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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

2月18日・ラーマクリシュナの力

2024-02-18 | 思想
2月18日は、サッカーのファンタジスタ、ロベルト・バッジョが生まれた日(1967年)だが、宗教家、ラーマクリシュナの誕生日でもある。

ラーマクリシュナこと、ガダーダル・チャテルジーは、1836年、インド、ベンガル地方のカーマールプクル村で生まれた。村には農家、鍛冶屋など低い階層のカーストが多かったが、ガダーダルの家は村内唯一のバラモン階級で、父親は宗教的儀式をとりおこなう僧侶だった。ただし、家は貧しく、ガダーダルは6人きょうだいの末っ子だった。
彼が生まれる前、両親はともに神の子が誕生する予知夢を見ていた。
ガダーダルは幼少時から記憶力抜群で、いちど聞いた歌や劇はすべて覚えてしまった。
彼は6歳のころから、神秘体験をするようになった。田んぼのなかを歩いたり、劇を演じたりしている最中に、急に意識を失って倒れる。そして、陶然とした状態のなかで、美しい景色が目の前に現れ、幸福感いっぱいになるのだった。
16歳でガダーダルは、年の離れた長兄のいるコルカタ(カルカッタ)へ上京し、19歳のときにコルカタ郊外のダクシュネーシュヴァラ寺院の僧侶となった。
彼はその寺院でも、意識を失った神秘体験の三昧境「サマーディ」にひたり、そのなかでカーリー女神を見た。こうした神秘体験が頻繁になり、彼が意識を失ってしまうので、寺院の仕事ができなくなったが、それは黙認された。周囲の評価は「彼は頭がおかしい」と「彼は神の化身だ」とに真っ二つに分かれた。
さまざまな行者が寺院を訪れ、ガダーダルに面会したが、行者たちのことごとくが、
「この人こそは神の化身である」
と認めた。そうして、ガダーダルは聖人として人々に知られるようになった。
25歳からガダーダルはタントラ派の修行をはじめ、本来は時間がかかる困難な修行をつぎつぎに修め、瞑想を重ねて、しだいに高く深い境地へ昇り、ついに、
「ブラフマン(梵天・宇宙の根本原理)はアートマン(個物の生命の本体)とひとつである」
という梵我一如の思想に達した。
ガダーダルは「ラーマクリシュナ」という出家名を授けられた。この名前は、インドの神「ラーマ」と「クリシュナ」を合わせたものである。
ラーマクリシュナは、ヒンドゥー教だけでなく、イスラム教やキリスト教、仏教をも学び、宗教はみな同じ、すべての神と宗教はひとつに帰すると説いた。
ラーマクリシュナの名声はしだいに高まり、彼の教えを受けるために多くの人が集まってくるようになった。ラーマクリシュナは、1886年8月、喉頭ガンのため、コシポルで没した。50歳だった。彼の死後、愛弟子のヴィヴェーカーナンダがインド国内や世界各国にラーマクリシュナの教えを広めた。

「人はもしさとりたいと思えば神をさとることができるのだが、彼は狂ったように『女と金』の楽しみを求める」(堀内みどり『ラーマクリシュナ』清水書院)

「人はある務めをするために生まれてくる」(同前)

そう言ったラーマクリシュナは、人にちょっと触れるだけでその人の考えを変えてしまう不思議な力をもっていた。彼に触れられて、たちまち意識を失いサマーディに入り、神の姿を目の当たりにする者もかなりいたらしい。ぜひ、一度触ってもらいたかった。
(2024年2月18日)



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