志情(しなさき)の海へ

琉球弧の潮風に吹かれこの地を掘ると世界と繋がるに違いない。世界は劇場、この島も心も劇場!貴方も私も劇場の主人公!

母の日の「沖縄芝居」観劇の感想を少し書き留めたいと思います!

2011-05-10 01:08:01 | 沖縄演劇
(「新むんじゅるー」の場面、さゆきさんは右端で最近ふくよかな美しさが増した)

朝11時開演の劇団伊良波(伊良波冴子座長)の舞台をまず最初に見た。伊良波冴子さんは琉球歌劇のマドンナのような方でその美声にはいつもほれぼれしている。冴子さんの姪の伊良波さゆきさんがしっかりと伊良波尹吉(彼女の祖父・天才的琉球歌劇戯作者・役者)の作品を「沖縄芝居役者」として継承している姿は、いじらしいほどに頼もしい。さゆきさんの美声も冴子さんに劣らず磨かれてきたようだ。

「新むんじゅるー」(作伊良波尹吉)はカマドー小がさゆきさん、その兄(アヒー)が嘉数道彦さん(組踊の創作も演出も抜きん出て、かつ組踊の伝承者として演じているが、彼は「ラッキーカムハワイ」のような現代沖縄芝居にも主演する)、困った所を助け結婚することになる加那に佐辺良和(彼は将来の組踊の女形としてすでに花のある役者である。現代演劇にも果敢に挑戦し、女踊もあでやかに踊る。美男の平敷屋朝敏の役柄なども含め、女形・二枚目の役柄ではもはや今の沖縄演劇界のスターである)、そして間の男役(三枚目)に北村三郎さんで、大いに会場を沸かせた。若者たちの演技はメリハリがあり、鮮やかに見せ、台詞も歌もしっかりしていた。、何度でもまた再演してほしいメンバーだった。

「現代歌劇『貞女と孝子』」は沖縄バージョンの菊池寛の「父帰る」だが、辻の遊女と駆け落ちする父親がいて、捨てられる妻子がいて、その後の物語の逆転が見せた。成長して教師になった息子大湾三瑠がとてもいい味わいを出していた。大湾さんは琉球舞踊でもとても花がある方である。2枚目も3枚目も演じることができ、現代劇も沖縄芝居ももちろん組踊も長けている方である。彼には役者の天然の艶があるといつも感じさせる。父親役の仲嶺眞永さん、ジュリ役の真栄田文子さんなどさすがこなれた芸だった。

(人物像が小さいが息子・大湾三瑠、妻・伊良波冴子、夫・仲嶺眞永)

それから急いで那覇のパレット市民劇場へ向かった。劇団「花園」の舞台を見た。団長の泉賀寿子さんは、宝塚の男形の魅惑を持った方である。彼女の男姿(主役)はとても魅惑的で彼女の語りその色気のある甘い立ち姿に魅了されるフアンは多いに違いない。案の定パレット劇場はほぼ満席で女性客が多かった。客へのサービスも行きとどいている。毎年カーネーションの造花のプレゼントをするのである。

泉団長と杉野早苗さんが幕開け舞踊として踊った「恋路枕」もセンシュアルな美に満ちていた。というと、従来、琉球舞踊にない接吻さえ舞踊の中に織り込んでいた。電話インタビューでお話されていたように「幻想的なんですよ。芝居の一場面のように踊るのです」が目のまえにあでやかに現前していた!また来る5月28日、29日には国立劇場おきなわで披露される!(ご覧になれなかった人は是非どうぞ!)

「割符」(伊良波尹吉作)は以前劇団「うない」の舞台も見たことがあるが、宮城亀郁さんと春洋一さんの間の者の演技がまた女性だけのうないとも異なる味わいを出していて若按司は知名剛史が演じた。


(睦ましい浦太・泉賀寿子とかなし・杉野早苗)
是非見たかったのはこの間見たことがなかった「無常花」(宮城亀郁作)である。久米島に住んでいた浦太(泉団長)とかなし(杉野)の恋人たちの思いが同じ村の若者の心無い嘘によって引き裂かれる悲恋物語である。浦太は美男ゆえに奉公先の首里の殿内の娘に言い寄られ、婿にも請われるが、その出世の道にも目を向けずひたすらかなしの事を思っていた。しかし彼に嫉妬した同郷の者の嘘によりかなしは自らの命を落とそうとする所を助けた村の男と婚姻を結ぶ。それを知らずに島に戻ってきた浦太はーー。

(苦しむ浦太)
愛し合う者たちの運命の狂いがあり、それゆえにまた苦しむ家族の姿があり、何より愛し合う者たちが引き裂かれる姿に運命の無常が流れた。おそらくこの物語は続きが書かれていいのだろう。夏目漱石の【男女の三角関係】小説のようにーー。浦太とかなしの愛がまた寄りを戻し、夫が酒におぼれ自棄的になる。そして、とその続きを書いてみたいと思った。台本を書いて泉団長に持っていこうかな?いつもながら女性ならではの泉賀寿子と杉野早苗さんの愛の場面はやはりセンシュアルである。例えばXXXで着物の袖を互いに愛の証に交換するなど、うならせた。

(和解する家族、しかし引き裂かれるかつての許嫁たち)


三番目に自動車道を走って石川へ向かった。まだ見た事のないお芝居「花扇子」を見るために。劇団「うない」が40年ぶりに上演する時代人情歌劇である。なかなか良かった。やはり困った所を助けてくれた里之子に一目ぼれする士族の娘の恋物語で筋書きが複雑にからんでいて、婚姻の日にドラマの大逆転があり、終り方がうまく愛し合うものが結ばれる展開になった。金に目がくらんだ養母の世事に長けた姿があり、養父の律義な姿があった、。中曽根律子団長の性格にも思える養父(宇知泊筑登之)の実直さが好ましかった。養母の嘉陽田早苗も安定した役柄で好ましかった。娘佐和田香織も品いい役柄でうみないび役が似合っている若手である。りりしい新里里之子を演じたのが花岡尚子である。弟役瑞慶覧愛美の若衆姿がいい味わいだった。佐渡山里之子の兼城米子もいい雰囲気だった。セットもきれいで扮装もいつも目を見張らせたが、もったいないと思ったのは歌唱の力強さである。もっとオペラのアリアのように聞かせてほしい。美声の響きがほしい。女が演じる男形の魅力をもっと見せてほしい。聞かせてほしい。東京で見た『テンペスト』の仲間由紀恵よりもみなさん役者としての見栄えは遥かにいいと思う。映像ではない生の舞台の感度は高い。しかし声の迫力がほしいのである。その辺のパワーアップを期待してやまない。

≪真鶴・佐和田香織と新里・花岡尚子の出逢い≫

それから「うない」の踊りはやはり「うないブランド」としての味わいをいつまでも保ってほしいと思う。今は亡き間 好子さんの創作など、やはり「乙姫時代」からの味が感じられ、とてもいいと思う。是非、声の特訓と男形の魅力を探求してほしい!

≪弟・瑞慶覧愛美、養母・嘉陽田早苗、養父・中曽根律子≫


≪物語の逆転の場面である。婚姻の日、銭蔵の金を盗んだ罪科でお縄になる松田里之子、役人役の比嘉いずみ≫

ひそかに考えているのは女性だけの劇団のために台本を書いてみたいという事である。気に入ってもらえるような台本を創作したいと考えている。少しでも応援したい!

他いろいろ発見があったが詳細は公表しない観劇ノ―トに保存する!

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