1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

6月10日・クールベの衝撃

2014-06-10 | 美術
6月10日は、時の記念日。大化の改新で有名な天智天皇が、671年にはじめて水時計を設置して、鐘を打って時を知らせたのがこの日だそうだが、この日はまた、画家、ギュスターヴ・クールベの誕生日でもある。
自分は中学生のころから、画集でクールベの絵を見ていて、ずっとファンである。

ギュスターヴ・クールベは、1819年、フランスの、スイス国境に近いオルナンで生まれた。裕福な地主の家系だった。
12歳ごろからデッサンを学びだしたギュスターヴは、18歳のころ、学業のかたわら、画家に弟子入りして絵画を勉強した。
父親は、彼に法律家になってほしいと望んでいて、ギュスターヴは21歳のとき、パリに出て大学で法律学の学生になったが、画家志望の気持ちは抑えがたく、名画の模写にはげみ、絵画の勉強に没頭した。
25歳で「黒い犬を連れた自画像」。
32歳で「オルナンの埋葬」を発表。
36歳のとき、大作「画家のアトリエ」を描き上げたが、パリ万国博覧会に出品するつもりだったこの作品が落選してしまい、クールベは急きょ、博覧会会場のそばで入場料1フランの個展を開いた。それ以前には個人展覧会は存在せず、これが世界最初の個展と言われる。
1870年、51歳のときには、パリ・コミューンの反乱に参加し、投獄された。
54歳のとき、スイスに亡命し、1877年12月、スイスで没した。58歳だった。

クールベが26歳で描いた自画像「絶望」を見ると、ひげをたくわえた映画俳優ジョニー・デップそっくりで驚く。

クールベのリアリズムの絵画は、生々しくて、ほかの写実的な絵画とはまったく異質のものである。しかも、そこには見た者の胸を揺さぶらずにおかない強烈なメッセージ性がある。
たとえば、「画家のアトリエ」は、広いアトリエのまん中で、画家がすわって風景画に筆を入れていて、すぐその後ろに、裸のモデルが立って見守っている。彼らの右側にも左側にも、おおぜいの人々が立っているのだけれど、右側の人たちと、左側の人たちとは、明らかにちがっている。クールベによれば、右側は友人や労働者、芸術界の愛好家たちで、左側は民衆、悲惨、貧困、富、搾取者、被搾取者など、野卑な生活に住む人たちなのだそうだ。
49歳のときに描かれた「世界の起源」は、裸の女性モデルが脚を広げた陰部をアップで写実的に描いた作品で、これなどは、現代人が見てもなお衝撃的だと思う。
クールベ、いいなあ、と。
(2014年6月10日)



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