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金星の“巨大な弓状模様”はどうやって作られたの?

2017年01月24日 | 金星の探査
金星探査機“あかつき”に搭載された中間赤外線カメラが、
2015年12月に南北方向に約10,000キロにおよぶ弓状の構造を発見しました。
2015年12月に“あかつき”が撮影した金星画像

金星には“スーパーローテーション”という、
4日で金星を一周する秒速約100キロの東風が吹いています。

でも4日間にわたる観測期間中、
この模様は“スーパーローテーション”に流されることなく、
ほぼ同じ場所にとどまっていたんですねー

数値シミュレーションを用いて調べてみると、
大気下層に乱れが生じると、そこから大気中を伝わる波が発生。

その波は、南北に広がりつつ上空に伝わって広がり、
高度65キロ付近にある雲の上端を通過する際に、
観測された弓状の温度の模様を作ることが分かりました。
2015年12月7日の中間赤外線カメラ観測画像。
画像処理を施し弓状の模様を強調し、地形上にマッピングしたもの。
(地形の等高線の間隔は1キロ)
観測された構造が高地(アフロディーテ大陸の西部)の上空に
出現していることが分かる。

それでは、なぜ金星大気下層の乱が上空へ伝わり広がるのでしょうか?

原因は、この弓状模様の中心の下にあるアフロディーテ大陸でした。

アフロディーテ大陸は標高が5キロほどあるので、
下層大気の乱れが“重力波”という波になって上空へと伝わり、
弓状の模様になっていたわけです。
  この重力波は、地球のアンデス山脈などでも観測されることがあります。
(左)2015年12月7日の中間赤外線カメラ観測画像に見られる弓状の模様の下には、
アフロディーテ大陸と呼ばれる高地が存在している。
(右)コンピュータシミュレーションによって再現された高度65キロ付近の弓状の模様。
金星大気の下層に大気の乱れが生じると、そこから発生した波が上空へ伝わって、
高度65キロでは弓なりの形に広がる。

金星雲頂の観測から下層大気の様子を推測できることが、
この研究から示されました。

今後、研究チームは弓状構造の出現条件を探っていくようなので、
弓状構造の生成メカニズムの全貌が解明されるといいですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 大気シミュレーションの結果、金星極域の不思議な温度分布を解明できた


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