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<761> 親父と祖父が帰ってきた話(夢十夜の四)

2021-08-05 18:25:11 | 短編小説
<761> 親父と祖父が帰ってきた話(夢十夜の四)

 こんな夢を見た。今回も短い夢だ。

 暑い日である。遠くでセミがジワジワジワと鳴いている。
 居間に座っている。

 目の前にはお袋が座って何やら話している。
お袋は現在老人ホームに入っている80歳過ぎの老婆ではなくまだ50代くらいだ。夢に出てくるお袋はいつもこの位の年恰好である。
 お袋の向こうには40年程前まで家にあった大きなステレオセットが。ビクターの大きなステレオセットで親父の自慢の品だった。いつの頃だったか思い切って処分してしまった。いつの頃だったろう、上手く思い出せない。
 ステレオセットが置いてあるところを見ると、ここは実家のようだ。お袋が出してくれたスイカだか何だかの果物を食べている。レイアウトは現在の実家とは異なっているが、見覚えのあるステレオセットがありその前にお袋が座っているのだから実家に違いない。

 お袋が急に「あら!」と声を上げる。指さす方を見ると親父が座っている。その向こうには私が20歳の頃に亡くなった祖父もいる。

 私は夢の中では親父を「死んだ親父」と認識しないことが多い。今回はそれとは異なり親父がすでに死んでいる事を認識している。「あれ、親父、死んだんじゃなかったっけ。どうしたの?じいちゃんまで一緒じゃないか。」と問うてみる。
 まだ60歳前くらいの親父は「おう。」と笑って応えた。生前夏によく着ていた小豆色のポロシャツを着ている。祖父は笑うでもなくこちらを見ている。不思議なことに祖父の姿は親父のそれとは異なりモノトーンで薄い灰色だった。死ぬときに来ていた浴衣を羽織っている。

 親父は相変わらずの人懐っこい笑顔で私の肩をポンと叩き、「元気でやってるか。」と言った。死んだ親父に「元気か」と言われ、私は「いや、元気は元気だが親父どうしたんだ急に。」と答える。「ちょっと顔を見に来た。」とかなんとか言っていう親父にお袋はただただ驚くばかりである。

 そこで目が覚めた。時間にすると20秒にも満たないのではなかったか。

 時計を見ると夜中の2時である。となりでは妻がスースーと寝息を立てている。
 私は大きく息を吸いしばらく天井を見つめていた再び目を閉じた。眠りに入ろうとするも親父の夢を見たからか、なんだかすっかり目が覚めてしまったようだ。妻を起こさぬようにそっと布団を出る。

 階下に降りて冷蔵庫から麦茶を取り出しコポコポとグラスに注ぐ。

 冷たい麦茶がのどを降りていくのを感じながら、ふと気づき「そっか、もうすぐお盆か。」と独り言ちる。そう言えば毎週親父の墓参りをして実家にある祖父の遺影に線香をあげているが、先週に限って所要があって両方ともしていない。


 墓参りと焼香の催促に来たようだ。