1日1話・話題の燃料

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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

1月3日・トールキンの指輪

2017-01-03 | 文学
1月3日は、「五人目のビートルズ」ジョージ・マーティンが生まれた日(1926年)だが、言語学者で作家のJ・R・R・トールキンの誕生日でもある。

ジョン・ロナルド・ロウエル・トールキンは、1892年、南アフリカで生まれた。父親は、銀行の支店長だった。ジョンは3歳のとき、彼は母に連れられて英国へ里帰りした。父親もすぐに英国へ来る予定だったが、リウマチ熱のために南アフリカで急死した。それで、ジョンと母親は、英国にいる母親の両親のもとにとどまることになった。
母親は、家でトールキンに植物学について教え、トールキンも植物のスケッチをするのが好きだったという。でも、彼がいちばん興味があったのは語学で、5歳か6歳のころには、ラテン語がすらすら書けたという。
トールキンが12歳のとき、母親が急性の糖尿病で亡くなり、彼はカトリックの牧師に預けられた。
オクスフォード大学に進んだトールキンは、大学卒業後、第一次大戦に従軍した。フランスの激戦地ソンムの戦闘で、塹壕熱のため病院に長期入院した後、除隊した。
戦後、トールキンはオクスフォード大学で言語学の教授を務め、言語学研究のかたわら、豊富な民間伝承や妖精物語についての蘊蓄(うんちく)の上に独自の世界観を構築した物語を40代のころから書き出した。45歳のころ、ファンタジー小説『ホビットの冒険』を発表。さらに書きつづけて62歳のとき大長編ファンタジー『指輪物語』を発表した。
そのほか『シルマリルの物語』『星をのんだかじや』などを書いた後、トールキンは1973年9月、ボーンマスで没した。81歳だった。

トールキンは、英語の最大の辞典「オクスフォード英語辞典(OED)」の編集にかかわっていた。とくに「W」の項の語を担当したという。

『指輪物語』は、拙著『名作英語の名文句』でも取り上げた。この小説は、トールキンが研究していた学問的能力のすべてを注ぎ込んで、架空の歴史、架空の言語をもった架空の国の話を、ゼロから作り上げて創造して見せた人工世界である。もともと子ども向きの読み物として『ホビットの冒険』を書いたところが、大人のたちが多く読み、ぜひ続編をとの要請がくるほどの人気になり、そうやってせっつかれて書き上げたのが大作『指輪物語』である。ヨーロッパはもちろん、アメリカにも熱狂的な読者が生まれ、彼を学者としてでなく、ファンタジー小説家として支持する人が多いのに、彼自身当惑していたらしい。今日、彼の作品は、20世紀でもっとも人気の高い小説のひとつとされている。

トールキンの成功があって「ハリー・ポッター」「ドラゴンボール」「ワンピース」などの子孫たちがある。
それにしても、完全に独立した歴史、言語体系をもつ人工世界を構築しようと考える、その希望は理解できるとしても、それを実行しようとするのは正気の沙汰ではない。
トールキンという人は、ものすごい知力と、ものすごい体力をもった人だった。
(2017年1月3日)


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