電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

タネーエフ「弦楽四重奏曲第7番」を聴く

2017年10月09日 06時04分17秒 | -室内楽
通勤時に音楽を流すやり方で、未知の作曲家や作品になじむことがよくあります。現在の通勤の音楽は、以前、某書店のワゴンセールで入手したナクソスのCDの中から、タネーエフの弦楽四重奏曲全集第3集(8.573010)で、カルペ・ディエム(Carpe Diem)弦楽四重奏団による第7番と第5番の2曲を収録したものです。とりわけ第7番、変ホ長調を繰り返し聴いております。

作曲者のセルゲイ・タネーエフは、1856年生まれで1915年に没しています。例によってWikipediaで調べて見ると、5歳でピアノを習い始め9歳でモスクワに移住、モスクワ音楽院でピアノをニコライ・ルビンシュテインに、作曲をチャイコフスキーに学んだそうな。1875年に金メダルを得て卒業、ピアニスト、作曲家として活躍したそうで、アウアーと組んで演奏旅行を行ったほか、対位法の理論家として知られ、チャイコフスキーは「消防署のとなりのバッハ」と呼んでいたそうな。1875年11月にはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番のモスクワ初演や第2番の世界初演のピアノ独奏を受け持ったというのですから、師匠の信頼もあったのでしょう。1878年からモスクワ音楽院の和声等の教授、1881年にはニコライ・ルビンシュテインの後任としてピアノ科教授、1885年からは4年間院長をつとめたとのことで、弟子としてスクリャービン、ラフマニノフ、グラズノフ、プロコフィエフ、メトネルなどの名前が挙げられています。錚々たる顔ぶれです。

この第7番の弦楽四重奏曲は、作曲者が1880年に作った曲とのことですので、24歳ころの作品ということになります。自分としては作品番号を付けるほどの完成度とは考えなかったのでしょうか、作品番号なしの曲をまとめて第7番から第9番に位置づけられているそうで、若い時代の作品としては第7番という番号が付けられているのは、そういう事情のようです。

第1楽章:アレグロ。どことなく田舎風の優しく柔らかな響きで始まり、13分ほどかかる音楽ですが、実際は四声のカノンを含む技巧的な面も持っている音楽で、同じ調のベートーヴェンの第12番の弦楽四重奏曲を思い起こさせると添付の英文のリーフレットでは指摘されています。
第2楽章:美しいアダージョ・カンタービレです。四つの楽器がそれぞれ表現力豊かに旋律を奏し、情感豊かな音の世界を作り出します。
第3楽章:スケルツォ。全体の中でいちばん短い曲です。物憂げなゆっくりとした始まりですが、やがて満たされない情熱とリズミカルなものと優しい穏やかな曲想が対話するように何度か繰り返した後、終わりには穏やかなものに変わっていきます。
第4楽章:フィナーレ、アレグロ・モルト。添付リーフレットの解説によれば、第1楽章と同様に対位法の技巧を凝らした音楽だとのことですが、素人音楽愛好家には技術的なことはわかりませんで、活発な良いフィナーレだなあと感じます。何度も繰り返して聴いて、聴き馴染んだ状態で接するときには、屹立する個性とか時代を画する独自性などという面は薄いのかもしれないけれど、なかなか良い曲ではないかと感じます。

参考までに、演奏データは次のとおり。
■Carpe Diem String Quartet,(NAXOS, 2010)
I~12'56" II=9'56" III=5'16" IV=9'56" total=38'04"

セルゲイ・タネーエフ、今まで接点がなく過ごしてきた作曲家でしたが、弦楽四重奏曲や同五重奏曲、ピアノ四重奏曲など、興味深い室内楽作品もまだまだあるようです。楽しみが増えたような気がします。

YouTube では、第7番の適当なものが見つからず、参考までに第1番の弦楽四重奏曲を見つけました。
Taneyev-String Quartet nº1 in B flat minor, op.4-Taneyev Quartet


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