9月30日は『ティファニーで朝食を』を書いたトルーマン・カポーティが生まれた日(1924年)だが、高級ブランド「ダンヒル」の創始者アルフレッド・ダンヒルの誕生日でもある。
アルフレッド・ダンヒルは、1872年、英国イングランドのミドルセックスで生まれた。
父親は馬具製作販売をする店の経営者で、アルフレッドは5人きょうだいの2番目だった。
プライベート・スクールや家庭教師に学んでいたアルフレッドは、15歳のころ、父親の店の徒弟見習いになった。21歳で父親の跡を継ぎ、馬具のほか、自動車の付属品も扱いはじめ、高級なクルマ関連製品を豊富にそろえ、通信販売もおこなった。
30歳のとき、富裕層や運転手向けの服、装身具を売る店を開き、32歳でパイプなど喫煙具の製造販売の乗りだした。そして、自動車や自転車を運転しながらでも吸えるウィンドシールドパイプを発売した。
35歳のとき、ロンドンの名門店が並ぶデュークストリートに、小さなタバコ店をオープンし、パイプなど喫煙具を販売するとともに、顧客の好みに合わせてタバコの葉を調合し、その人だけのオリジナル・ブレンドとして売る商売をはじめ、店はおおいににぎわった。
彼が40歳のころ、パイプにダンヒルのトレードマークを入れるようになり、革製品、万年筆、化粧品など、ダンヒルは製造販売する商品の幅を広げながら、そのトレードマークとパテント(特許権)によって大きな利益をあげ、輸出もはじめ、米ニューヨークや仏パリにも店を出した。王室ご用達商人となったのは、ダンヒルが49歳のことで、彼が52歳のとき、片手で操作できる世界初のライターを発売した。
53歳のとき、ロイヤル・ソサエティ・オブ・アーツのフェローに選ばれた彼は、56歳のとき、健康上の理由から、事業を息子に手渡して引退した。
引退すると、彼は妻と離れて、永年つきあってきた30歳年下の愛人と連れ添い、英仏海峡に面したウェスト・サセックスのリゾート地、ワージングへ引っ越していった。
最高級品の代名詞とも言える世界的ブランド「ダンヒル」を一代で築きあげたダンヒルは、1959年1月、ワージングの老人ホームで没した。86歳だった。
ライターやパイプなど喫煙具ならば、やはりダンヒルが最高峰という印象はある。
生活必需品の対極にある、なくても困らないぜいたく品の最たるもので、でも、どうしてもそれが欲しくなる高級品。それがダンヒルである。
ただし、製品のクオリティーは高く、ダンヒル製品の品質管理のきびしさは有名である。
それにしても、馬具、クルマ関連製品、紳士服、タバコ、喫煙具、装身具、と変化してきたビジネスは興味深い。「ダンヒル」ブランドは、英国の伝統の印象をその後ろに背負っているから、威厳があり、高級感がある。
ブランドの価値を強めるためには、その背景にある文化の印象を上手に受け継ぐことが重要であり、その価値を壊さないよう、へたに商品ジャンルを広げないことが大切だと、ダンヒルの戦略は教えてくれる。
ダンヒルは言っている。
「Give a man a pipe he can smoke, Give a man a book he can read, And his home is bright with a calm delight, Though the room be poor indeed.(彼に一服吸えるパイプを与えたまえ。彼に読める一冊の本を与えたまえ。すると、彼の家は明るくなり、おだやかな喜びに満たされるだろう。たとえその部屋が実際にはみすぼらしくとも)」(RightAttitudes.com)
(2022年9月30日)
●おすすめの電子書籍!
『ブランドを創った人たち』(原鏡介)
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https://www.meikyosha.jp
アルフレッド・ダンヒルは、1872年、英国イングランドのミドルセックスで生まれた。
父親は馬具製作販売をする店の経営者で、アルフレッドは5人きょうだいの2番目だった。
プライベート・スクールや家庭教師に学んでいたアルフレッドは、15歳のころ、父親の店の徒弟見習いになった。21歳で父親の跡を継ぎ、馬具のほか、自動車の付属品も扱いはじめ、高級なクルマ関連製品を豊富にそろえ、通信販売もおこなった。
30歳のとき、富裕層や運転手向けの服、装身具を売る店を開き、32歳でパイプなど喫煙具の製造販売の乗りだした。そして、自動車や自転車を運転しながらでも吸えるウィンドシールドパイプを発売した。
35歳のとき、ロンドンの名門店が並ぶデュークストリートに、小さなタバコ店をオープンし、パイプなど喫煙具を販売するとともに、顧客の好みに合わせてタバコの葉を調合し、その人だけのオリジナル・ブレンドとして売る商売をはじめ、店はおおいににぎわった。
彼が40歳のころ、パイプにダンヒルのトレードマークを入れるようになり、革製品、万年筆、化粧品など、ダンヒルは製造販売する商品の幅を広げながら、そのトレードマークとパテント(特許権)によって大きな利益をあげ、輸出もはじめ、米ニューヨークや仏パリにも店を出した。王室ご用達商人となったのは、ダンヒルが49歳のことで、彼が52歳のとき、片手で操作できる世界初のライターを発売した。
53歳のとき、ロイヤル・ソサエティ・オブ・アーツのフェローに選ばれた彼は、56歳のとき、健康上の理由から、事業を息子に手渡して引退した。
引退すると、彼は妻と離れて、永年つきあってきた30歳年下の愛人と連れ添い、英仏海峡に面したウェスト・サセックスのリゾート地、ワージングへ引っ越していった。
最高級品の代名詞とも言える世界的ブランド「ダンヒル」を一代で築きあげたダンヒルは、1959年1月、ワージングの老人ホームで没した。86歳だった。
ライターやパイプなど喫煙具ならば、やはりダンヒルが最高峰という印象はある。
生活必需品の対極にある、なくても困らないぜいたく品の最たるもので、でも、どうしてもそれが欲しくなる高級品。それがダンヒルである。
ただし、製品のクオリティーは高く、ダンヒル製品の品質管理のきびしさは有名である。
それにしても、馬具、クルマ関連製品、紳士服、タバコ、喫煙具、装身具、と変化してきたビジネスは興味深い。「ダンヒル」ブランドは、英国の伝統の印象をその後ろに背負っているから、威厳があり、高級感がある。
ブランドの価値を強めるためには、その背景にある文化の印象を上手に受け継ぐことが重要であり、その価値を壊さないよう、へたに商品ジャンルを広げないことが大切だと、ダンヒルの戦略は教えてくれる。
ダンヒルは言っている。
「Give a man a pipe he can smoke, Give a man a book he can read, And his home is bright with a calm delight, Though the room be poor indeed.(彼に一服吸えるパイプを与えたまえ。彼に読める一冊の本を与えたまえ。すると、彼の家は明るくなり、おだやかな喜びに満たされるだろう。たとえその部屋が実際にはみすぼらしくとも)」(RightAttitudes.com)
(2022年9月30日)
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