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海軍艦船搭載用「2号無線電話機」について

2020年05月16日 04時16分36秒 | 02海軍無線機器

海軍艦船搭載用「2号無線電話機」について
真空管式ラジオの収集や修復を趣味でやっていると、どんどん歴史をさかのぼり過去のラジオにのめり込んで行きます。
そうすると、当然真空管もMT管からGT管、メタル管、ST管、ナス管となり最後は鉱石検波器の収集とさかのぼることとなり歯止めが利かなくなります。
このような真空管の収集の過程で、初期の真空管であるナス管の201Aも結果として多数収集することとなりました。
この201Aの真空管の中に、海軍の錨マークのついたものが1本みつかりました。
しかも、この1本は昭和の初期のものではなく、今次大戦で使用されたもののようです。
何故こんな初期の真空管(昭和初期)が逆に今次大戦の無線機に使用されたいのか、長年興味をもっておりましたが、今回手持ち資料とネットの力で整理してみました。

趣味の時代の「国産古典ラジオ昭和初期5球ブローニングドレーキ式受信機」の紹介

 
 

今回、雑誌「船の科学」のシリーズ・日本の艦船・商船の電気技術史の中に真空管201Aを受話機に使用した2号無線電話機の記述を発見しました。
少し2号無線電話機の内容を紹介します。
2号無線電話機
上記の無線電話機で、送話用空中線および受話用空中線を各単独でも使用出切るに改造したものが制式に2号無線電話機と呼称された。
昭和2年大沢、大野によって開発された。
その後発振真空管を換えて翼板電圧(海軍呼称で陽極電圧と同じ)を1,000V、出力を25Wとし(改1)、電鍵操作を空中線の接地側を接・断して行っていた。
(改2)改3では電鍵操作を格子回路の接・断とした。
なお改1、改2は後にはほとんど全数を改3に改造した。
また、受話機改1は高周波増幅1段、再生検波、低周波増幅2段とし、同改2は周波数範囲を増大した。
票7・14は送信機改3、一型および受話機改1、改2の要目を、図7・27は改1の内部結線を、7.28は外観を示す。

追加資料 2号無線電話機 「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会からの抜粋
中波無線電話機で、出力30W、送話機改1は翼板電圧を500Vより1000Vに増大したもの、送話機改2は自励式で電信は空中線電鍵操作のもの、同改3は格子電鍵操作に改良したもの、受話機改1は高周波増幅1段、再生式検波、低周波増幅2段のもの、同改2は周波数範囲を拡大したもの、送話機改3に原振器を附けたものを送話機1型と呼ぶ。

 

2号無線電話機は昭和2年に開発され継続的に改良が図られ、参考資料1の艦戦無線兵装標準(昭和18年6月の改訂版)にも記載されています。
また、戦艦から海防艦まで幅ひろく本機が搭載され、艦隊内での通信に使用されていたこともわかります。
艦隊行動に伴う無線封止においても、連絡のため本機は利用されていことでしょう。
ただし、参考資料3の艦船並びに一般通信(海軍通信作戦史抜粋)に「90式超短波及び2号電話機の如き電波の漂変甚しき電話は隊内電話として取扱困難であった」との記載もあり本機の運用には問題があったことは事実のようです。
本機の受話機(受信機)は古典ラジオである真空管201Aを採用し続けられ、根本的に改善されることはありませんでした。
これでは戦時に国民が使用した放送局型123号受信機のほうがよほど高感度のラジオです。
放送局型123号受信機の事例紹介


このような古典ラジオ如き2号無線電話機の現役採用は海軍でも稀有なことですが、終戦後に記録された海軍通信作戦史に問題を認識しただけで記録する前に用兵側の軍令部の部員は何の対処もしていないところに問題の本質がありそうです。
受話機の4号検波菅(UX-201A)×4

 

送話機
発振または増幅 21号発振3型(UN-151B)
型番、仕様 :UN-151B(UN151B)
メーカー名 :東京電氣(現、東芝)
品名 :電力増幅3極送信管

 

参考資料1 艦船無線兵装標準 「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会からの抜粋
艦戦無線兵装標準(昭和18年6月の改訂版)による船種別二号電話機の設置台数
戦艦(艦隊旗艦)・・・・・・・・・・・・二号電話機×2台
戦艦(戦隊旗艦)・・・・・・・・・・・・二号電話機×2台
戦艦・・・・・・・・・・・・・・・・・・二号電話機×2台
巡洋艦甲(艦隊旗艦)・・・・・・・・・・二号電話機×2台
巡洋艦甲・・・・・・・・・・・・・・・・二号電話機×2台
航空母艦甲(艦隊旗艦)・・・・・・・・・二号電話機×2台
航空母艦甲(戦隊旗艦)・・・・・・・・・二号電話機×2台
航空母艦甲・・・・・・・・・・・・・・・二号電話機×2台
航空母艦乙(戦隊旗艦)・・・・・・・・・二号電話機×2台
航空母艦乙・・・・・・・・・・・・・・・二号電話機×2台
駆逐艦・・・・・・・・・・・・・・・・・二号電話機×1台
海防艦甲・・・・・・・・・・・・・・・・二号電話機×1台

参考資料2 海防艦(新型)の無線兵装「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会からの抜粋
海防艦は従来一般に老杆艦を以て当てられていたが、対潜警戒、海上警備の重要性あり、新艦の建造が計画せられ、昭和15年まず4隻の完成を見た。
無線兵装は送信機は短3号、長波4号各1台と2号電話及び超短波電話機各1台、受信機は4台程度で、小型艦の割合に大勢力送信機を搭載し、前後楼間の距離又極めて短いため、自艦送信妨害の問題と、能率良き空中線展張の問題で、装備上色々苦心が払われた。
太平洋戦争中期以後は護衛艦としての整備に重点が置かれるようになり、対飛行機協同用電話機及び応急用小型電信機の増補が積極的に行われた。
又任務の変化に伴い、艦型は縮小の一途を辿り、短波送信機も特5号送信機に換装せられた。
その結果自艦送信妨害は大いに緩和せられた。

参考資料3 艦船並びに一般通信(海軍通信作戦史抜粋)
護衛艦艇の隊内電話に航空機用隊内電話を採用し水上艦艇、航空機共同一電波使用に統一す。
昭和19年秋迄の護衛艦艇は未だ海防艦、駆逐艦等の編成なく個々の艦艇の寄せ集め式護衛船団にして、且1月の中殆碇泊休養の時間も少ない為、教育訓練の機も尠く思想の統一もなき為、之等船団部隊に於いては90式超短波及び2号電話機の如き電波の漂変甚しき電話は隊内電話として取扱困難であったので、取扱容易なる水晶制御式航空機用隊内電話を使用せしむることとし、極く一部の特設艇を除き之を装備し且護衛部隊の隊内電波を水上艦艇及び航空機共41350kcに統一し航空機との緊密なる連絡に資した。
右電話は之を重要船団にも装備せんとし、電話員の養成を開始したが、時恰も米軍沖縄作戦を開始し、南方よりの還送航路を遮断せるを以て実現に至らずして終わった。


気付き
今日、新型コロナ対応で厚労省は右往左往していますが、平時の感覚で現行の法律と組織体制の中で問題に対処しようとしため、負荷が一機に保健所に向かいパンク状態となって居ます。
国民が如何にPCR検査を望んでも、某大臣は国民側が誤解しているとの一言で何の責任感もありません。
どうして、韓国、ドイツ、英国、アメリカなどの国で1日に何万人のPCR検査ができるのでしょうか。
平時ではない戦時の意識が日本にだけないことに根本問題にありそうですが、戦後長年の平和ボケの政府、国民も少し覚醒する必要がありそうです。


参考文献
雑誌「船の科学」のシリーズ・日本の艦船・商船の電気技術史
「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会
海軍通信作戦史 昭和24年3月 第二復員局残務処理部史実班
「元軍令部通信課長の回想」昭和56年 鮫島素直
日本のラジオ https://radiomann.sakura.ne.jp/HomePageVT/Radio_tube_1_201A.html
グランパーズ・シャックGrandpa's shack  http://www.grandpas-shack.com/parts/item.php?itemid=4387

 

 

 

 

 

 


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (中山明子)
2023-03-25 09:17:25
初めまして、中山明子と申します。
私の母方の曾祖父は戦前から海軍に勤めており、激戦期は軍艦の陸奥に乗っておりました。
海軍と縁のあるラジオとの事ですが、もし御可能な場合、どうしても欲しいのですが私に御売りしてくださりませんでしょうか?
Yahooメールアドレスは、yxuzf50395@
yahoo.co.jpです。

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