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モバライダー mobarider

この2つの天体にはどんな違いがあるの? 恒星と惑星の中間的な性質を持つ“褐色矮星” と 木星の数倍ある“巨大ガス惑星”

2020年03月14日 | 宇宙 space
ケック望遠鏡とすばる望遠鏡による高解像度の直接撮像観測とモデル計算から、主星から遠い巨大ガス惑星と褐色矮星では、軌道の特徴が異なっていることが明らかなりました。
それぞれの形成過程の違いが軌道に反映されている可能性があるようです。


巨大ガス惑星と褐色矮星

これまで、恒星の周囲を公転する褐色矮星や巨大ガス惑星を直接観測することは、中心の主星(恒星)の光が明るすぎるので非常に困難でした。
  褐色矮星とは、その質量が木星型惑星より大きく、赤色矮星より小さな超低質量天体の分類。核融合を起こすには質量が小さすぎるため恒星になることができなかった天体。

でも、近年では技術の進歩により、主星のそばにある暗い天体を見ることができるようになってきたんですねー
恒星を巡る褐色矮星は1995年、系外惑星は2008年に初めて直接観測されています。

褐色矮星は恒星と惑星の中間的な性質を持った天体で、質量は木星の13~75倍とされていています。

では、木星の数倍~10倍ほどの質量を持つ巨大ガス惑星と褐色矮星との間には、どのような違いがあるのでしょうか。


観測とシミュレーションで公転軌道を割り出す。

この問題に取り組んだのは、アメリカ・テキサス大学オースティン校の研究チーム。
巨大ガス惑星と褐色矮星の軌道に着目し研究を進めています。

研究では、ハワイのケック望遠鏡とすばる望遠鏡を用いて、巨大ガス惑星あるいは褐色矮星が公転している27の星系を観測。これら天体の運動の様子を調べています。

ただ、これら天体の公転周期は数百年に及ぶものもあるので、観測で分かるのは軌道のほんの一部…
  過去の観測データも、直接撮像が可能になってからの20年分ほどしか無い状態だった。

このため、次に研究チームが行ったのは、シミュレーションにより観測で得られている軌道の一部から全ての軌道を再現することでした。

このシミュレーションでは、個々の天体が描く可能性のある軌道が数パターン作られます。
複数のパターンが集まっているほど実際の軌道に近い可能性があり、観測で得られている軌道の割合が多いほど確実性は向上するそうです。
巨大ガス惑星と褐色矮星の軌道パターンの例。
巨大ガス惑星と褐色矮星の軌道パターンの例。


公転軌道の形状から形成過程が分かってくる

シミュレーションで再現した27星系の天体の軌道を調べてみて分かったことがあります。

それは、木星質量の約15倍より軽い巨大ガス惑星ではどれも軌道の形状が円に近く、それより重い天体の軌道の形状が様々なつぶれ具合の楕円であるということ。この2つの違いは、はっきりと見られました。
中心星から離れた公転軌道を描く巨大ガス惑星と褐色矮星の軌道形状の分布。軌道離心率(横軸)が0は円軌道で、値が大きくなるほどつぶれた楕円軌道になる。
中心星から離れた公転軌道を描く巨大ガス惑星と褐色矮星の軌道形状の分布。軌道離心率(横軸)が0は円軌道で、値が大きくなるほどつぶれた楕円軌道になる。
軌道の形状は、その天体がどのように形成されたかに関わっています。

もし軌道が円形に近ければ、その天体は惑星のように作られたと考えることができます。
これは、ガスとチリの雲が自己重力で集まって恒星が形成されると、恒星(中心星)を取り巻くガスやチリの円盤“原始惑星系円盤”ができ、その円盤の中で惑星が形成されるからです。

一方、軌道が楕円の場合に考えられるのは、ガスとチリの雲が分裂してそれぞれの場所で天体が形成され連星系になったということ。
この天体は惑星ではなく、恒星や褐色矮星になると推測されます。

今回の研究から明らかになったのは、天体の質量によって軌道の形状が異なるということ、軌道の形状により形成過程が異なるということでした。

研究チームでは、今後も観測を継続して27星系の軌道の精度を向上させるそうです。
さらに、新たな巨大ガス惑星や褐色矮星の直接観測によって、研究の幅を広げる計画も立ているようですよ。


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