『ラビット・ホール』(原題:Rabbit Hole)
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演:ニコール・キッドマン,アーロン・エッカート,ダイアン・ウィースト,
タミー・ブランチャード,マイルズ・テラー,サンドラ・オー他
前述の『恋の罪』とハシゴ。
こちらはどなたにでもお薦めできる作品です。
郊外の閑静な住宅街に暮らす40代の夫婦、ベッカとハウイー。
最愛の一人息子ダニーが自宅前で車にはねられ、命を失う。
夫婦とも耐えがたい喪失感を抱きながら、哀しみとの向き合いかたは対照的。
それゆえ生まれた溝が次第に大きくなってゆく。
ある日、ダニーをはねた高校生ジェイソンを見かけたベッカは、
思わず彼のあとをつけてしまう。それに気づいて向き直るジェイソン。
何をどう話してよいかわからないふたりだったが、
以降、公園のベンチに腰かけて、時折ことばを交わすようになる。
あらすじにするとこれだけ。
特に何が起こるわけでもなく、息子の死とどのように向き合い、
どのように新たな一歩を踏み出すのかを真摯に描いた作品です。
ダニーが遭ったのは本当にたまたま、あらゆる不運が積み重なって起きた事故。
だから、いっそ責める相手がいれば楽なのに、誰も責めることができません。
息子との思い出をひとつでも多くのこしておきたいハウイーと、
息子を思い出させるものはすべて引きはらってしまいたいベッカ。
写真も服も犬も、息子と暮らした家さえも。
ベッカは、妹が妊娠したことについて素直には喜べず、
30歳で他界した(ベッカの)兄のことを話す母親に対しても、
まだ幼かったダニーとヤク中の兄を同列に並べるなと言う。
親友が電話をかけてこないことを罵り、
自分からかければいいのにと言われれば怒る。
周囲の気遣いも見ていてつらいほどで、終盤までどうにもなりません。
加害者であるジェイソンと会って、どうしたいのかもわからない。
事故の様子や謝罪が聞きたいわけでもないのです。
ただ、会って話すだけ。
そして、ジェイソンが描いたコミックに登場するラビット・ホール、
すなわちパラレル・ワールドの存在を信じてみようと思います。
このときのベッカを演じるニコール・キッドマンの表情が素晴らしい。
息子を失う哀しみを描いた作品について、こちらで挙げたことがあります。
哀しみの受けとめかたは人それぞれ、向き合いかたも人それぞれ。
哀しみが完全に消えることはないけれど、減らすことはできる。
根本的な解決策などないからこそ、本作のエンディングは心に染みました。
『恋の罪』では神を信じるかどうかという話がありました。
本作を観れば、科学を信じたくなります。
同監督の『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)もぜひ。
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演:ニコール・キッドマン,アーロン・エッカート,ダイアン・ウィースト,
タミー・ブランチャード,マイルズ・テラー,サンドラ・オー他
前述の『恋の罪』とハシゴ。
こちらはどなたにでもお薦めできる作品です。
郊外の閑静な住宅街に暮らす40代の夫婦、ベッカとハウイー。
最愛の一人息子ダニーが自宅前で車にはねられ、命を失う。
夫婦とも耐えがたい喪失感を抱きながら、哀しみとの向き合いかたは対照的。
それゆえ生まれた溝が次第に大きくなってゆく。
ある日、ダニーをはねた高校生ジェイソンを見かけたベッカは、
思わず彼のあとをつけてしまう。それに気づいて向き直るジェイソン。
何をどう話してよいかわからないふたりだったが、
以降、公園のベンチに腰かけて、時折ことばを交わすようになる。
あらすじにするとこれだけ。
特に何が起こるわけでもなく、息子の死とどのように向き合い、
どのように新たな一歩を踏み出すのかを真摯に描いた作品です。
ダニーが遭ったのは本当にたまたま、あらゆる不運が積み重なって起きた事故。
だから、いっそ責める相手がいれば楽なのに、誰も責めることができません。
息子との思い出をひとつでも多くのこしておきたいハウイーと、
息子を思い出させるものはすべて引きはらってしまいたいベッカ。
写真も服も犬も、息子と暮らした家さえも。
ベッカは、妹が妊娠したことについて素直には喜べず、
30歳で他界した(ベッカの)兄のことを話す母親に対しても、
まだ幼かったダニーとヤク中の兄を同列に並べるなと言う。
親友が電話をかけてこないことを罵り、
自分からかければいいのにと言われれば怒る。
周囲の気遣いも見ていてつらいほどで、終盤までどうにもなりません。
加害者であるジェイソンと会って、どうしたいのかもわからない。
事故の様子や謝罪が聞きたいわけでもないのです。
ただ、会って話すだけ。
そして、ジェイソンが描いたコミックに登場するラビット・ホール、
すなわちパラレル・ワールドの存在を信じてみようと思います。
このときのベッカを演じるニコール・キッドマンの表情が素晴らしい。
息子を失う哀しみを描いた作品について、こちらで挙げたことがあります。
哀しみの受けとめかたは人それぞれ、向き合いかたも人それぞれ。
哀しみが完全に消えることはないけれど、減らすことはできる。
根本的な解決策などないからこそ、本作のエンディングは心に染みました。
『恋の罪』では神を信じるかどうかという話がありました。
本作を観れば、科学を信じたくなります。
同監督の『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)もぜひ。