八咫烏の声

神社の行事、社務などの日記です。

楽器について

2010年08月14日 14時05分30秒 | 神社の音楽

そろそろUターンラッシュも始まる頃・・・でしょうか?

こんにちわUターンラッシュ全く関係ナシ、インドア派・I権禰宜です。

さて、これまで神社の音楽を何度か紹介しましたが、今回から個別に楽器を御紹介します。

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まず一番初めに御紹介する楽器は「篳篥(ひちりき)」です。

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篳篥はウイグル地方発祥の楽器で、所謂「たて笛」です。雅楽の合奏においては主に主旋律を担い、「地に在る人の声を表わす」とされる雅楽器で、雅楽における主役楽器とでもいいましょうか。

この篳篥、舌(リード部分)を用いて音を発する楽器で、上の写真ではちょうど右側の肌色部位が舌(リード)にあたります。

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音の出し方は、風船を膨らますような要領で息を送り込むと、外見からは想像もできない様な、大きく力強い音を発します。同じ指使いで連続的に音程・音色を変化させる「塩梅(えんばい)」という特徴的な演奏方法を行いますが、吹きこなすは中々大変。慣れていなければ音を出すだけで一苦労です。

ちなみに私は音を出すだけで精いっぱい(笑)かの清少納言「下手くその篳篥の音はクツワムシの鳴き声の様に聞き苦しい」と語るほど・・・。

その一方で、篳篥の名手が吹くとそれは素晴らしい音色を奏で、こんなエピソードが伝わります。

平安時代に用光(もちみつ)という官人が瀬戸内で海賊に襲われ、今生の名残に篳篥を吹いたところ、その調に感動した海賊は改心し用光は解放される事ができました。さらにそれだけでなく、再び自分達の様な海賊に襲われる事が無い様に護衛まで買って出る始末。こうして用光一行は無事に航路を進む事が出来たのでした。これに由来して用光が吹いた篳篥は「海賊丸」と呼ばれるようになり、篳篥の銘器として後世にその名を残しています。

また同じく平安時代の博雅三位(はくがのさんみ)という皇孫は、ある日邸宅を盗賊に襲われてしまいます。自身こそ物陰に隠れ難を逃れましたが、盗賊達が去った邸宅は家財道具一切を奪われるなど散々な状態となっていました。博雅は嘆きつつも、僅かに残された愛用の篳篥を見つけると、無情な気持ちでこれを吹き始めます。するとどうでしょう、先刻押し入った盗賊どもが感涙にむせびながら盗品を返しに来たという事です。

海賊や盗賊を改心・・・とまではいきませんが、せめて清少納言に睨まれないぐらいの腕前にいつかなりたいI権禰宜でした。