電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブラームスが日本の音楽を研究したきっかけ

2005年03月06日 15時16分12秒 | クラシック音楽
音楽之友社から、『ブラームスの「実像」』という本が出版されている。この中に、大宮真琴氏が執筆した「音楽のかけ橋-百年前にウィーンで出版された『日本民謡集』の謎」という章がある。ウィーン楽友協会に収められたブラームスの蔵書の中に、ブラームス自身が鉛筆で随所に書き込みを行った『日本民謡集』という楽譜が含まれているという。「ハンガリー舞曲」に限らず、ブラームスが民族音楽を研究していたのは承知していたが、日本の音楽まで関心の内にあったとは初耳だった。1888年に出版されたこの楽譜の編者はボクレットという人だが、表紙に「ウィーン駐在日本帝国公使戸田伯爵に謹んで献呈」と印刷されたこの楽譜集は、誰を通じて、どのように採譜されたのか、という内容である。
結論からいうと、鹿鳴館の花形であり山田流筝曲の演奏に堪能だった、戸田伯爵夫人の極子(岩倉具視の長女)だ、ということだ。東洋から来た公使婦人の演奏する「六段」の調べに、ブラームスが耳を傾ける。そんな図を想像するとき、東洋と西洋が出会う華やぎと共に、中村紘子さんの『ピアニストという蛮族がいる』に描かれた、久野久の悲劇が思われる。
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