二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

「4月25日橋」内藤さゆり写真集(桃青社2009年刊)をめぐって

2017年11月21日 | 写真集、画集など
(たまたまBOOK OFFで見かけお安く手に入れることができた)



以前から何となく気になっていた写真集を手に入れた。
「4月25日橋」とはおかしなタイトルだなあ・・・と思っていた。ところが店頭で立ち読みしていたら、あとがきでリスボンはテージョ川に架かる「しがつにじゅうごにちばし」という、橋の名と書かれてあった。
表紙はこの橋のある風景が使われている。
河口付近にある大きな赤い吊り橋。1974年4月25日に、流血なきカーネション革命なるものが起こり、それを記念するため、こういう名称に変更されたとのこと。

ようやく腑に落ちたので、買うことになった(^ー^)
ここに収められた写真にはまったく人が写っていない。
点景人物すら存在しない。
光と影が、永遠に通じるようなしじまを、視る者につたえてくる。
不満といえば、そこが不満。
なぜだろうとかんがえながらWebを調べていたら、内藤さんご自身のつぎのようなコメントがあった。

《私は、撮影するとき、常に「街のポートレート」を撮るつもりでシャッターを切っています。スナップのように、その場を通り過ぎる一瞬を撮るのではなく、一枚一枚とじっくり向き合い、静かに目の前の表情を写す。》
《これまでに、いくつもの街を訪れ、それぞれに趣の違う作品を撮影してきました。しかし、すべてに共通していることがあります。それは、どの写真からも、人が写っていないのに、そこに暮らす人の気配を感じさせるよう構成しているということです。

カメラを構えたとき、もし、その場に人がいたら、私は、その人が通り過ぎるのをずっと待っています。そして、その人が去り、かすかに気配が残るうちに、その光景を写し止める。人がいなくても、人の気配を残す風景。そこに、私は大きな魅力を感じるのです。》

ほおお、そうでしたか!
つまり彼女自身のコンセプトというか、とても意識的に人物を排除しているのである。
http://www.tosei-sha.jp/TOSEI-NEW-HP/html/PUBLICATIONS/PHOTOBOOKS/j_4-25.html








なるほどと気むずかしいわたしも納得(笑)。
いったいリスボンに何日滞在したのだろう?
使用した機材も気にかかる。ハッセルかな?
ググってみたけれど、いまのところ、その種の情報を見つけることができない。

わたしもフィルムで撮影する場合、人物のいないスナップがとても多い。それは機材の不自由さとどこかかかわっている。現代はカルティエ=ブレッソンの時代とは違う。
そういうことまでかんがえてしまった。





エアリーフォトというほどではないが、露出はオーバー気味にコントロールされている。一瞬、一瞬のその場の光がとろけるように美しく、それは視神経に祝福された光景としてそこに存在する。
つまり、こういう光景と出会い、それをわがものとする。そのためにリスボンまでいったのだろう。
他人が注意を向けないような片隅のとらえ方が、女性的でナイーヴ(^^♪
そういったカットが目立つ。

記憶にのこるステキな写真集である♪

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