電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第197回定期演奏会を聴く

2009年05月18日 21時31分06秒 | -オーケストラ
田植えの時期に恵みとなる、しばらくぶりに本格的な雨降りとなった日曜の午後、山形交響楽団第197回定期演奏会に出かけました。出かける前に、車のキーが見つからず、だいぶあわてましたが、とりあえずスペアキーにて出発。なぜか道路が混雑しており、会場の山形テルサホールに到着したのは、音楽監督の飯盛範親さんのプレコンサートトークがそろそろ終わる頃でした。それによれば、

(1) 5月31日(日)の夜、NHK教育テレビの「オーケストラの森」で、今回の山響定期演奏会の様子がテレビ放送されるのだそうです。そういえば、駐車場には放送車が停まっていましたし、ステージにはテレビカメラが入っています。マイクロホンも、結構な数が入っているようです。
(2) ブルックナーの交響曲第5番のCDが発売されます。本日は休憩時にロビーで先行販売します。
(3) 6月20日には、東京で恒例となった「さくらんぼコンサート」を行います。このときは、プレコンサートで「おくりびと」の滝田監督とのトークを行い、飯森さんがピアノを弾き、チェロと一緒に「おくりびと」のテーマを演奏する予定もあるそうな。
(4) 飯森さん、本を書かれたそうです。

とのこと。いずれも楽しみなことです。

さて、ステージに楽員が登場。おや、犬伏さん、ファースト・ヴァイオリンの第3か第4プルトのパート譜が落ちているのに気づき、譜面台に戻してあげてから自席へ。さすがに細やかな気配りです。本日の配置は、ステージの向かって左側から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、右側にチェロとヴィオラ、その後方にコントラバス、正面に木管、その奥に金管、管楽器の左、セカンド・ヴァイオリンの奥に、ハープとティンパニ等が並びます。今日の席は、ほとんどかぶりつきに近い位置でしたので、管楽器のほうはよく見えません。

1曲め、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。弦のピツィカートに乗って、ホルンのソロがしっとりと決まります。若いラヴェルらしい、繊細な響きがたまりません。当方の位置からは、ハープの動きがよく見え、ふだんCDで聞き慣れている音楽でも、なるほど、ここでこういう音がするのはそういうわけか、と発見があります。

2曲め、ラロの「スペイン交響曲」です。ソリストは、2007年の春に、ギリシアのバイロン・フィデチスさんの指揮で、シベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴いた、滝千春さんです。本日は、黒赤紫色と言うのでしょうか、ヨウ素の分子結晶のような色の、膝下から裾の開いたスペイン風のドレスです。
第1楽章、アレグロ・ノン・トロッポ。叙情的なところと力強いところを対比した素晴らしい演奏で、特に音程の正確さが際立っていると感じます。ピッコロの鋭い音があたりを切り裂くように響きます。第2楽章、スケルツァンド、アレグロ・モルト。弦のピツィカートから。ソリストは、小柄な体を屈めて、中腰で、スペイン風のリズムを意識して演奏しているようです。ちょうど闘牛士が見栄を切るように、終わりをはね上げるようなリズムの切り方です。第3楽章、インテルメッツォ(間奏曲)、アレグレット・ノン・トロッポ。オーケストラがスペイン風のリズムを刻む中で、ソロ・ヴァイオリンが低音で強く出てきます。たいへん表情豊かに歌うかと思えば、またたいへん歯切れのよい技巧的なパッセージが続きます。気迫あふれる演奏です。オーケストラでは、ここの木管の音色が素晴らしかった。第4楽章、アンダンテ。ソステヌートでコラール風の旋律をオーケストラが奏する間、ソリストは気持ちを集中させているのでしょうか、ヴァイオリン・ソロがゆっくりと歌い始めます。これをオーケストラが受け継ぎ、カデンツへ。後のスペイン風のところは、やっぱり見栄を切るような独特のリズムが意識され、とっても面白い!第5楽章、ロンド、アレグロ。再び第1楽章の主題が登場し、ヴァイオリン・ソロもロンド主題を。たいへん心地よい速さで、技巧的なフレーズも安定し、スカッとします。跳ね回るような左手の小指と薬指、なんともすごい技巧の連続するソロ。弓の一部が切れてしまっても、身を屈めるようにスペイン風の切れ味のよいリズムで奏する滝千春さんの小柄な体から、気合と表現の意志のようなものが発散しているようです。オーケストラの中では、ピッコロとトライアングルが響き渡ります。隠し味のようでいて、でも全体の中できっちりと響いている、というような絶妙のバランスでした。全5楽章、フライングもなく、聴衆はニコニコと大拍手、滝千春さんもニコニコ。山響のバックは、たぶんソリストとして演奏しやすかったのではないでしょうか。そんな表情でした。

休憩時に、ロビーでブルックナーの交響曲第5番のSACD/CDを購入。3000円です。ついでにコーヒーを飲んでいたら、しばらくぶりに知人に会い、懐かしくご挨拶。

さて、後半はカリンニコフの交響曲第2番です。Wikipedia によれば、楽器編成は、フルート、オーボエ、コーラングレ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、ハープ、弦五部とのこと。
第1楽章、モデラート。荘重な弦に続く金管の響きが、ぴたりと決まります。お見事!でも、この厳粛な感じはすぐに放棄され、これに続くのは民族舞踊的なリズムです。オーケストラの各弦セクションはせっせと演奏しっ放しで、なんとも忙しそうです(^o^)/
金管部隊低音パートが迫力の低音を聴かせると、「負けないぜ」とばかりに金管部隊高音パートが朗々と鳴らし、木管も加わってオーケストラのカラフルな音色を堪能します。これぞ、カリンニコフの魅力です!
第2楽章、アンダンテ・カンタービレ。イングリッシュ・ホルン(仏名コール・アングレ)からオーボエに渡されるメロディーの素敵なこと。そして続くヴァイオリンの響きの美しいこと!ほれぼれします。さらにオーケストラの各パートへ受け渡されて、いいなぁ、ロシアだなぁ。再び登場するイングリッシュ・ホルンに、オーボエ、ファゴット、クラリネットの響きの美しいこと!そして最後のハープに、ノックアウトです(^o^)/
第3楽章、アレグロ・スケルツァンド。今頃になって気づきましたが、協奏曲で活躍したピッコロは、すでにフルートに持ち替えているのですね。途中でがらりと雰囲気が変わり、生き生きとした活気あるリズム感、いかにも全曲の終わりと錯覚しそうな感じなのですが、さすがに誰も間違い拍手なし。今日の聴衆は立派だぞ~、などと素人音楽愛好家は内心で独り言(^o^)/
第4楽章、アンダンテ・カンタービレ~アレグロ・ヴィーヴォ。静かな弦をバックに、息長いホルン・ソロから再びイングリッシュ・ホルンのソロへ。そして生き生きとした快速テンポで、透明な響きはあくまでも維持しつつ、フィナーレ楽章が始まります。どこかで誰かがパンフレットを取り落とした音はご愛嬌と言うべきでしょう。始まりの楽章の金管の旋律を再現し、昂揚の中で全曲を閉じます。

演奏された皆さん、おそらく多分ほとんど確実に筋肉痛になったことでしょうが、いや~、ブラヴォー!です。イングリッシュ・ホルンが、ホルンが、そしてハープが、ティンパニが、クラが、オーボエ、ファゴットが、フルートが、盛大な拍手を受けます。指揮者の飯盛範親さんも何度も呼び出されますが、ハプニングはそこで起こりました。

コンサートマスターの高木さんがヴァイオリンを持って立ち上がり、おやおや、指揮者の指示なしに奏き出したかと思ったら、"Happy birthday to you~" オーケストラも一斉に、"Happy birthday dear~" 実は飯森さんの誕生日だったのですね!ご本人が「実は46歳になりました」と話し、あわせて「僕と同じ誕生日の人がいます。そして、最近結婚されました。」と、某アンサンブル・ピノに所属する第1ヴァイオリン奏者(*)を紹介。なんともほのぼのした演奏会のエンディングでした。

本当はファン交流会のほうも出たかったのですが、この日はもう一発、映画「ラ・ボエーム」へ行く予定が。なんとも贅沢な、音楽三昧の一日でした。

(*):山形弦楽四重奏団のプレ・コンサートに、最近アンサンブルTomo'sが出演しているので、「山口さんちのツトムくん」のメロディで、「どーしたのかなっ?」と思っておりましたが、実はそーいうことだったのですね!おめでとうございます!

コメント (6)    この記事についてブログを書く
« おっと、あぶない~映画「ラ... | トップ | 「天よ、運命よ。彼女を連れ... »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ワタクシも。 (きし)
2009-05-18 22:09:51
今回は演奏会に行ってまいりました。楽しかったです~。
スペイン交響曲もさることながら、最後のカリンニコフ。
初めて聴く曲でしたが、第2楽章の美しさに、ほ~とため息をついておりました。
…と、感想のもろもろを自分のところに書きましたのに、うっかり携帯から操作をして記事を壊してしまいました。もう書きなおせない…。がっくりです。
返信する
きし さん、 (narkejp)
2009-05-18 22:18:25
コメントありがとうございます。
>感想のもろもろを自分のところに書きましたのに、
>うっかり携帯から操作をして記事を壊してしまいました。
うわっ、なんともはや・・・・・(T-T)
思わず脱力感、ですね(^_^;)>poripori
カリンニコフの交響曲は、第1番も第2番も、とってもいい曲ですね。「私の好きな第1番」「同第2番」で取り上げましたけれど、どちらもお気に入りの曲です。演奏する側では、思わず筋肉痛になりそうな曲らしいのですが(^o^)/
スペイン交響曲での滝さんの見事な演奏も、思わず感動してしまいました。
返信する
ちょっとくやしい?! (balaine)
2009-05-19 03:24:58
今回はいろいろあって山形まで行くのを諦めました。
カリンニコフの2番、生で聴けなかったのは残念で悔しいですが、「オーケストラの森」を楽しみに録画します。
スペイン交響曲は、実は酒フィルでの私のピッコロデビューでした。H16年の秋、漆原啓子さんがソリストで、それはそれは素晴らしい独奏でしたが、私はピッチのはずれが目立つピッコロを、当時は今よりも更に下手でしたので大変緊張しながら吹いた覚えがあります。
マエストロ、喜んだでしょうね。私も一緒にお祝いしたかったな。
返信する
balaine さん、 (narkejp)
2009-05-19 20:19:43
コメントありがとうございます。今回は、山形遠征はご都合が悪かったようですが、幸いなことにテレビ放送がありますので、ラヴェルとカリンニコフは大丈夫そうですね。滝さんとの、ラロの「スペイン交響曲」は、当日は残念ながら放送されないようです。
"Happy Birthday"ハプニングの件は、飯森さんのブログにも書いてあるようですね(^o^)/
返信する
Unknown (南八尾電車区)
2009-05-24 01:40:48
 こんばんは。
 それにしても今度の山響第197回定期、前半にフランス物(というかフランスの作曲家による作品)2曲を持ってくるかと思えば後半にはロシア物を持ってくるあたり、何だか面白い取り合わせですね。

 そして、5月末日にNHK教育テレビで放映予定の『オーケストラの森』の枠内で今度の山響定期の模様が放送されるとの由・・・私も当日忘れずに録画セットするつもりでいます《1時間枠のはずなので全部は入りきらないでしょうが、当日のどの演奏が放映されるのか、記事本文を拝読しつつ、今から楽しみにしています》。
返信する
南八尾電車区 さん、 (narkejp)
2009-05-24 06:50:30
コメントありがとうございます。山響のテレビ放映の件、当日の曲目のうち、ラヴェルとカリンニコフが予定されているようです。時間枠の関係から、滝千春さん(Vn)とのラロ「スペイン交響曲」がカットなのは残念ですが、どうぞお楽しみください。前回の、モーツァルトのアリアとマーラーの四番の交響曲の放送も良かったので、今回はどんな角度からの放送になるのか、今から楽しみです(^o^)/
返信する

コメントを投稿

-オーケストラ」カテゴリの最新記事