鼠丼

神の言葉を鼠が語る

<794> 230614 隣の婆さんは戻ってこない

2023-06-14 19:59:40 | 日記

 毎度!ねずみだ。

 先日、会社から戻ると近所に消防車が停まっている。近所のアパートで非常ベルが鳴って誰かが通報したらしい。近所の駐在さんも自転車で駆けつけているようだ。私が家に戻った時にはすでに非常ベルは鳴りやんでいた。アパートの大家が飼っている犬はいつまでもわんわん吠えていて、野次馬がちらほら居る。
 時間は夜の8時頃。うちの奥さんが隣の家のドアの所に立って、中の住人と話していた。

 そうこうしているうちにアパートの大家が「すみませんどうも誰かがいたずらしたか誤動作したようで・・・」とかなんとか言って頭を下げながら話しかけてきた。

 まあ、非常ベルの件はどうでも良い。

 隣には94歳になる老婆が独居している。

 月曜から土曜まで近所のデイサービスが送り迎えをしているが、夜は一人である。私が東京の都会の中にあるエアポケットのようなこの地に移り住んできた際には色々と面倒を見てくれた方。13年のあいだに、引っ越したり亡くなったりで近所に知人がほとんど居なくなってしまって、最近では私と妻が挨拶したり立ち話をするほかは誰とも話さず一日を過ごしていた。娘夫婦が近所に居るようなのだが、ほとんど訪れては来ず、隣の件に住んでいる高齢の妹が数カ月に一度来る程度だった。
 さすがに独居も限界と思ったのか、娘が母親のためにデイケアを手配したらしく月曜から土曜まで施設のスタッフが迎えに来るようになり、現在に至っている。

 妻と話している、その老婆の様子がどうも変なのである。なんだか訳の分からない繰り言を延々と続けている。背中が曲がり切っているので床に向かってしゃべっているかのようだ。

 話を聞いてみると、非常ベルが鳴って近所の犬が吠えるので、何事かと思い外に出ようとしたらしい。杖なしでは歩けず玄関の所で立ち往生しているところをうちの奥さんが見つけ、なんとか部屋の中に連れて入ったとの事。
 かろうじて私と妻の事は分かるようで、「遅い時間にすみませんね。」とごにょごにょ言っている。最近は痴呆もかなり急激に進んでしまっており、意識がはっきりしている時はともかく、なんだか訳の分からない事を言い出すことも増えてきた。
 やっとの事で椅子に座らせる。食事の途中だったらしく配達された弁当がテーブルの上に置いてある。(近所の<見守り兼宅配弁当>施設が昼過ぎに配達してくれる)
 その夜遅く、家の外に出て隣の様子を確認すると電気が消えているのでどうやら寝たらしいのが確認できた。安心して家に戻る。

 翌日、老婆の家にちょくちょく来ている方(かつて近所に住んでいて、いまは隣の区に引っ越してしまった。)からメールが来た。どうも昼間に倒れて病院に搬送されたらしい。たまたまデイケアのヘルパーさんが来ている時間だったのですぐに対応してくれたようだ。
 つまづいて転んだのか、それとも他の原因で倒れたのかは知るすべもない。

 うちの母親もそうだったが、痴呆は進みだすと一気に進み、後戻りしない。ただでさえ筋力も衰えてくると雪だるま式に「悪い方」に進んでしまう。

 94年も生きてきたのだから無理もないが、元気な顔を再び見せてくれることを願うばかりだ。
 病院に搬送された翌日家族の方が家に泊まったらしく、普段点くことのない二階の部屋に電気が点いたが、それ以降一週間以上、家に灯りがともる事はない。

 心配である。ただただ心配である。



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