimion20002000さんのところから跳んできました。

>そんなに叫ばなくても、十分伝わる、という気はしたが
ちょっとチカラが入ってたシーンでしたね。
失った何十年かの自分に向けた、
赤子に戻った叫びのようでした。
TBさせて下さいね♪
 
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