仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

喜劇・泥棒大家族 天下を盗る

2017年05月11日 | ムービー
『喜劇・泥棒大家族 天下を盗る』(1972年/坪島孝監督)を見た。
物語は、「昭和47(1972)年、閉山した筑豊炭田。賑やかだった炭住長屋は、すっかり過疎の村になっていたのだが、その中に、カラーテレビや電子レンジ、ルームエアコンなどの電化製品を買い揃えている長屋があった。実はこの村は、密かに泥棒村と呼ばれていた。村民二百余人はすべて血縁で結ばれ、その前科は締めて309犯。年に2億円の荒稼ぎを誇る日本一の大万引き集団なのだったが・・・」という内容。
なんとこれは実話を基にした物語で、原作は『東京新聞』に連載されていた「こちら特報部~泥棒村潜入記」(加藤延之記者)という記事なのだそうである。
長屋に住んでいる人達は皆、生活保護を受けているのだそうだが、小学4年生の谷川ノボル(石井聖孝)君の作文で、「ぼくの村は福岡からバスで2時間。昔は黒ダイヤで賑わいました。みんな古い炭住長屋に住んでいますが、冷蔵庫、カラーテレビ、ルームクーラーなどがあるので、家庭訪問の先生は驚きます」などと紹介されているのが笑える。
しかし、民生委員の桜田(桜井センリ)と新しく赴任してきた藤山巡査(米倉斉加年)が家を訪ねようとすると、スイッチ一つで歌舞伎舞台のどんでん返しのように、豪華な室内が貧乏くさい様子にあっという間に変わってしまう。
こういった仕組みが実際にあったかどうかは分からないが、テレビアニメ『ルパン三世』の第20話「ニセルパンを捕えろ!」(1972年3月5日)に似たような演出があったことを覚えていたので、これは当時(1972年)大きな話題になっていた出来事だったのかもしれないと思った。
猪狩時之助(前科20犯/植木等)を親分とする"万引集団・勝ケ瀬グループ"は、長女の猪狩冬子(前科7犯/山東昭子)と夫・門次郎(前科6犯/谷啓)、次女の横川春子(前科8犯/太地喜和子)と夫・長一(犬塚弘)、そして妹アケミ(八並映子)に時之助の世話をさせることでNo,2の座を得た流れ者の馬上千吉(前科13犯/藤田まこと)らが幹部として、東京、大阪、仙台、新潟、福岡と渡り歩く"航海"(デパートを巡る万引き旅行)を仕切っていたのだが、谷川昇作(前科8犯/なべおさみ)、大岡明男(阿藤海)、小西恒夫(小松政夫)ら猪狩と縁戚関係にない若者たちは自分たちの待遇に不満を持っており、三吉(小沢直平)とヨシ子(本田みちこ)の2人は東京の滞在費を盗んで逃げ出すし、その後「いつまでも下積みなんかやってられんぞ」とクーデターも勃発する始末。
成功するか失敗するかは別として、いつの世も、どんな世界でも、溜まった不平不満は暴動として爆発するものなのだろう。
(^_^)
新入り・草田進(岸部シロー)の教育係になった三女・大鹿夏子(江夏夕子)には、まだ前科がついていなかったものの、まぁこれも時間の問題のようだった。
(^_^;)
ただ、四女・秋子(紀比呂子)だけは村を離れてスチュワーデスをしていて、婚約したデパート社員・白川譲二(峰岸徹)を連れて帰省した際には、彼らの悪徳弁護士・大門米太郎(藤村有弘)のおかげで泥棒村の秘密がばれそうになる。
また、東京の旅館では「本日の成果、896万円!!」などと大騒ぎをしている時、女中さん(塩沢とき)に「まぁ、呉服屋の仕入れって大変ですのね」となどと言われたように、ばれないよう秘密を隠し続けるのも大変なようだった。
何にしても実話を基にしているというのが凄い。

喜劇 昨日の敵は今日も敵

2016年09月27日 | ムービー
『喜劇 昨日の敵は今日も敵』(1971年/前田陽一監督)を見た。
物語は、「城南大学の応援団長・鍋山修(なべおさみ)は、軟弱な軽音楽部ハッスルズのヤスオ(田辺靖雄)らを毛嫌いしていたが、新入団員にと思った逆田正章(堺正章)がハッスルズに入ってしまい、ますます腹を立てていた。しばらく経って、丸田(小松政夫)、ひげ(朝倉宏二)ら応援団員全員は練習を兼ねたボーイのアルバイトのために箱根のホテルに出掛けたが、バンド演奏のアルバイトに来たハッスルズの面々と鉢合わせをして一悶着。さらに、湖畔でさゆり(范文雀)率いる西北大学空手部の女性達と揉めて長田巡査(いかりや長介)に取り調べされたり、鍋山にはさっぱり良いことがなかったのだが、大学のOBだという客の五十嵐伸介(平田昭彦)、佐藤栄(大泉滉)、池田隼夫と意気投合する。一方、逆田は彼らの連れのひとみ(紀比呂子)に夢中になってしまい・・・」という内容。
素性も分からないのに、五十嵐という男の(たぶん)見た目だけで大宴会の予約を受けてしまうホテルの藤山支配人(藤村有弘)。
翌日になって警察に相談したところで後の祭りだろう。
おそらく莫大な額になる宴会料金の回収などはできやしないはずだ。
「ここに泊まっているすべての人を招待する」だなんて、何かおかしいと思わないのかね。
(^_^;)
そして、大学の先輩だというだけですっかり五十嵐を信用してしまう鍋山。
"自称同窓生"というだけなのにマッタク困ったものなのだが、これは五十嵐という男を演じているのが、平田昭彦という俳優であることがミソだ。
きっと観客も、見ていて何故かうさん臭さを感じないことだろう。
俳優のイメージというのはそれだけで、作品の演出に(良くも悪くも)影響を与えるものなのだなぁと思った。
(^_^)