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『川の底からこんにちは』

2011年03月01日 | 映画(か行)
『川の底からこんにちは』
監督:石井裕也
出演:満島ひかり,遠藤雅,相原綺羅,志賀廣太郎,岩松了他

先週のレンタル開始後すぐに観てぶっ飛び、DVD即買い決定。
ぴあフィルムフェスティバルの受賞者といえば、
べらぼうにおもしろい人がいっぱい。本作の監督もそうです。

主演の満島ひかり、お見事としか言いようがありません。
『悪人』(2010)では、被害者でありながら、殺されてもしゃあないとさえ思わせるビッチな女性。
『プライド』(2008)では、貧乏ながらオペラ歌手を目指し、
成功のために人を陥れることも厭わない女性。
どちらも舌を巻く演技でした。
でも、本作の彼女には愛おしさを感じます。

上京して5年目のOL、佐和子。
5つ目の職場の上司で、バツイチ&子連れの健一が5人目の彼氏。
良い職場だとも良い彼氏だとも言えないが、
所詮、自分だってたいしたことのない女なのだから、しょうがない。
極度の便秘症でデトックスに通い、ここでもドン詰まりを実感する。

そんなある日、田舎の叔父から連絡が入る。
しじみ工場を経営する佐和子の父親が倒れて入院したらしい。
一人娘の佐和子が継ぐしかないと言われるが、
5年前に訳あって実家を飛び出した佐和子はいまさら戻れる気がしない。

ところが、なぜか健一は意気揚々。
とっとと会社を辞めると、佐和子とともに田舎暮らしをするのだと言う。
結婚の意思すらなかった佐和子は呆然とするが、
健一とその娘で4歳の加代子を連れて田舎へ戻ることに。

工場の経営状態は倒産寸前。
おまけに、佐和子の帰郷をよく思わない工場のおばちゃん連中に
冷たい視線を浴びせられ、佐和子は行き詰まるのだが……。

空気を読めない、会話は調子外れ。
始まって数十分間の佐和子の不思議さと、健一の酷さにドン引き。
脱力系の作品が苦手な人は嫌悪感すら抱くかもしれません。
けれどここを通り越して先へ進めば、
圧倒的なパワーにぐいぐい引き込まれます。
おばちゃんたち相手に佐和子が開き直るシーンは何度も観直したいほど。
木村水産の社歌は、いまも耳から離れません。

「頑張る」とか、「頑張れ」とか、
軽々しく掛ける言葉ではないとはよく言われることですし、
実際そう思うときも多々あります。
けれど、本作を観ると、頑張らなきゃしょうがないのかなって。
「頑張る」が心に響いた作品でした。

ラストは思わず笑い泣き。このセンスに脱帽。
中の下の人生も悪くない。

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